執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)
今回は「自動運転成績ランキング」を取り上げてご紹介いたします。
先日、米カリフォルニア州内の公道で実施された自動運転車の走行試験結果をまとめた報告書が同州の車両管理局(DMV)から公表されました。
同調査結果によると、自動運転モードが解除されることなく走行した距離のトップは米アルファベット傘下のWaymoで、米GM傘下のCruiseが2位で、その後に中国系企業が上位にランク入りしています。
同局は毎年、自動運転の「解除レポート(Disengagement Report)」を公表しています。自動運転中に人間ドライバーが主導に切り替えた回数や自動運転に干渉した回数、自動運転の走行距離などを調査して報告しています。
自動車産業は、CASE(コネクテッド、自動運転、シェア、EV)の中でも最近では、好調テスラや、アップルのEV「アップルカー」参入の話題など、EV関連の話題が多くなっていますが、自動運転の実験も着実に進められているようです。
自動運転については実用化の目途については、様々な見解があるようですが、現状でどの位のことが達成されているのでしょうか。また、どの国のどのような企業が自動運転に取り組んでいて、どの位自動運転の水準が向上しているのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。
まず、「自動運転が解除されることなく走行した距離」(総走行距離÷解除回数)のランキングを見てみます。トップは米Waymoの4.79万kmで、次いで米Cruiseの4.56万km、中国AutoXの3.26万km、中国Pony.AIの1.72万kmと続きます。
ここから、「自動運転が解除されることなく走行した距離」の上位10社に、米企業5社、中国企業5社がランク入りしていることが分かります。ちなみに、アップルは15位(231km)となっています。また、日本企業では日産自動車が16位(158km)、トヨタが25位(3.8km)となっています。
「総走行距離」で見ると、トップが米Cruiseの123万kmで、次いで米Waymoの100万kmと続き、3位は大きく差が開いて中国Pony.AIの36万km、米Zooxの16.4万kmと続きます。実際に公道での実験を行った総走行距離でみると、上位2社が圧倒的であることが分かります。
次に「自動運転が解除されることなく走行した距離」がどの位伸びたのか、上位企業を取り上げて時系列で見てみます。
米Waymoは2015年時点では約2000kmでしたが、そこから上昇トレンドで、19年から20年にかけて大幅に伸びて4.79万kmに達しています。米Cruiseは、17年時点で約2000kmでしたが、Waymoよりも急上昇トレンドで20年には4.56万kmとなっています。
また、20年には報告されていませんでしたが、中国Baiduは17年時点では、わずか70kmでしたが19年には2.89万kmまで上昇しており、19年時点ではWaymo、Cruiseを抜いてトップとなっています。
この自動運転解除レポートの解釈・妥当性については、様々な見解・批判もあるものの、技術の専門家的な視点で見るというより、どのような企業が自動運転に取組んでいるのか、その成果がどのようなものなのかの参考にはなるのではないかと思います。
こうしてみると、中国企業が米国企業の上位企業の水準に近付いていること、自動車メーカー以外のプレイヤーが自動運転車に取り組んでいることが見て取れます。
自動運転に関する報道を見かけるものの、時々、こうしたデータを含めて、どんな企業が自動運転に取り組んでいるのか、その水準がどうなっているのか一覧してチェックするのも良いかもしれませんね。