執筆:村西重厚(BBT大学院MBA本科修了、データ・サイエンティスト株式会社 エグゼクティブ・ディレクター)
対象科目:RTOCS(大前研一 学長)
これまでに4回に渡ってRTOCSについてご紹介してきました。
最終回はRTOCSの終盤戦である、結論提出から振り返りまでをご紹介します。
RTOCSでは、情報収集や考察など、序盤から中盤にかけては、クラス単位でディスカッションをしながら進めます。
少し本題からは逸れますが、前回も解説したように、クラスには会計士や企業経営者、技術者など様々な職種の仲間がいます。時として、クラスメートにいる専門家達の深い洞察が参考になることがあります。自分の専門分野や詳しい業界がテーマの際は、自ら専門家として情報提供ができる場面も出てくるでしょう。
このようなやり取りを、BBT大学院では「クロス・ファータリゼーション」と呼んでおり、「知識・経験という肥し」を互いにやり取りをし、自分の知識、視野を広げていきます。
さて、このようにして情報共有や議論は集団で行いますが、お題に対しての結論は、一人ひとりが提出をします。周りの意見を参考にしながらも、主役はあくまで自分自身です。経営者がブレインとして、周囲に専門家を配置している状態とも言えますね。
結論提出の様式に厳密な決まりはありません。
ただし、
・自分が結論に至った際に参考にしたファクト
・それらから読み取ることができる解釈
・本質的問題
・打ち手
など、結論に至ったプロセスを分かりやすく表現する必要があります。
エア・キャンパス上では、テキストで結論と大まかな根拠を述べ、詳細はパワーポイント等で作成したプレゼン資料を添付する方法が多用されます。プレゼン資料には当然説得力が必要です。必死で1週間かけて調べ、考えた事の集大成となるからです。できるだけシンプルかつインパクトのあるスライドを作るためにスライドのフォント、描画、色使いなどにも工夫をこらします。
結論の提出後は、クラスメートから質問されることがあります。同時に自分自身も他の人が出した結論に質問をすることが推奨されます。質問の内容によっては、結論を修正することもあるでしょう。
前回ご紹介した、デビルズ・アドボケイトを多用してくる、ありがたい(?)クラスメートも存在します。これらの工程を通して、柔軟かつ強い軸を持った思考力を養うことができます。
結論の提出は、プレゼン資料作成を鍛える絶好の機会でもあります。
さて、いよいよ学長の結論を聞く場面がやってきました。
日曜日の夜に公開される『大前研一LIVE』内で「今週のRTOCS」というコーナーがあり、大前学長が考えたRTOCSの解説を視聴します。RTOCSに取り組んでいる間はLIVEが待ち遠しくなります。大前学長がお題に対して、現状把握・分析にもとづき、打ち手をくわしく解説されます。私は毎回、深い見識と鋭い視点に驚かされていました。
しかし、「学長解説」は、RTOCSの「正解」ではありません。
ここで大切なことは、学長はどのような事実に注目し、それらをどのように解釈し、結論を導き出したか、という思考のプロセスを追うことです。そして自分と学長の思考の道筋にどのような違いがあるかを考えます。
基本的に情報源は、学長も学生も公開されたものに基づいています。同じ環境で得る情報量の違い、思考の密度の違いを理解し、次のお題に取り組む際の参考にしましょう。
この工程は、徹底的にそのお題に対して取り組んだ人だけがその思考をチェックができる絶好の機会です。
RTOCSはお題を提出して終わりではありません。
上記の学長やクラスメートとの思考回路の違いなどを振り返り、自分に足りなかったこと、自分が学んだこと、自分にしか気づけなったことなどを文章にまとめ投稿し、はじめて完結します。
個人的には最後の振り返りが、もっともRTOCSで力がつく瞬間と感じています。もちろんそれまでの取組を真剣に行ったという前提が必要です。自分が出した結論、根拠資料は、貴重な成果物です。もし、自分が経営コンサルタントだったとしたら、お題企業に対する改善提案を行う提案書を作成している、ということなのです。
そのような提案書が、大前学長とクラスメートの結論を合わせると、50通り以上のバリエーションが存在しているということです。
普段の業務で自分が関わる成果物について、これだけの量をレビューができることはまず無いかと思います。このレビューで、自分の足りない所、得意な所を徹底的に検証できるのはまたとない機会になるしょう。
これまで全5回に渡り、RTOCSの流れをご紹介してきました。
取組み過程において、情報収集、分析、クラスメートとの議論を通して、自分なりの結論を提出し、提出後に学長やクラスメートの結論などを参考に、自分の思考との違いを発見するなどの多面的な取組みを行う事がご理解いただけたかと思います。
このような取組みをBBT大学院では2年間で約100回行います。
これまでお伝えしてきたように、RTOCSは情報収集力、分析力、思考力、議論する力、ドキュメンテーション力など多くのビジネスに必要な基礎力を養うことができます。
時には業務や他の科目が忙しく、RTOCSに十分は時間を割けない場合も出てくるでしょう。その際は、自分の資源をどの様に配分し、完成レベルに持っていくかという計画性を養うこともできます。
RTOCSの数をこなしていくうちに、それぞれの工程に費やす時間を短縮できるようになり、生産性が向上してゆきます。
RTOCSは大前学長からの「100本ノック」として例えられることがありますが、私は一種の「走り込み」と捉えています。毎日の走り込みで基礎体力を向上させるイメージです。
ぜひRTOCSで、ビジネスの基礎体力を向上させたい方は、BBT大学院へ!
村西重厚
BBT大学院本科 修了生
データ・サイエンティスト株式会社 エグゼクティブ・ディレクター
一般社団法人起活会 代表理事
1972年 兵庫県神戸市出身
工学部機械科卒業後、メーカーで生産技術部門に従事。
その後、営業部門を経て新規事業部門でWEB事業を立ち上げる。
新規事業の立ち上げ時に経営知識の必要性を感じ、2013年にBBT大学院に入学。
2015年MBA取得。MBA取得後、ベンチャー企業に転職し、営業、マーケティング、資金調達などに携わる。
2017年より、検索ビッグデータ分析を元に企業戦略の立案・推進に携わる一方で、一般社団法人起活会を立ち上げ、起業家支援を行っている。
趣味は登山、クライミング、ギター。