執筆:田村悦子(BBT大学院 修了生)
編集/構成:mbaSwitch編集部
『ポストコロナ時代に役立つBBT大学院の学び』の第1回・第2回では、BBT大学院が考えるポストコロナ時代に必要となる能力、その能力を身につけていく上でのBBT大学院の有用性についてご紹介してきました。
第3回~第7回では、ポストコロナ時代にも活きているBBT大学院での学びについて、本学の修了生に寄稿していただいた記事をご紹介します。
ポストコロナではなく「withコロナだ!」と皆口をそろえて言われています。確かにこの戦いは長引きそうだし、皆さん異論はないところでしょう。
さて、ではどうwithしましょうか?
どのようなスキルが必要か、私の経験をお話させていただきたいと思います。
私は、2015年にBBT大学院経営管理コースに入学し、「5年間めいっぱい長居するのがオススメ」という入学式での学長の言葉を振り切り、教育訓練給付金満額受給のために最短の2年で卒業しました。
しかし卒業後、「BBTをもっと使い倒さなきゃ、もったいない!」と気づき、PEGL初級、中級を経て、現在は、BBT大学でLA(ラーニングアドバイザー)をしています。新興国ビジネス事例研究やベンチャー経営研究、デザインシンキングといったアントレプレナー系科目や卒業研究を担当しております「LA1年生」です。
そして実は、起業家としても現在「社長1年生」です。
BBT大学院卒業とともに、奈良先端科学技術大学院という理系大学院の院生さんとともに「足と靴のアンマッチ問題をITで解決」する取り組みを、会社員と並行してプロジェクト形式で着手しました。2018年、学生さんたちの卒業と日中特許申請を契機に、会社員を卒業し個人事業主として継続、2020年6月24日に東京都にて株式会社設立したばかりです。
私は、現在も奈良在住なのですが、会社は東京で登記しています。それは、この度のコロナ禍での「社会全体の強制オンライン化」への対応のためというわけではなく、私自身ずっとオンラインの恩恵を受けてきたマルチタスカーだったことに起因しています。
BBT大学院入学前は、夜間と休日に通学するタイプの大学院の単科生で、本科への入学を予定していました。しかし名古屋への転勤を言い渡されたことで、すでに合格して入学金を納める直前というタイミングで、本科への進学は断念せざるを得なくなりました。
翌年、今度は何処に転勤を言い渡されようと対応できるように、大前学長が15年前に先見の明で実現された完全オンラインのBBT大学院をチョイスいたしました。そのころから、オンラインの恩恵をフルに受けていると思います。
いえ、思い起こせば、もっと前からオンラインの恩恵は受けていました。みなさんKIYOラーニング株式会社の「通勤講座」をご存じでしょうか。2008年当時、まだ出来たばかりのベンチャーで手作り感満載なテキストでしたが「オールオンライン・スマホ・オンデマンド」での資格取得講座は新しく、中小企業診断士受験で利用しておりました。
このKIYOの通勤講座は、テキストもスマホの中にあり、“満員電車スタンディング”という過酷な通勤とのマルチタスクをも可能にする「オンライン・スマホ・オンデマンド」が生み出すパワーと将来性、これは世の中のすべてに応用できるのではないかと考えるようになりました。
そこで、まずはOL1年生のころからの自身の悩みである、自分の足に合う「パンプス靴探しの解決」というライフワーク的な課題への応用に取り組むようになりました。これが私の起業の原点になっているかもしれません。
ここで、少し自社製品の紹介をさせてください。オンデマンド3Dスペーサーは、スマホ撮影された足画像データに基づき設計された3Dスペーサーデータを用いて3Dプリンターからゴムライク素材を用いて印刷され、自分の足にぴったりの形状の柔らかい素材でできています。靴メーカーが想定している標準的な足の形状との差分を埋めて足の補正を行うオーダーメイドの「足の補正下着」と言えるものです。
これまでも、靴業界では足と靴のアンマッチという課題には長らく取り組んできています。しかしそれは「靴をどう工夫して足に近づけるか」とう視点のみで、足の個体差を標準化するという「足そのものへのアプローチ」はほとんどありませんでした。
さて、ここで話をWithコロナに戻しましょう。コロナ禍で避けなければならないこととして「密閉・密集・密接」のいわゆる三密と言われています。
この対策として、これから目指す未来のキーワードとして「開疎化」という言葉をご存じでしょうか?この言葉は、慶應義塾大学SFC 環境情報学部 教授、ヤフー株式会社 CSO (Chief Strategy Officer)である安宅和人氏の言葉で、「Withコロナ」というワードも彼が提唱したものです。
1.密閉(closed) > 開放(open)
2.高密度(dense)で人が集まって活動 > 疎(sparse)に活動
3.接触(contact) > 非接触(non-contact)
4.モノ以上にヒトが物理的に動く > ヒトはあまり動かないがモノは物理的に動く
※安宅和人氏のブログ『そろそろ全体を見た話が聞きたい2』より引用
これまで、試着が不可避な靴販売は、EC化が難しいと言われてきました。オンデマンド3Dスペーサーは、スマホで足計測し、スペーサーデータを加工生成するCADオペレーションを在宅勤務で賄うことで「開疎化の未来」への適合度が高いビジネスモデルを目指しています。
ここまで私のビジネスの話をさせていただきましたが、このビジネスモデル、2017年に取り組んだBBT大学院でのビジネスプランを作りあげる卒業研究では、まだ全く出来ていないカタチだったのです。
実は、当初卒業研究では全く別のビジネスプランで作成を進めていました。
当時私は、イノベーティブなビジネスの種と創業に関心があるエンジニアとの出会いを求めて、2016年はいくつかのハッカソン(※)へ挑戦していました。
※ソフトウェア開発分野のプログラマやグラフィックデザイナー、ユーザインタフェース設計者、プロジェクトマネージャらが集中的に作業をするソフトウェア関連プロジェクトのイベント
そのうちの1つ「MBSハッカソン」というTBS系列の関西ローカルTV局主催のイベントで優勝し、その年のハッカソン界隈の年間アワードのトップ10にも選ばれた「てくてくの書」というプロダクトを持っていました。メンバーは大阪工業大の学生さんとTV局で採用されるようなプロダクトの開発会社の社員さん、そして高専の非常勤講師の方と、年齢層もバックボーンも異なるチームで、リーダーとして参加しました。
実際にMBSラジオの公開収録イベント「MBSラジオウォーク」でパイロット的に最小ロットでのプロトタイプを本番採用され、ハッカソンの特集番組では「勝手に穴が開いていく不思議なビンゴ」という派生作品もオーダーされ、どちらもそれなりに高い評価も頂きました。そこで、番組終了後にチームは解散しましたが、思い切って自ら特許申請も行っていました。
そんな自信満々なプロダクトを持っていたので、BBT大学院の卒業研究ではそのプロダクトを誰にどうやって売り込むか「プロダクトアウト」な発想で、ビジネスプラン作成に取り組んでいました。
しかし、卒業研究指導教諭との最終面談で「プロダクトアウトの発想から離れて、1からユーザー体験を発想しなおすように」と、卒研納期まであと1か月という段階で「大ちゃぶ台返し」を食らいました。
そして、自分の内にあった「歩く」というユーザー体験にフォーカスしたプランに方向転換しました。
ここからの1ヵ月は、特許申請もしていたプロダクトで進めていた卒研を「楽しいだけのユーザーニーズでは売れない」とバッサリ切り捨て、ユーザーのペインを見つめ直す、人生で最も濃い、集中力を発揮した時間となりました。
どうしても「足にあう靴=おしゃれな靴」とする根本的解決案がこの段階では見つからず、歩きやすい「運動靴をおしゃれに変身」させて運動靴のTPOを拡張させる「ブーティカバー」で卒業研究はまとめ上げました。1か月という短期間にアンケート・ヒアリング・プロトタイプ制作もこなしプレゼン審査をなんとか乗り切ることが出来ました。
このような「追い込まれた時に何としてでも乗り切る底力」は、BBT大学院でビジネスの基礎を学び、答えのない問いに対し問題発見・戦略提案を行う実践型のケーススタディを日々行っていた、2年間の学び体験の中で習得した力だと思います。
そして、このスキルこそが、現在のコロナ禍において重要だと私が考えているものです。
田村 悦子(たむらえつこ)
株式会社ttco(ティティコ)代表取締役であり2児の母。昨年よりBBT大学でLAを務める。
[学歴]京都府立大学、大阪市立大学大学院卒業。
[職歴]株式会社ビジネスブレイン太田昭和にてシステムコンサルタントとしてシステム導入支援およびシステム導入に伴う業務改善などの実務を担う。
[起業までの経緯]幼少期に父の会社が倒産。税務署への嘆願書を書いた原体験から「いつかリベンジ」の思いを抱きつつも、システム開発会社に就職。若くして夫を亡くし乳幼児を抱えて母子家庭となり、起業の夢は封印し会社員を続ける。長男の大学入学を機にBBTに入学し、起業準備を始めた。
[BBT歴]2017年3月ビジネス・ブレークスルー大学大学院 経営管理専攻修了、2018年PEGL初級、2019年中級受講
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