今回は「日本企業の生成AI活用状況」を取り上げてご紹介いたします。
2022年11月にChatGPTが公開されて以降、生成AIに関しては大きな話題となり、2023年の間でも対話型生成AIとして話題となるだけでなく、生成AI自体は、生成AI画像、音声・音楽など様々な分野で生成が可能となり、更に進化を続けています。
生成AIが進化する一方、実際にどのように活用するのかといった実践面の話題が多く報道されていました。企業経営という観点でも、どのように取り入れるのか、どのように生産性を高めるのかといった観点でも多くの話題となっています。
昨年12月のPwCコンサルティングの調査によると、2023年春の調査時点では日本企業の生成AI利用経験が10%でしたが、2023年秋には73%へと伸びています。生成AIを「業務/事業で活用している」は、4%(23年春)から18%(23年秋)へと伸びています。
それでは、日本企業のAI導入状況は、世界的に比較すると、どのくらいの水準なのでしょうか。日本企業の企業規模別でみると、生成AI導入状況にどのような違いが見られるのでしょうか。業種別でみた場合、どのような違いが見られるのでしょうか。また、役職別に見た場合、どのような違いが見られるのでしょうか。
実際に数字や事例を見て確認したいと思います。
日本企業の生成AI導入率を豪州・米国と比較してみます。日本企業は、「導入済み」が18%で、「導入予定」が30.6%、「未導入」が51.4%となっています。豪州企業は「導入済み」が66.2%で、「導入予定」が30.3%、「未導入」が3.4%となっています。米国企業は「導入済み」が73.5%で、「導入予定」が24.3%、「未導入」が2.2%となっています。ここから、生成AI導入率で日本企業と米国・豪州企業との差が大きいことが分かります。
日本企業の企業別の生成AI導入率を見ると、「1千人未満」が15.7%、「1千~1万人」が21.3%、「1万人以上」が50.0%となってます。「未導入」でみると、「1千人未満」が57.4%、「1千~1万人」が37.3%、「1万人以上」が22.7%となってます。企業規模が小さいと生成AI導入率が低くなる傾向が分かります。
次に、日本企業の業種別生成AI活用状況(時々使用・日常的に利用する人の割合)を見てみます。
最も活用度が高いのは「専門サービス」で80%となっています。次いで、「医療・製薬」(76.9%)、「IT/Webサービス」(76.8%)、「金融・保険」(76.0%)、「電力・ガス・運輸等」(72.3%)と続きます。一方、最も活用度が低いのは、「建設」(47.1%)となっています。次いで「卸・小売」(63.0%)、「サービス」(63.0%)と続きます。
次に、役職別の生成AI活用状況の違いを、日本企業と世界を比較して見てみます。
世界では「経営層」の80%が活用しており、「管理職」は46%、「現場従業員」が20%となっています。一方、日本企業は、「経営層」が36%、「管理職」は19%、「現場従業員」が13%となっています。高い役職であるほど生成AI活用度合いが高いことが分かりますが、日本と世界とで比較すると、日本の活用度は遅れていることが分かります。
こうしてみると、日本企業の生成AI導入・活用は、広まっているものの、世界と比較すると、まだまだ遅れていることが分かります。企業規模でみると、中小規模の企業が遅れており、階層別でみると、現場従業員レベルの導入が遅れていることが分かります。業種別で見ても、「建設」、「卸・小売」、「サービス」といった現業系のビジネスで、比較的人手不足で困っている業種で、中小規模の企業が多いと想定される業種で導入が遅れていることが分かります。
生成AIは上手く活用すれば、生産性が大幅に向上することが予想されます。中小企業や、現場従業員、建設・卸・小売・サービスといった業種に上手く導入することができれば、生産性が改善し、人手不足が少しでも改善されると、日本全体の生産性が向上する可能性が高そうです。まずは、使ってみるところからでも始めて、生成AI活用を広めていくことが大切ですね。
出典:
PwCコンサルティング「生成AIに関する実態調査2023 秋」
NRIセキュアテクノロジーズ「企業における情報セキュリティ実態調査2023」
エクサウィザーズ「生成AIの利用実態調査レポート 〜2023年12月版〜」
経済産業省 「第9回デジタル時代の人材政策に関する検討会」BCG「デジタル/生成AI時代に求められる 人材育成のあり方」