業界ウォッチ 2024年7月16日

【データから読み解く】国内スポーツ用品企業の業績推移

今回は「国内スポーツ用品企業の業績推移」を取り上げてご紹介いたします。

前回は国内の主要総合電機企業の業績推移を見ました。今回は、スポーツ用品を中心に見てみることにします。スポーツ用品企業としては、外資も含めて様々ありますが、ここでは国内のスポーツ用品の動向を見てみたいと思います。2023年度は、新型コロナの行動制限がなくなり、本格的に外で活動できるようになった時期で、スポーツにも取り組む人が増えた時期になっています。それに伴って、スポーツ用品メーカーにとっても、業績を上げるチャンスになっている部分も多いと思います。

国内のスポーツ用品企業の売上高は、コロナ前も含めた推移を見ると、どのようになっているのでしょうか。また利益率はどのように推移しているのでしょうか。さらに時価総額はどのように推移しているのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

Domestic Sporting Goods Companies

まず、スポーツ用品企業の売上高の推移を見てみます。2023年度で最も売上高が大きかったのはアシックスで、約5700億円となっています。次いで大きいのが美津濃で約2297億円となっており、以下デサントが1270億円、ゴールドウィンが1269億円となっています。推移を見ると、アシックスは2010年は2353億円でしたが、そこから2015年(4285億円)まで増加トレンドでしたが、以降一旦減少傾向となっています。2020年(3288億円)で底を打ち、以降は急増トレンドで2023年には5705億円となっています。美津濃は、2010年(1500億円)から2015年(1961億円)まで増加トレンドで、以降2020年(1504億円)まで減少トレンドとなっています。2020年以降は再び増加トレンドとなり2023年は1270億円となっています。デサントも概ねに多様なトレンドとなっています。ゴールドウィンは、少し異なった傾向を示しており、2010年(424億円)から2019年(979億円)まで増加トレンドが続いており、2020年(905億円)に一度落ち込みますが、以降増加トレンドとなり2023年は1269億円となっています。

次に純利益率の推移を見てみます。純利益率を見ると、最も高く出ているのがゴールドウインとなっています。ゴールドウインは、2010年は3.5%でしたが、以降は2017年(5.6%)まで概ね微増トレンドとなっていますが、以降は上昇トレンドとなっており、2023年には19.1%となっています。アシックスは、2010年の4.7%から2014年(6.3%)まで概ね横這いでしたが、以降下降トレンドとなり、2018年(-5.8%)、2020年(-4.9%)と2度のマイナスを経て、2023年には6.2%にまで戻しています。

美津濃は2010年に1.9%で以降概ね横這い・微減トレンドでしたが、2016年(0.4%)以降微増トレンドに転じ、2023年は6.2%となっています。

更に時価総額の推移を見てみます。最も大きいのはアシックスで、2010年は2224億円でしたが、翌2011年は落ち込み、以降2014年(5789億円)まで急増します。以降2018年(2808億円)まで落込み、それ以降は増加トレンドで2023年には8388億円に急増しています。

次いで時価総額が大きいのはゴールドウインで、2010年は135億円でしたが2014年に1520億円と1000億円を超え、2022年は5978億円と、アシックスを超える額にまで達しています。美津濃は、2010年の470億円から2022年(825億円)まで、概ね横這い・微増トレンドとなっていましたが、2023年には1690億円と、1000億円をこえる規模に達しています。デサントの時価総額は、2010年は290億円でしたが、以降は上昇・加工を繰返しながら2022年には3185億円の規模にまで達し、2023年は2658億円となってています。

こうしてみると、売り上げベースではアシックスが大きく出ていますが、純利益率を見るとゴールドウインが高い数値を達成していることが分かります。しかも、2016年以降から純利益率が上昇し続けていることが分かります。それに伴い、時価総額ではアシックスが最も大きくなっているものの、ゴールドウインは、売上規模では美津濃、デサントを下回っているにもかかわらず、時価総額では同2社より大きく上回っていることが分かります。

ゴールドウインはTheNorthFaceブランドが若者中心に人気を集めていることもあり、他のいくつかのブランドの取扱いから撤退してまで、TheNorthFaceブランドに注力するそうです。

ブランド力を高めて、収益性を高めると売上規模ではなく、時価総額で大手企業に迫れることから、今後は収益性を高めて時価総額を大きくしていくことで、経営上の戦略のオプションを広めるためにも重要なことと言えそうですね。

資料:スピーダ(SPEEDA)