今回は「インドのスタートアップ投資の動向」を取り上げてご紹介いたします。
インドは総選挙で6月4日開票予定となっています。モディ政権が3期目に入るかどうかが注目されています。2014年にモディ政権に移行してから、インド経済が成長局面に入り、2023年後半から経済成長と株高で、経済が好調と見られています。
2023年は、インドのIPOがムンバイ証券取引所とナショナル証券取引所を合わせると金額ベースで香港証券取引所を上回り、件数ベースでの世界有数の規模となっています。(EY調べ)
それでは、インドのスタートアップ投資はどのように推移しているのでしょうか。また、どのような業種への投資が多く、どのような地域への投資が多いのでしょうか。ユニコーン企業数はどのように推移しているのでしょうか。将来どの位の数になると予想されているのでしょうか。
実際に数字を見て確認したいと思います。
まず、インドのスタートアップの資金調達額と件数の推移を見てみます。金額でみると、2014年は50億ドルでしたが、以降増減しながら2017年~2020年まで120~130億ドルの辺りで推移しています。2021年に420億ドルと大幅に伸びますが、以降は減少トレンドとなり、2023年は100億ドルへと落ち込んでいます。
件数ベースでみると、2014年は376件でしたが、翌2015年には983件へと大幅に伸びています。以降、2020年まで800~1000件の幅で増減しながら推移しています。2021年に1584件と一気に件数が伸びましたが、以降減少トレンドとなり、2023年は897件となっています。
次に、業種別の資金調達額(2023年)を見てみます。最も資金調達額が大きかったのは「フィンテック」で、30億ドルとなっています。次いで大きいのが「Eコマース」で26億ドルとなっています。以降、「エンタープライズテック」(13億ドル)、「クリーンテック」(約9億ドル)、「ディープテック」(5億ドル)、「消費者サービス」(約4億ドル)と続きます。ちなみに、図には表示されていませんが、件数ベースでみると最も多いのが「Eコマース」で192件となっています。次いで「エンタープライズテック」(157件)、「フィンテック」(129件)、「ディープテック」(61件)と続いています。
また、地域(スタートアップハブ)別に投資額を見ると、最も大きいのは「ベンガルール」で約42億ドルとなっています。次いで大きいのは「デリー(首都圏)」で約27億ドルとなっています。以降、「ムンバイ」(15億ドル)、「チェンナイ」(2億ドル)、「プネ」(2億ドル)と続きます。地域別に件数でみた場合、順位に違いは無く、最も多いのが「ベンガルール」の249件となっています。以降、「デリー首都圏」(241件)、「ムンバイ」(160件)、「チェンナイ」(32件)、「プネ」(30件)と続きます。
ユニコーン企業数の推移(累積)を見ると、2014年は8社でしたが、以降着実にユニコーン数が増えており、2021年に88社と、前年2020年の43社から大幅に増えています。2022年から2023年は新規で2社しか増えていませんが、2024年は新規に22社増える見通しとなっています。以降は毎年新規に、20~30社程度新たにユニコーン企業が加わる見通しとなっており、2030年には累計で280社に達すると予想されています。2023年は112社でしたので、2030年までに倍以上のユニコーン企業が誕生することになります。
こうしてみると、業種では、「フィンテック」、「Eコマース」、「エンタープライズテック」、「クリーンテック」など、この数年投資が多い分野となっていることが分かります。地域別では「ベンガルール」、「デリー」、「ムンバイ」と、以前からハイテクで栄えているような大都市が中心となっていることが分かります。
また、インドのスタートアップ投資は、2022年以降落込み気味になっており、ユニコーン企業も、この1-2年はあまり増えていないことが分かります。その一方、2024年以降ユニコーン企業がこれまで以上のペースで輩出される見通しとなっていることから、今後もインドのスタートアップが伸びていくことを示していると考えられます。
今後のインドの成長を考えると、インドのスタートアップ投資が減っているこの時期が、投資のチャンスとも考えられそうですね。