執筆:川根靖弘(大手コンサルティングファーム勤務、BOND-BBTアルムナイ「豪研会」幹事長)
対象科目:Cross Cultural Business Communication(講師 Krista Mathis)
さて、前回の寄稿で『国籍が違うことで文化が違うのは当然のこと、プロジェクトの進め方やコミュニケーションの取り方にいわゆる“日本式”は通用せず、相手の受け入れやすいコミュニケーションの取り方が必要になってきます。』ということを述べました。
コミュニケーションについて、読者のみなさんの思う“日本式”とはどのような特徴を持ったものでしょうか? 私が約13年間の社会人経験から述べるのであれば、下記のような特徴を一例として挙げます。
・信頼関係がとても大事
・相手のメンツを重んじる
・阿吽の呼吸が大事
・Noとはっきり言わない
もしかしたら多くの方が「日本式云々ではなく、当たり前のことが列挙されているだけじゃないか」とおっしゃるかもしれませんが、これら“日本式”を当たり前のものと認識していたり、もしくは無自覚的に当たり前のものとして扱っているとしたら、Global Teamで働く前にコミュニケーションの違いについて学びを深めることは、決して遠回りではないと思います。
上記にとりあげた“日本式”の例と同様に、“〇〇式”と表現のできる慣習や常識は国の数や文化の数だけあると言えますが、コミュニケーションのグループは大きく二つに分けて考えることができます。ここではアメリカの文化人類学者であるEdward Twitchell Hall, Jr.の提唱した有名な“High-context and low-context cultures”という概念をご紹介します。
これは、話者同士で交換されるメッセージがいかに明確であるか、そして文脈がコミュニケーションにおいてどの程度重要であるかを示す概念であり、High-context cultureとLow-context cultureにはそれぞれ下記のような特徴があります。
もちろん、上記の特徴がすべての人に必ず当てはまるわけではないと思います。日本のみを例にとっても、東北・関東・関西などといった地域ごと、そして世代ごとで異なる価値観がある通り、“High-context and low-context cultures”を盲目的に信じることをお勧めするつもりはありません。しかしながら、私自身がこれまで接してきた外国籍の同僚たち一人ひとりと照らし合わせてみると思わず膝を叩くほどの納得感があり、とても示唆に富む概念であることもまた事実ではないかと考えています。
High-context and low-context culturesについてものすごくざっくり仕分けすると、High-Context Cultureは“相手に悟ってほしい”コミュニケーションが特徴であり、Low-Context Cultureは“伝えたいことはすべて私が言葉で表す”コミュニケーションが特徴であると言え、優劣ではなく“シンプルに異なる”という事実のみが浮かび上がります。
例えば、アメリカ人やデンマーク人と働く際に、「なぜあんなにも事細かにいちいち説明してくるんだ。こちらがなにもわかっていないと思っているのだろうか?」や「あれほどハッキリと私にNoを言うとは。ビジネスパートナーとして信頼されていないのかな?」といった印象をもし持つことがあったとしたら、ぜひ“High-context and low-context cultures” について思い出してみてください。彼らにとっては、事細かに一つひとつ説明をすることが当たり前であり、Noとハッキリ意思表示することも当たり前のことなのです。
このような“シンプルに異なる”という事実をきちんと理解して働けるかどうかが、Global TeamでComfortableに働くための最初の関門と言えるのではないでしょうか。
川根靖弘
Bond-BBT Global Leadership MBA 修了生
1983年生まれ。千葉県出身。妻と娘の3人家族。
父の転勤により2年単位で日本全国をまわる幼少-青春期を過ごす。
高校を卒業後、一浪し早稲田大学社会科学部へ入学、専攻は社会学。大学卒業後、デンマークの医療機器メーカーに就職、第二営業部に所属。28歳にて最年少MGR、年上の部下を持ち、関東~北関東地域を担当。在職中に参加したスペインでの国際営業会議での強烈な原体験から海外MBA取得を決意、2015年5月にBond-BBT Global Leadership MBA入学、2018年2月修了。在学中の2017年4月にコンサルティングファームへ転職、営業からコンサルタントへキャリアチェンジ。
現在はコンサルタント業務の傍ら、Bond-BBT Global Leadership MBAのAlumni組織である“豪研会”の幹事⾧としてAlumniのタテ・ヨコのつながりの強化に奔走。
また、“BBT-Bond Toast Masters Club”に所属し英語プレゼンテーションスキルとリーダーシップスキルの向上に取り組んでいる。