業界ウォッチ 2021年5月11日

【データから読み解く】世界各国のEV販売台数・保有台数と成長性

今回は「世界のEV販売・保有台数」を取り上げてご紹介いたします。

先日(4/29)、国際エネルギー機関(IEA)が、電気自動車(EV)などの最新動向を分析した報告書「Global EV Outlook 2021」を公表しました。同報告書によると、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2020年の世界の自動車販売台数は16%落ち込んだものの、EVの新車販売台数(※1)は、対前年比41%増の約300万台に達したそうです。

※1:バッテリー電気自動車(BEV: battery electric vehicles)とプラグインハイブリッド車(PHEV:plug-in hybrid electric vehicles)の合計

確かに、EVはコロナ禍以前から注目されていた分野でありましたが、最近のテスラの高業績や、昨今のSDGsやESG投資といった環境配慮型の事業への投資資金の流入などで、EVの流れが加速している印象があります。

それでは、EVはどの国・地域で販売が伸びているのでしょうか。世界のEV保有台数で見た場合、どの位伸びていて、最も大きな市場となっているのはどの国・地域なのでしょうか。また、将来的にはどの位の規模に伸びるのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

EV販売台数は、EU排ガス規制強化・EV購入補助金増額により欧州で急増

まず、世界のEV販売台数(乗用車)の推移を国・地域別に見てみます。欧州をみると2015年は18.8万台で、そこから増加トレンドとなり、19年(56.7万台)から20年(137.2万台)にかけて約2.4倍に急増しています。中国は15年が20.8万台で、そこから18年(108.1万台)まで急増トレンドでしたが、19年に106万台へと落込み、20年が115.9万台と小幅な増加にとどまりました。米国は、15年に11.4万台で、そこから増加トレンドとなりますが、18年(36.1万台)をピークに減少トレンドに転じ、20年には29.5万台へと落ち込んでいます。

欧州は、20年に中国の販売台数を抜いた形になりますが、これにはEUの排ガス規制が20年に強化されたことや、独仏がコロナ禍の経済対策の一環として、EV購入補助金を増額したことが影響しているようです。一方の中国は、購入補助金の減額や、中国各都市の自動車産業振興目的で規制が緩和され、ガソリン車の購入が増えたことも背景にあるとの指摘があります。

EV保有台数は中国がトップ、欧州が続く

次に、世界のEV保有台数(乗用車)を見てみます。世界全体では、2010年で1.7万台でしたが、そこから増加トレンドが徐々に加速し、20年には1020万台と1000万台を超える規模となりました。国・地域別のEV保有台数を見ると、20年時点では中国が最も多く451万台となっています。次いで欧州(316万台)、米国(178万台)と続きます。
EV保有台数で見ると、やはり人口規模の大きい中国がトップに来ることが分かります。

さらに、将来のEV保有台数はどの位の規模になっているか見てみます。ここでは乗用車に加え、バス、トラック、バン等を含めた保有台数の予測を見てみます。世界全体では、20年時点では約1460万台ですが、25年に5172万台、30年に約1億4500万台になると予想されています。2020年からの10年間で10倍近く増えることになります。
国・地域別で見ると、2030年時点では、中国が最も多く約5600万台、次いで欧州(約4200万台)、米国(約1600万台)、インド(約900万台)と続きます。

こうしてみると、業績好調な米テスラの本社がある米国ではなく、中国、欧州のEV市場規模が大きいことが分かります。また、やはり将来予測で人口規模の大きい中国がトップとなっていますが、欧州もそれに続き、インドが上位に食い込んでいることが分かります。また、日本市場は「その他」に入っており、世界市場から見ると日本国内EV市場が小さいということが分かります。


数字で見ると、世界のEV市場の主戦場が、中国、欧州となるということを念頭に置いて、今後の自動車産業の動きを注目しておきたいですね。

【出典】
Global EV Outlook 2021
https://www.iea.org/reports/global-ev-outlook-2021

Global EV Data Explorer
https://www.iea.org/articles/global-ev-data-explorer