編集部posts 2020年4月17日

【編集部posts】リモートワークとエルゴノミクス



執筆:武部理花(BOND-BBT修了生、RICAS代表、ビジネスコーチ・コンサルタント、経営学研究者)
編集/構成:mbaSwitch編集部

こんにちは、BOND-BBT MBAプログラム事業統括マネジャーのの米良です。
コロナの影響を受けて、リモートワーク推進が急速に進んでいる昨今、皆さまの対応状況はいかがでしょうか?

私を含め、BOND-BBT MBAやBBT大学院の修了生は、在学中に徹底的にオンライン学習に取り組んできたため、そこで得られた経験・スキルが今のリモートワークに生かされていることがたくさんあります。

今回は、BOND-BBT MBA修了生である武部さんにリモートワークとエルゴノミクスについてご紹介いただきました。

エルゴノミクスとは、心理学や生理学の知見を人工物やシステムの構造や設計、デザインなどに応用し、人間への負荷や負担、人為的なミスを減らしたり、快適性や安全性、生産性、効率などを向上させることを目指す学問分野。
ITやコンピュータの分野では、身体への負担が小さく、長時間・長期間使用しても疲労や疾病が起こりにくい構造の器具や機器のことや、身体の構造や動作に最適化され操作しやすい設計やデザインの入出力装置などを指すことが多い。



1. 私のリモート・ワークのはじまり

2011年3月11 (金)、会社の建物が被災したのが、私の長時間リモートワークの始まりでした。
当時は米国に本社を置く外資系企業に勤めており、その日は本社からきていたマネージャーとのミーティングで、東京都内のオフィスに来ており、揺れ始めた午後2時45分頃は、ちょうど会議室での打ち合わせ中でした。

東京オフィスの建物は揺れが大きかったが震災による被害はありませんでした。しかし、翌月曜日に、私が所属していたつくばのオフィスが被災していたことを知り、HRからメールのメールで、つくばの会社の建物には入らないようにとの指示を受けました。天井板が落下し、スプリンクラーの破損で一部水浸しになったようでした。

その週の所属部署の電話会議でエルゴノミクス担当者から、エルゴノミクスを考慮した在宅ワーク環境を整えること、そして社内オンライン教育システムで「オフィスワークにおけるエルゴノミクス」の講義を受けるようにと指示がありました。マウスやキーボード操作が腱鞘炎の原因になっていることから、在宅ワークのエルゴノミクスを配慮した環境構築は重要なこととみなされていました。

務めていた会社が、どれだけエルゴノミクスに気を配っていたかを示す経験が過去にもありました。
米国本社出張時のこと、私はホスト・サイトのマネージャーから空いている机を使用するよう言われました。モニターも何も置いていない、机と椅子だけのキュービクル型の机でしたが、1週間程度の出張のため、特に気にしないでその机を使い始めました。

すると、エルゴノミクス・パトロールがやってきて、「モニターとキーボードを使え、ノート・パソコンの画面の位置が低い」などと言われたのです。私は出張で一週間滞在のため、一時的にこの机を使っていると伝えると、彼はすぐにその場を立ち去ります。そして、30分と経たないうちにモニターとキーボードをカートに乗せて戻ってきて、「これを使いなさい。帰国する時はそのまま置いておけばいい、こちらで片づける」と言ってくれたのです。
一時的な出張者でも、エルゴノミクスのスタンダードを遵守すべきという考えが浸透していることを実感した出来事でした。

米国を本社に持つ外資系企業のため、早朝や夜間の電話会議も多く、震災前から必要に応じてリモートワークをする人も少なくない会社でした。WFH(Work from Home)という略語が使われ、例えば『子供が熱を出したのでWFHします』といったメールを同僚から受け取ることもよくありました。

会社のリモートワークのガイドラインには、ネット環境に加えてエルゴノミクスの考慮も含まれていましたが、一時的な在宅ワークの場合、エルゴノミクスに関するガイドラインは意識したことがなく、エルゴノミクス的に100 点満点の仕事環境は私の家にはそろっていないのが現状でした。

2. リモートワークの環境構築

震災後の最初に行われた所属部署の会議で、リモートワークの環境に関するガイドラインについてのアドバイスを受けました。
そこには、モニター・マウス・キーボードは外付けのものを使うこと、椅子の高さを調整すること、リストレストを使うこと、適度に運動をすること、などが示されていました。

今まで、電話会議や出張に出かける日など、半日のリモートワークの時は必要を感じていなかったため、外付けモニターやキーボードを自宅に置いてはいませんでした。また、椅子はインテリア性を重視した折り畳み式の木の椅子で、椅子にはアームレストも付いておらず、推奨されているエルゴノミクス対策品で手元にあったのは、マウスと、以前米国出張中にエルゴノミクス・パトロールに注意された後に買った、腕巻き式のリストレストだけでした。

それまでは、自宅でのエルゴノミクスを考えることもなく、早朝の電話会議などは床すわりで、ベッドの上にパソコンを置いて行っていたほどでした。しかし、寝室のフローリングに床すわりを1時間もすると、案の定悪姿勢の影響が出てきていました。

会議後、エルゴノミクス担当者が言及したガイドラインに従って、電気店へ行きモニターとキーボードを購入し、椅子も高さ調整出来てアームレストと背もたれが付いた椅子を購入しました。個人所有で持っていたかったので、自費で。

しかし、この震災後のリモートワークは結局3カ月半ほど続き、エルゴノミクスを考慮したリモートワークの環境を整えたことで、腱鞘炎や肩こり・腰痛などに悩まされることなく仕事を続けることが出来たと思います。

3.BOND-BBTのオンライン学習、そして外出自粛の2020年

2011年の東日本大震災を機会に、自宅で長時間仕事ができる環境を構築することができた事が、BOND-BBTのオンライン学習でも活かされる結果となりました。

私は、2016年にBOND-BBT MBAに入学しました。
オンラインで講義映像を視聴し、オンライン会議システムでバーチャル授業を受け、グループワークの話し合いでSkypeを使い、電子や紙媒体の参考書を読み、数ページにわたるレポートを書き、長い時には2時間座りっぱなしで試験を受けるなど、長時間デスクに座って学習することが多くなりました。

勉強中に腕や腰や肩が痛くなってくると、学習における集中力にも影響します。東日本大震災の頃に働いていた外資系企業で深く刷り込まれた、エルゴノミクスのマインドは、BOND在学中に健康的に勉学に励むのに大いに助けになりました。

そして2020年、新型コロナウィルスの感染拡大防止のため、世界中の人々がリモートワークをしなければならない状況になっています。ストレスや運動不足の問題、同居する家族との対応など、自宅でのリモートワークで考慮すべき問題は多くあります。
しかしそのチェックリストにぜひ、エルゴノミクスの問題の解消も含めてほしいと思います。

ぜひみなさんの現在のリモートワークの環境がエルゴノミクスに配慮されているかどうか、チェックしてみてください。

エルゴノミクスを配慮した環境チェック!



①パソコンは机やテーブルの上で使う

・パソコンを膝やベッドの上に載せて使っていないか

悪姿勢による疲労を防止しましょう。

②モニターは適切な高さにする

・モニターの上端の高さが目線の高さと同じになっているか
・モニターからの距離は50センチぐらい離れ、少し見下ろす形になっているか

モニターは高機能品でなければ比較的安価で手に入ります。モニターを置く場所がない場合は、書見台や本を積み重ねるなどしてノートパソコンの画面を適切な高さにセットしましょう。

③外付けキーボードとマウスを使う

・ノートパソコンに外付けキーボードを使っているか
・マウスもタッチパッドを使わずに外付けマウスを使っているか

④リストレストを使う

・マウス、キーボードを使う際に手首を置くリストレストを使用しているか

柔らかいタオルなどをロールして代用してもOK。腕への刺激を抑え、肩こりや腱鞘炎対策になります。

⑤椅子と足台

・椅子は、モニターや机に合わせて高さが調整でき、背もたれとアームレストがあるものを使用しているか
・肘の角度は90度、肘をアームレストに置いているか
・椅子に座った際に足が浮く場合は、足元に足台や雑誌を重ねて置く

⑥適度な休息をとる

・パソコンを1日使っている場合、1時間に1回ストレッチをしているか

いかがでしたでしょうか?
みなさんの今のリモートワーク環境は、エルゴノミクスの観点で考えた時、どれぐらい整備されているでしょうか?
少しでも快適な環境を整えて、この状況をみんなで乗り越えましょう!

武部理花

BOND-BBT MBA 2019年2月修了
芝浦工業大学工学部工業化学科卒業後、NTTエレクトロニクス、マレーシアの1st Silicon (現在はX-FAB)、インテル(日本法人および米国アリゾナ工場、中国大連工場駐在)、パナソニック・タワージャズセミコンダクターと半導体業界でプロセスエンジニアリング、品質保証、カスタマー及びサプライター担当のアカウントマネージャーの仕事を経て2019年10月に独立。
ビジネスコーチ・コンサルタント、経営学研究者。
趣味は旅行で、テーマは歴史と自然。教材動画作成・お絵描きも趣味の領域。