今回は「世界のVR市場動向」を取り上げてご紹介いたします。
最近Facebookが提供しているVR「Oculus Quest2」の販売が好調なようです。昨年秋に、「Oculus Quest」シリーズの2代目として発売され、価格を下げ、より軽く、バッテリー駆動時間も長くしたことにより、VR/ARゴーグル市場を活性化させているといった報道も見られます。
ハードウェアとしてのVR/ARゴーグルだけでなく、Oculus上で利用されるコンテンツ(ゲーム、映像、各種アプリ等)でも100万ドル(約1億円)以上売り上げたタイトル数がで60作品(今年2月時点)を超えるなど、エコシステムも広がっているようです。
コンテンツ・サービスとしては、最近Facebookが発表した「Horizon Workroom」が、オフィスでの業務環境をVRで作り上げる試みとして注目を集めています。
それでは、FacebookのOculusがどのくらいの市場シェアを取っていて、どのように推移しているのでしょうか。また、世界的にVR/ARゴーグル(ヘッドマウントディスプレイ)は、どの位伸びると予想されているのでしょうか。地域的にみると、どの地域が最も伸びることが予想されているのでしょうか。
さらに、VR/ARの用途としては、ゲームのほかにどのような用途が想定され、将来的にどの分野へ投資が集まることが予想されているのでしょうか。
実際に数字を見て確認したいと思います。
まず、世界のVR/ARヘッドセットのブランド別出荷シェアの推移を見てみます。Oculusは、2020年Q1時点ではシェア34%で、そこから微減傾向で20年Q3時点では29%でしたが、20年Q4では74%へと一気に跳ね上がりました。続く21年Q1では75%となっています。
Counterpoint Technology Market Researchによると、「Oculus Quest2」は、21年Q1時点で約460万台の出荷と、対前年同期比で3倍近くの出荷になったそうです。
次にVRヘッドセットの世界出荷台数の推移(予測)を見てみます。2020年時点では、世界で約1600万台ですが、そこから増加トレンドで25年には約6000万台に拡大すると予想されています。地域別に見ると、2025年時点では極東&中国が最も大きく、約2100万台で、次いで北米(約2000万台)、欧州(約900万台)と続きます。
極東&中国と北米だけで、全体の70%近くを占めていることが分かります。
さらに、用途別の世界のVR/ARへの投資額規模予測を見てみます。IDCによると、2024年時点で投資される用途しては、「VR/ARゲーム、VRビデオ視聴」が最も大きく176億ドルと予想されています。次いで「研修トレーニング」の約41億ドル、「産業メンテナンス」の約41億ドル、「小売ショーケース」が約27億ドルと予想されています。
やはり、業務用よりも消費者向けのゲームやビデオ視聴が大きいことが分かります。
こうしてみると、やはり「Oculus Quest2」のVR/ARヘッドセット市場でのインパクトはかなり大きかったことが分かります。また、これを契機として、VR/AR市場が今後も拡大することが予想されていることも分かりました。ゲームやビデオ視聴用途が多く、中国・アジア地域や、北米市場を中心に伸びることも分かります。
ただし、実際に「Oculus Quest2」を使ってみると分かりますが、小型化したとはいうものの、まだまだ本体が大きく、それなりの重さもあるため、長時間装着するにはつらいものがあります。また、VRヘッドセット装着中に、部屋の中の障害物にぶつからないようにスペースを確保する必要があります。また、セッティングでもFacebookアカウントと連動させる必要性などのハードルも残っています。今後さらに普及加速していくためには、こうした課題が克服される必要があるものと考えられます。
その一方、「仮想空間」での体験できる世界として「メタバース」も、最近注目を集めています。仮想空間上でのデジタル創作物を金銭取引できるようになるNFTの可能性について、期待が高まっています。VRはこうした世界でのやり取りの入り口にもなり得ます。
ハードウェア的には課題はあるものの、将来的にそれらの課題を克服する可能性があるものとして、VR/ARの世界と将来ビジネスとしての可能性を研究する意味で、実際に体験してみることも良いかもしれませんね。