執筆:岸原直人(BBT大学院MBA本科修了、パナソニック株式会社 デジタルマーケティング推進室 課長、アプライアンス社事業開発センター ゲームチェンジャーカタパルト Versatile Player)
対象科目:Steps to Leading Globally(Eric Francis 教授)
ビジネスの世界では、「異文化」という言葉は地域、国という地理的条件を示すものではありません。個々の企業風土の違い、さらには同じ会社でも組織の違いによって「文化」は異なります。ビジネスの世界はまさに多様な「異文化コミュニケーション」の場なのです。
異文化コミュニケーションに対応するため、多くの日本企業が取り組みを始めているのは皆さんもご存知でしょう。ユニクロ、ソフトバンク等の成長企業だけではなく、国内屈指の大企業日立製作所も外国人社員比率を高めています。楽天が社内公用語を英語化したときは、大きな話題となり、海外のMBAのケーススタディにも使われています。
グローバル化は今まさにあなたの足下まで来ています。世界中のどこで働いていても日本で働いていても、異文化コミュニケーションの環境下、グローバルリーダーとして行動しなければなりません。
ではグローバルリーダーに求められるマインドセットとは何でしょうか?
1つ目は「Curiosity=好奇心」です。未知のことがあっても恥ずかしがることはありません。新しいものを知ることができるチャンスと考え、積極的に挑戦しましょう。
2つ目は「Flexibility=柔軟性」です。柔軟性とは全てを受け入れるという意味ではありません。自らの軸をおさえつつ、自身の幅を広げるために、異文化の意見、視点を積極的に受け入れることです。「他人の眼鏡をかけて見る。」といったところで、一度自分の常識を捨ててみることが大事です。
3つ目は「Practicality=実効性/実用性」です。異文化のグローバルコミュニケーションにおいて、あなたの考えはより実用的で、組織構成員全てに理解され実行できるものであるべきです。
この3つのマインドセットを持ち合わせることで、あなたはグローバルリーダーとして異文化「高い山」にもチャレンジしていけるでしょう。
この連載ではグローバルリーダーシップとは何か、どのようにそれを高めていくか、どのような姿勢で取り組んでいくべきかを説明してきました。最後に、あなたのグローバルリーダーシップをどのように組織で発揮していくか、3つのキーワードを使って触れたいと思います。
Warren Buffet氏は、「Integrity、Intelligence(知性・知能)、Energy(情熱)の3つの資質を持つ人材を採用することが、大事だ。しかし“Integrity”がない人材を採用すると、残りの2つは正しい方向には使われず、あなたを殺すことになる。」という言葉を残しています。
グローバルビジネスにおいて「Integrity」は企業のミッション・ビジョン、またはリーダーが発する言葉と、実際の事業活動が一致していること、あなたのリーダーシップが常に首尾一貫していることを意味します。この「Integrity」が多様なメンバーとビジネスを進めるうえで、重要なのです。これが1つ目のキーワードです。
次に「Respect=敬意を示す」ことです。人は異質なものを避ける傾向にありますが、グローバルリーダーは、多様な人材に対して、公正公平スタンスで組織構成員の話を聞き、正しく理解せねばなりません。異質なもの同士がコミュニケーションするため時、誤った理解、判断をすることもあるでしょう。その時は素直な心で自らの非を認め誤り、その上でどの方向に進むのか、対話をすることが大事です。そして最後にリーダーとして目標達成に向けて努力をした相手に心からの感謝を示すことが不可欠です。
3つ目のキーワードは「Clear Direction with team = 組織に明確な方向を示す」ことです。あなたが企業のCEOであろうが一部門のリーダーであろうが、ポジションの高低を問わず、リーダーは1つの目標にどの方向に進むのか、意思決定をせねばなりません。リーダーはグローバルビジネスという不確実で多様な世界において、組織に進むべき方向の地図を、シンプルに示し、組織を牽引する存在なのです。
グローバルビジネスの世界は無限の可能性を秘めています。あなたが、自らのリーダーシップを確立し、組織構成員に思いをもって進むべき方向を示し、道を切り拓いていくことを期待し、この連載を終えます。
岸原直人
BBT大学院本科 修了生
パナソニック株式会社
デジタルマーケティング推進室 課長
アプライアンス社事業開発センター ゲームチェンジャーカタパルト VersatilePlayer
1971年埼玉県所沢市生まれ
早稲田大学卒業後、松下電器産業株式会社(現:パナソニック株式会社)に入社。国内外営業・マーケティング、海外広報を経て、2012年から2015年まで米国地域統括会社でブランドマーケティングに従事。帰国後は本社経営企画での勤務後、2017年より新設されたデジタルマーケティング推進室で、グループ全体のデジタルマーケティング化を推進中。また2018年からは、「社内複業制度」を活用し、家電部門の新規事業創出組織であるゲームチェンジャーカタパルトに参画。
大学時代始めたアメリカンフットボールに今も夢中。米国勤務時代は、全世界最大規模のスポーツイベントと言われるスーパーボウルを、『一生の一度のチャンス』と捉え、1席数十万円のチケットを購入して観戦。また、現在も40歳以上のメンバーで構成される『シニアアメリカンフットボール』のチームに所属し、プレーを継続。アメフト以外でも、トレイルランニングに熱中。毎年複数の大会に参加している。また「トレーニングで街創り」というビジョンを掲げる『Daddy Pak Training』に所属し、日本初の都市型障害物レースイベントを行う等、社会起業にも活動の幅を拡大。大前学長の「やりたいことは全部やれ!」という教えをまさに実践している。