今回は「白物家電の国内出荷額推移」を取り上げてご紹介いたします。
先日(4/20)、日本電気工業会(JEMA)が2020年度の白物家電出荷額を公表しました。同公表内容によると、20年度の出荷額は前年度比6.5%増の2兆6141億円とのことで、1996年度以来24年ぶりの高水準となりました。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、外出自粛による「巣ごもり」需要の拡大で調理家電製品が大幅増となった他、一人10万円の特別定額給付金の支給の後押しもあり、ルームエアコンなどの大型製品も好調に推移したことが影響しているようです。
確かに、在宅時間が長くなる「巣ごもり」需要で白物家電が伸びることは想像がつきます。それでは、白物家電はここ数年のトレンドと比べてどの位伸びているのでしょうか。その中でもどのような白物家電の出荷が伸びているのでしょうか。また、出荷が落ち込んでいる白物家電はあるのでしょうか。実際に数字をみて確認してみたいと思います。
まず白物家電出荷額の推移を見てみたいと思います。2006年度から2020年度の推移をみると、2006年度は1.98兆円で、そこから2兆円前後で推移し、2010年度にエコポイント特需で2.24兆円に拡大します。
そこから微減傾向でしたが、13年度に消費税増税前(5%から8%への増税)の駆け込み需要で2.42兆円へと伸びました。翌14年度はその反動で2.13兆円と大きく落ち込みますが、以降は微増トレンドで推移しています。19年度から20年度では、冒頭で説明したように巣ごもり需要による伸びがみられました。
なお、JEMAの21年3月時点の「電気機器の見通し」では、20年度は対前年度比2.8%増の見通しで、21年度は対前年度比1.8%減との見通しを出しています。つまり、21年度は20年度よりも需要が落ちこむ見通しを立てていることになります。
次に、白物家電の中でもどの品目が伸びているのか、20年度の品目別出荷額の対前年度比を見てみます。
最も伸びが大きかったのは「空気清浄機」で対前年度比100.7%増(20年度出荷額1095億円)となっています。次いで「ホットプレート」(同56.8%増、116億円)、「加湿器」(同34.1%増、101億円)、「トースター」(同22.4%増、148億円)、「除湿器」(16.4%増、215億円)と続きます。
白物家電全体の伸び(同6.5%増)には届かないものの、前年度を上回った品目としては、「食器洗い乾燥機」(同6%増)、「電子レンジ」(同5.7%増)、「電気冷蔵庫(大型)」(同4.1%増)、「ルームエアコン」(同3.5%増)などがあります。
一方、前年度を下回った品目としては「扇風機」(同16.7%減)、「電気シェーバー」(同13.1%減)、「電気カーペット」(同12.8%減)、「電気アイロン」(同10.6%減)、「ヘアドライヤー」(同6.7%減)などがあります。
こうしてみると、調理家電製品の他に、新型コロナの影響で健康・清潔を保つための空気清浄機や、室内環境を快適にするための空調・除湿加湿器、在宅時間増加に伴う掃除・洗濯に関する白物家電の需要が伸びていることが分かります。
一方、外出機会が減少し、身だしなみ等のために用いることが多かった家電製品(電気シェーバー、電気アイロン、ヘアドライヤーなど)の落ち込みが大きくなっていることが分かります。
新型コロナウイルス感染症対策として、今年の4月上旬から「まん延防止等重点措置」、4月25日から3度目の緊急事態宣言(東京都、京都府、大阪府、兵庫県)が出され、昨年と同じくGW期間中の外出の自粛要請がなされています。
昨年度と同じように、外出を控え自宅で過ごす人が多いのかもしれませんが、一方で、昨年よりは新型コロナへの対応方法が分かったので、感染対策をした上で外出する人が多くなるのかもしれません。
また、在宅時間を快適に過ごすための白物家電は既に購入済みという人が多ければ、新たに白物家電を買う人は昨年度ほど多くないかもしれません。
新型コロナの影響でたまたま売れたというのではなく、新型コロナの影響によるライフスタイルや消費者意識の変化をしっかり捉えた商品を提供していくことが大切になりそうですね。
(出典)
民生用電気機器 国内出荷実績
https://www.jema-net.or.jp/Japanese/data/kakoku.html
電気機器の見通し 資料2021年度一般社団法人 日本電機工業会
https://www.jema-net.or.jp/Japanese/data/mitoshi/pdf/2021mi_data.pdf