業界ウォッチ 2024年12月17日

【データから読み解く】宅配便再配達・置き配・宅配ボックスの動向

今回は「宅配便再配達・置き配・宅配ボックスの動向」を取り上げてご紹介いたします。

先日(12月6日)、国土交通省が宅配便の再配達実態調査結果を公表しました。同調査結果によると、10月の再配達率は10.2%で、2023年10月の調査結果と比べて0.9ポイント改善したとのことです。

宅配便は、このメルマガでも宅配便市場動向(※2024年1月30日配信)で、物流2024年問題ということで再配達が大きな問題となっているということで紹介をしました。

それでは以前紹介した時点でと比較して再配達率はどのように変化しているのでしょうか。都市部と地方部でどのくらいの違いがあるのでしょうか。また、再配達率低減のために注目されている置き配の利用率はどのように変化しているのでしょうか。その中でも、お亀背手段の一つとなる宅配ボックスは、どのようなタイプの住宅に、どのくらいの割合で設置されているのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。
宅配便再配達・置き配・宅配ボックスの動向

まず、再配達率の推移(2017年10月~2024年10月)を見てみます。調査地点「総計」の再配達率の推移をみると、2017年10月から2019年10月までは、概ね15-16%の範囲で推移していました。2020年4月には新型コロナの影響で在宅率が高まったこともあり、再配達率が8.5%まで低下しましたが、2020年10月以降再配達率が上昇し、2021年には11.9%に達します。以降は微減トレンドで2024年10月には10.2%となっています。

地域別にみると、都市部が高く、2024年10月は11.6%となっています。同24年10月の都市部近郊は9.6%、地方は8.1%となっています。24年4月時点比べて再配達率が上昇しているのは都市部のみで、それ以外は低下しており、新型コロナの影響のあった2020年4月以降で最も低い再配達率となっています。

なお、政府目標は2024年時点で6%と設定されていますが、総計で10.2%(24年10月)と乖離している状態でとなっています。最も再配達率が低い地方でも、8.1%(24年10月)と、政府目標に及ばない状況となっています。

次に、置き配サービス利用率を見てみます。ナスタ社の調査結果によると、置き配サービスを利用したことがあると答えた人は2019年10月調査時点では26.8%でしたが、コロナ直後の2021年2月調査時点では47.2%と大きく上昇し、以降利用率は上昇トレンドとなっています。2024年10月調査では72.4%と、2023 年調査の 67.3%より 5.1 ポイント増加しており、2019 年の 26.8%と比較して約 2.7 倍に拡大しています。

次に置き配サービスを利用する際に必要となる条件の一つとして、宅配ボックス設置状況を、住宅タイプ別にみてみます。国土交通省の「(令和5年度)住宅市場動向調査報告書」によると、宅配ボックスの設置の有無で、「設置をしている」との回答比率が最も多いのは、「分譲集合住宅」で85.9%となっています。次いで多いのが「既存(中古)集合住宅」で、45.0%となっています。以降、「分譲戸建住宅」(42.3%)、「注文住宅」(39.0%)と続きます。最も低いのは「既存(中古)戸建住宅」の18.1%となっており、「設置していない」比率でみると79.9%と最も高くなっていることが分かります。

こうしてみると、再配達率の低下には、置き配サービスの利用が大きく寄与していることが分かります。今後さらに再配達率を低下させるためには、都市部での置き配サービスの利用を高めることと、宅配ボックスの設置を広めることが必要になることが分かります。

宅配ボックスの設置状況では、分譲集合住宅は約86%で、それなりに広まっていることが分かります。分譲集合住宅で宅配ボックスを「設置していない」割合は13%となっており、宅配ボックスの導入率を伸ばす余地は、それほど大きくないことが分かります。

その一方で、既存(中古)集合住宅、分譲戸建住宅、注文住宅、賃貸住宅、既存(中古)戸建住宅が、宅配ボックスを「設置していない」割合が50%以上となっており、まだまだ宅配ボックスを設置していく余地が大きいものと考えられます。

今後、宅配ボックスは、置き配サービス利用の前提の一つとなるともいえそうです。中古住宅・戸建て住宅等への宅配ボックス導入に関連する事業は、今後社会的な意義があるだけでなく、市場としても伸びていくものと考えられそうです。

※【データから読み解く】宅配便市場動向

資料:
国内宅配便再配達率の推移(国土交通省)
置き配に関する実態調査(ナスタ調べ)
「令和5年度住宅市場動向調査報告書」(国土交通省)