今回は「現実世界資産(RWA)トークン・セキュリティトークン市場」を取り上げてご紹介いたします。
ブロックチェーン業界では、最近、現実世界資産(RWA、Real World Asset)トークンへの関心が高まっているようです。「RWA(現実資産)トークン」は、定まった定義がある訳ではないようですが、概ね現実世界で価値がある有形・無形の資産をブロックチェーン技術でトークン化したものを指しているとされています。日本暗号資産ビジネス協会によると、2024年3月時点で発行されたものとしては、①コレクターズアイテム、酒類、金などの現物資産を受領可能な権利をNFT化したもの(現物償還型NFTと呼ぶことがあります)、②宿泊施設、スキー場、レストランなどの利用権をトークン化したもの、③不動産などの収益物件に関する権利をトークン化し、配当等がなされるもの(いわゆるセキュリティトークン(ST))、④著作権など知的財産に関する権利をトークン化したもの、などが存在しているとのことです。このうち特に日本では、セキュリティトークン(デジタル証券)が急拡大しているようです。
それでは、世界のトークン化された資産の市場規模がどの位なのか、日本ではどのような動きになっているのか、また日本ではどのような資産が対象となっているのでしょうか。
実際に数字を見て確認したいと思います。
まず、世界の市場規模を見てみます。BCGが、トークン化された資産の市場規模の予測を行っています。同調査によると、2022年は0.3兆ドルでしたが、以降は増加トレンドとなっており2030年には16.1兆ドル規模に達することが予想されています。対世界GDP比では、2022年は0.4%でしたが、以降増加トレンドで、2030年には10%に達することが予想されています。
2030年のトークン化された資産の16.1兆ドルの内訳をみると、最も大きいのは「その他トークン化可能な資産」が4.8兆ドルとなっています。次に大きいのは、「住宅資産」の3.2兆ドルとなっています。以降、「その他金融資産」(3兆ドル)、「その他株式」(2.6兆ドル)と続きます。
次に日本の市場を見てみます。RWAトークン市場全体の数字ではありませんが、セキュリティトークンの発行額をBOOSTRY(野村HD傘下)が算出しています。それによると、2023年は総額976億円と、2022年度から5.8倍に拡大しています。2021年度から2022年度にかけて2.2倍の伸びだったため、23年度に急拡大したことが分かります2024年度は1700億円規模に拡大すると予想されています。また2023年度の発行額の内訳をみると、不動産(不動産受益証券発行信託)が806億円と84%を占め、次いで社債が132億円と14%となっていました。
こうしてみると、RWAトークンは、世界的に見ても大きく成長することが見込まれていることが分かります。日本においても、セキュリティトークンを中心として伸びていることが分かります。特に日本では、不動産関連のセキュリティトークン化が進んでいることが分かります。
トークン化することを「トークナイゼーション(tolkenization)」と表現していますが、不動産で考えると不動産の証券化(セキュリタイゼーション:Securitization)したものが、デジタル証券化・トークン化されていると考えると分かりやすいと思います。そう考えると、かつて証券化ビジネスで想定されていたものが、デジタル証券化・トークン化によって、RWAトークン化化されることが想定できます。実際にはセキュリティトークンに限らず、NFTなどもケースもあるようです。
現在のところ、不動産が主なユースケースとなっていますが、その他の、ユースケースとして想定されているものには、農産物(小麦などの先物取引、ワイナリー等)、コモディティ・貴金属(石油・金等)、美術・芸術品(所有権の小口化)、知的財産(特許や著作権)、コレクティブル・収集品(希少コイン、ビンテージ自動車)、森林カーボンクレジットといったものがあるようです。
新しい技術・新しい市場なので、リスクも多分にあると思いますが、発想を広げて、新しい資金調達・ファイナンスの方法という意味で、今後のRWAの動向にも注目しておきたいですね。
資料
・BCG Relevance of On-chain Asset Tokenization in ‘Crypto Winter’
・国内セキュリティ・トークンマーケット総括レポート(2023年度)
・FinTech Jouranal 成長率がスゴすぎる「RWA」、“現実世界資産”のトークン化市場が伸びるワケ