業界ウォッチ 2024年11月19日

【データから読み解く】日本のエシカル消費市場規模

今回は「日本のエシカル消費市場規模」を取り上げてご紹介いたします。

社会(生産者、労働者、地域社会など)や環境に配慮した製品やサービスを購入する「エシカル消費」が、日本国内で広がっています。こうした考え方や、概念については様々なメディア等で伝えられていましたが、先日その「エシカル消費」の市場規模に関する調査結果が、発表されました。エシカル市場規模調査実行委員会による、同調査結果によると、2022年の日本のエシカル消費市場規模は、約8兆円(8兆950億円)になるそうです。

今回の結果は、イギリスで25年前から行われてきたエシカル市場規模調査に関する調査手法を、同実行委員会が学び、それを準用して日本市場にエシカル市場規模を推計したものとなっています。

エシカル消費については、減少として報じられることが多かったのですが、実際にその市場規模がどのくらいなのか、明確にデータで示されることがありませんでした。それでは、エシカル消費にどのような分野が存在し、どのくらいの規模間なのでしょうか。どういった分野のエシカル消費が大きいのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。
ethical consumption

まず、エシカル消費市場の大まかな分野別市場規模を見てみます。

最も大きいのは「連帯消費」(地産地消、地元商店での買い物、応援消費等)で約2.3兆円となっており、全体の28.4%を占めています。次いで大きかったのは「エシカルなエネルギー」(高エネルギー効率の家電商品、ヒートポンプ設備等)で、1.51兆円となっています。以降「エシカルな家庭/個人用品」(1.18兆円)、「エシカルな移動/旅行」(0.97兆円)、「エシカルな資金運用」(0.94兆円)と続きます。

次に各分野ごとの市場規模詳細内訳をみてみます。

「連帯消費」分野で最も大きいのは、「地産地消 (農産物直売所販売)」で1兆1250億円となっています。次いで大きいのは「地元商店での買い物」で6,720億円となっています。以降、「応援消費」が4,040億円、「寄付つき商品」が620億円、「フェアトレード」400億円と続きます。

「エシカルなエネルギー」分野で最も大きいのは、「高エネルギー効率の家電製品 (冷蔵庫、エアコン、液晶TV 、照明器具)」で9,650億円となっています。次いで大きいのは、「ヒートポンプ設備 (エコキュート、エコジョーズ)」で2,380となっています。以降、「グリーン電気料金」1,920億円、「家庭用蓄電池」1,150億円、「小規模発電 (太陽光発電)」40億円と続きます。

「エシカルな家庭/個人用品」で最も大きいのは、「リユース衣料・服飾品」で5,120億円となっています。次いで大きいのが「リユース家庭用品 (家電・家具、日用品・生活雑貨、ベビー・子供用品)」で3,990億円となっています。以降、「持続可能な木工/紙製品」1,840億円、「エシカルファッション/ジュエリー」450億円、「エシカルな化粧品」420億円と続きます。

「エシカルな移動/旅行」分野でみると、「クリーンエネルギー車 (PHV、電気自動車、燃料電池車)」が5,030億円、「エコツーリズム」が4,700億円となっています。

「エシカルな資金運用」分野でみると、「エシカルな貯蓄/投資」が3,900億円、「市民活動等への寄付」が3,000億円、「エシカルなふるさと納税」が1,930億円、「クラウドファンディング」が610億円となっています。

こうしてみると、日本のエシカル消費市場は、「地産地消」や、「高エネルギー効率の家電製品」、「地元商店での買い物」、「リユース衣料・服飾品」、「クリーンエネルギー車」の市場が大きいことが分かります。日本の消費スタイルとして、「エシカル消費」と称される以前から地域・地元で消費することが行われていたことでもあり、日本が世界的に強さを誇っていた家電産業が提供する省エネ家電、自動車産業が提供する、低燃費・クリーンエネルギー自動車などが上位に来ていることが分かります。

「エシカル消費」というと、新しいライフスタイルのようにも見えますが、日本の多くの人が以前から行っていたライフスタイルや、日本の省エネ・クリーンエネルギー技術といった領域での購入をすれば、特別なことをしなくとも「エシカル」な消費活動となっていきそうです。企業としても、これまでの日本のライフスタイルに合わせた商品・サービスを提供することに加えて「エシカル」であることを表明することで、機会をとらえることができそうですね。

資料:
一般社団法人日本フェアトレード・フォーラム(FTFJ)プレスリリース
日本初のエシカル市場規模調査