業界ウォッチ 2021年6月29日

【データから読み解く】コロナ禍で世界の富・家計純資産は変化しているのか

今回は「世界の富(家計純資産)」を取り上げてご紹介いたします。

先日、スイスの金融大手であるクレディ・スイス・グループが2021年版の「グローバル・ウェルス・リポート」を公表しました。世界の家計資産を分析する同レポートによると、2020年の世界の富(金融資産・不動産から債務を差し引いた純資産)は、418兆3420億ドルと、前年から7.4%の増加の過去最高値となり、「2020年の富の創出は、世界が直面している課題とはほぼ無縁だった」と述べられています。

確かに、世界的には2020年は新型コロナウイルスの影響で、GDPや貿易など、実体経済の落ち込みがみられました。その一方で、主要国の金融緩和策の影響もあり、株式や不動産などの資産価値が上昇するという現象がみられました。それに伴い、こうした資産を持つ富裕層の資産がさらに拡大しているという報道も多く見受けられます。

それでは、世界の富・家計純資産は、2020年に特別に大きく伸びているのでしょうか。長期的に見て増加傾向にあるのでしょうか。地域別に見るとどの地域が伸びているのでしょうか。また、富裕層は、地域別に見るとどのように分布していて、今後どのように伸びることが予想されているのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。


まず、世界の富(家計純資産)の推移を長期間で見てみます。2000年は117.9兆ドルでしたが、そこから増加トレンドで07年に233.6兆ドルにまで拡大しています。08年は217.6兆ドルとリーマンショックの影響で一度落ち込みますが、以降は再び増加トレンドとなります。13~15年はほぼ横ばいとなりますが、再び増加トレンドとなり、20年には418.3兆ドルの過去最高となっています。

地域別に見ると、北米は00年に46.1兆ドルでしたが、20年は136.3兆ドルと20年間で約3倍に拡大しています。欧州も00年の34.5兆ドルから、20年の103.2兆ドルへと、約3倍に拡大しています。アジア太平洋は、00年は28.5兆ドルでしたが、20年は75.3兆ドルと、約2.6倍に拡大しています。中国は00年の3.7兆ドルから75兆ドル(20年)と約20倍に、インドは00年の1.6兆ドルから12.8兆ドル(20年)と8.2倍に拡大しています。

次に、世界のミリオネア数(純資産100万ドル以上)を見てみます。
2020年は5608万人(対2019年比で521万人増加)でしたが、2025年には8400万人に拡大しています。地域別では、北米、欧州、アジア太平洋、中国など各地ともミリオネア数が増える見通しですが、伸び率では中国が最も高い伸びを示しています。

こうしてみると、世界の富・家計純資産は、2020年の伸びが特別に大きかったわけではなく、長期的トレンドとして伸びていることが分かります。富裕層(ミリオネア)の数では、中国、インド、アジア太平洋地域での伸びが大きいことが分かります。
このような、世界の富・家計純資産や富裕層の増加は、貧富の格差を広げるという指摘もありますが、事業機会という観点から見ると、純資産や富裕層の増加が大きい地域にチャンスがありそうだと言えそうです。

【出展】
CREDIT SUISSE GROUP
・Global wealth report 2021
・Global wealth databook 2021