業界ウォッチ 2023年9月26日

【データから読み解く】家計金融資産

今回は「家計金融資産」を取り上げてご紹介いたします。

先日(9月20日)、日銀から2023年4~6月期の資金循環統計(速報)が発表されました。同速報によると、23年6月末時点の家計の金融資産は2115兆円で、前年同期比4.6%増と過去最高値を大幅に更新しています。

金融資産の内訳で見ると、現金・預金が大半をしてていますが、今回(23年4-6月期)の増加要因としては、株高を背景とした株価の上昇や、投資信託の保有残高の拡大が指摘されています。

それでは、家計金融資産全体は長期的に見ると、どの位伸びているのでしょうか。2000兆円を超えたのはいつ頃で、そこからどの位伸びているのでしょうか。

また、家計金融資産の内訳を見た時に、構成比はどのように変化しているのでしょうか。また内訳の各金融資産額はどのように変化しているのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。
household financial assets

まず、家計金融資産全体の長期推移(2000年3月末~2023年6月末時点)を見てみます。2000年3月は1401兆円でしたが、そこから増加トレンドで、2007年6月に1658兆円と一旦ピークとなり、以降は落ち込みます。リーマンショックの影響で、2009年3月に1501兆円にまで落ち込みましたが、以降は増加トレンドとなります。

2020年3月に1815兆円と対前期比で瞬間的に落ち込みましたが、翌期以降は再び増加トレンドとなり、2021年12月に2037兆円と2000兆円を超え、2023年6月に2115兆円と過去最高値となっています。金融資産全体は、2000年3月から23年6月にかけて700兆円増加しています。

金融資産の内訳構成比をみると、「現金・預金」が50%を超えており、2000年3月で53.2%、直近の23年6月で52.8%となっています。「現金・預金」に次いで割合が大きいのは「保険・年金・定型保証」で、2000年3月で26.4%、直近の23年6月で25.4%となっています。以降、「株式等」(12.7%:23年6月)、「投資信託」(4.7%:23年6月)と続きます。

次に、金融資産の内訳それぞれの金額の推移を見てみると、最も大きい「現金・預金」は、2000年3月は745兆円でしたが、以降は増加トレンドとなっています。2019年12月に1000兆円を超えましたが、新型コロナで2020年3月以降増加ペースが加速し、2023年6月には1117兆円となっています。

「保険・年金・定型保証」を見ると2000年3月は370兆円で、そこから横ばい・微増トレンドでしたが、2004年12月(416兆円)から2005年3月(481兆円)にかけて急増しています。以降は横ばいから微増トレンドとなり、2023年6月は538兆円となっています。

「株式等」の推移を見ると、2000年3月は138兆円で、2003年3月まで落ち込むも以降増加トレンドとなり2007年6月に212兆円に達します。以降はリーマンショック等の影響もあり、2009年3月に90兆円まで落ち込みますが、以降は増加トレンドとなります。2018年9月に227兆円となりますが、2020年3月の新型コロナで一旦148兆円にまで落ち込み、以降は増加トレンドとなり、2023年6月には268兆円と、2023年いこう急増ペースとなっています。

「投資信託」は全体から見るとはウェイトは小さいですが、2000年3月は32兆円でしたが、以降は横ばいから微増トレンドで2023年6月は100兆円となっています。

こうしてみると、金融資産の増加は大半は「現金・預金」の増加によるものであることが分かります。「現金・預金」は2000年3月(745兆円)から2023年6月(1117兆円)にかけて373兆円増加しています。「株式等」と「投資信託」を合わせると、2000年3月(170兆円)から2023年6月(368兆円)にかけて198兆円増加しています。また、投資が増えてはいるものの、「現金・預金」も同様に増えているため、必ずしも貯蓄(現預金)から投資へシフトしているとは言えない状況となっていることが分かります。

最近の現預金の増加は、新型コロナの影響もありますが、新型コロナが沈静化して以降は物価高による買い控えなどの影響もありそうです。

現預金の伸びを見ると、株式・投資信託などの投資促進、実体経済(消費等)刺激などの打ち手が必要だと言えそうですね。

出典:日本銀行「資金循環統計」
https://www.boj.or.jp/statistics/sj/index.htm
https://www.stat-search.boj.or.jp/index.html
https://www.stat-search.boj.or.jp/ssi/cgi-bin/famecgi2?cgi=$nme_a000&lstSelection=FF