業界ウォッチ 2023年10月10日

【データから読み解く】スポーツ産業の経済規模

今回は「スポーツ産業の経済規模」を取り上げてご紹介いたします。

今年10月9日は体育の日ということでもあり、スポーツに取組んでいる人も多いかもしれません。また今年は、9月末から10月にかけて、アジアカップ(中国杭州)、バスケットボールW杯や、ラグビーW杯、バレーボールW杯などの各種の世界大会が行われており、いずれも日本代表チームが活躍を見せ、スポーツに関する話題が多くなっています。

こうした中、先日(10月6日)、日本政策投資銀行が「わが国スポーツ産業の経済規模推計~日本版スポーツサテライトアカウント~」2022年度版として、2020年の日本のスポーツ産業の経済規模推計値を公表しました。

それでは、スポーツ産業の経済規模(スポーツGDP)はどのように推移しているのでしょうか。分野別にみるとどの分野のスポーツGDPが大きくなっているのでしょうか。また、日本のGDPに占めるスポーツGDPの割合はどの位で、どのように推移しているのでしょうか。世界各国のスポーツGDP比率と比較すると、日本はどのくらいの水準なのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。
sports business market

まず、日本のスポーツGDP全体の推移を見てみます。

2011年は7.2兆円でしたが、そこから増加トレンドで2019年には9.3兆円に達しています。2020年は新型コロナの影響もあり、8.7兆円へと落ち込んでいます。

 分野(部門)別にみると、最もスポーツGDPの規模が大きいのは「スポーツ活動」(スポーツ施設運営、競輪・競馬等、プロスポーツ(興行)、スポーツ指導、スポーツ振興くじ等)で、2020年時点で2.63兆円と全体の30.1%を占めています。次いで大きいのが「スポーツ関連流通」で、2020年は1.87兆円(全体の21.4%)となっています。以降、多いい順でみると「スポーツ教育」1.48兆円(20年、同16.9%)、「スポーツ関連メディア」0.73兆円(20年、同8.4%)、「スポーツ用品・アパレル」0.22兆円(20年、同2.5%)と続きます。

次にスポーツGDPの対名目GDP比率(スポーツGDP比率)の推移を見てみます。2011年は1.45%で、以降は微増トレンドとなっています。2019年には1.67%にまで上昇しています。2020年は新型コロナの影響で1.62%に落ち込んでいます。

さらに海外(主に欧州)各国とスポーツGDP比率を比較してみます。統計取得可能な2012年時点で最もスポーツGDP比率が高かったのはオーストリアで4.12%となっています。次いでドイツ(3.9%)、ポーランド(2.3%)、英国(2.18%)、フランス(1.91%)、キプロス(1.85%)と続きます。

日本のスポーツGDP比率(2020年)が1.62%であるため、欧州の国と比較するとフィンランド(1.63%)とほぼ同じ割合となります。ちなみに日本の2012年時点のスポーツGDP比は1.48%でしたので、この時点ではスペイン(1.44%)とクロアチア(1.54%)の間の割合ということになります。

こうしてみると、日本のスポーツGDPは、新型コロナで落込むまでは成長トレンドに会ったことが分かります。2023年の現在では新型コロナの収束に伴い、スポーツを含めて屋内外での各種活動が回復しているので、スポーツGDPも回復し、再び成長軌道に乗ることが予想されます。

また、スポーツGDP比率でみると、オーストラリアやドイツなど4%近い国が存在していることを考えると、日本のスポーツGDP比率もそれに近づく水準まで上昇する余地があると考えられます。そうすると、やはりスポーツ産業は今後成長していく可能性が高いものと考えられそうです。

オーストラリアやドイツ等の上位国のスポーツ産業を参考にすると、日本国内でのスポーツ産業の成長に向けて有効になりそうですね。

出典:
株式会社日本政策投資銀行「わが国スポーツ産業の経済規模推計」2023年10月
スポーツGDPについて