業界ウォッチ 2025年1月28日

【データから読み解く】世界のCO2排出量推移

今回は「世界のCO2排出量推移」を取り上げてご紹介いたします。

先日、トランプ大統領の2期目の就任演説がありました。そこで、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」から再び離脱すると発表し、大統領令に即日署名しました。

パリ協定は国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)に基づく協定で、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べ2℃より十分低く、1.5℃に抑える目標を掲げ、すべての参加国に温室効果ガスの排出削減を求めるものとなっています。参加国は自国の排出削減目標を作って、国連に提出することになっています。

米国は第1次トランプ政権でパリ協定から離脱したものの、21年に就任したバイデン前大統領が初日に復帰を指示しました。そして、エネルギー開発の推進を掲げるトランプ氏は再離脱を公約に掲げて昨年の大統領選に勝利し、第2次政権での再離脱への大統領令署名に至りました。

それでは、世界の温室効果ガスがどのように推移しているのでしょうか。その中でも影響の大きい二酸化炭素の排出量は、どの部門からの排出が多くなっているのでしょうか。国別でみた場合の、二酸化炭素の排出量の多い国はどこで、どのように推移しているのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。
世界のCO2排出量推移
まず、世界の温暖化ガス(二酸化炭素:CO2、メタンガス:CH4、一酸化二窒素:N2O)の推移を見てみます。最も多いのはCO2で、1990年は225.2億メトリックトン(MT)でしたが、以降増加トレンドで2019年には363.7億MTに達しました。翌年新型コロナの影響で343.7億MTまで落ち込みましたが、以降再びそうかトレンドに転じ、2023年には370.1億MTと過去最大に達しています。CH4(メタンガス)の推移を見てみると、1990年は78億MTでしたが、以降微増トレンドで2023年には100億MTとなっています。N2O(一酸化二窒素)の推移をみると、1990年は22.8億MTでしたが、以降ほぼ横ばいとなっており、2023年には30億MTとなっています。

次に温室効果ガスの中でも割合の大きい二酸化炭素の、部門別排出量の推移を見てみます。最も大きいのは電力部門で、次いで運輸部門、工業用燃料部門、建築物部門、工業プロセス部門、燃料採掘部門、その他と続きます。

電力部門のCO2排出量推移をみると、1990年は76.4億MTでしたが、以降増加トレンドで2018年に142.2億MTに達しています。2020年は新型コロナの影響で135.9億MTに落ち込みますが、再び増加トレンドに転じ2023年には149.2億MTとなっています。運輸部門を見ると、1990年は46.2億MTでしたが、以降増加トレンドで、2020年に一旦落ち込みますが、以降再び増加トレンドに転じ、2023年には82.4億MTとなっています。工業用燃料も概ね同様の動きを示しており、1990年は39.6億MTでしたが、以降増加トレンドで、2020年の落ち込みを経て、2023年には64.1億MTとなっています。

次に、国別のCO2排出量推移を見てみます。2023年時点で最も大きいのは中国で119億MTとなっています。次いで大きいのが米国で、49.1億MTとなっています。以降、インド(30.6億MT)、EU27(25.1億MT)、ロシア(18.2億MT)、日本(9.9億MT)と続きます。中でも、中国がダントツに大きくなっていますが、1990年は24.8億MTでしたが、以降急増トレンドとなり、2006年には米国を抜き、2023年には米国の倍以上の排出量となっています。米国は、1990年は51.2億MTでしたが、以降増加トレンドとなるものの2005年の61.3億MTをピークに減少トレンドに転じています。EU27は、1990年に38.7億MTでしたが、以降減少トレンドとなり、2023年には25.1億MTとなっています。

インドは、1990年に5.8億MTでしたが、以降増加トレンドで2023年に30.6億MTと世界3位までに増加しています。

こうしてみると温室効果ガスのうち二酸化炭素の排出量で大きいのが、電力・工業部門での排出が大きくなっていることが分かります。国別では、中国、インドといった人口の多い新興国のCO3排出量の増加が著しく、米国、EUといった先進国はCO2排出量を減らしてきていることが分かります。

米国のパリ協定離脱は、CO2排出量削減に大きな影響を与えそうです。中国、インドといったCO2排出量の伸びが著しい国や途上国は、先進国のような削減目標の縛りはないかもしれませんが、温暖化ガス削減目標に向けて、先進国への支援要請が強まる可能性が高くなりそうです。日本がどういう立ち位置でパリ協定に取り組むのか、重要な局面となりそうですね。

資料:
Emissions Database for Global Atmospheric Research
global Carbon Atlas