業界ウォッチ 2024年2月27日

【データから読み解く】生成AI市場の世界需要見通し

今回は「生成AI市場の世界需要見通し」を取り上げてご紹介いたします。

前回は、日本企業の生成AI活用状況についてみてみましたが、今回は、生成AIの世界の需要動向見通しについてみてみたいと思います。生成AIに関しては日進月歩であり、市場動向・需要見通しなどはしばらく時間が経つと、予測数値が大きく変わってしまうかもしれません。とはいえ、どこかの時点で数値を確認しておかなければ、その後の変化を追うこともできないので、都度数字をキャッチアップしておく必要があると思います。

それでは生成AIの市場規模はどの位の規模で、今後どの位伸びることが予想されているのでしょうか。生成AIの中でも、生成AI基盤モデルや生成AI関連アプリケーション、生成AI関連ソリューションなどの内訳はどのようになっており、今後どの位の規模になることが予想されているのでしょうか。また、利活用分野別でみると、どの分野が大きく、どのように推移しているのでしょうか。また、生成AIの影響を受けるとみられるハードウェアの需要はどのように変化すること予想されているのでしょうか。

各種調査期間が生成AIの市場規模予測・見通しなどを発表していますが、2023年12月にJEITA(電子情報技術産業協会)に生成AI市場の世界需要額見通しを発表しています。

実際に数字や事例を見て確認したいと思います。
demand Generative AI

まず生成AI市場の需要額の見通しを見てみます。世界全体では、2023年に106億ドル、2025年に671億ドル、2030年には2110億ドルに達するものとみられています。2030年には、2023年の20倍に達するものと見られます。

その内訳ととして、「生成AI基盤モデル」、「生成AI関連アプリケーション」、「生成AI関連ソリューション」別の推移を見ると、「生成AI基盤モデル」は2023年に2億ドル、25年に14億ドル、30年には72億ドルとなっています。「生成AI関連アプリケーション」は、2023年は95億ドル、25年は625億ドル、30年は1950億ドルとなっています。「生成AI基盤モデル」は、2023年は9億ドル、25年は32億ドル、30年は88億ドルとなっています。「生成AI関連アプリケーション」が最も大きいことが分かります。

ちなみに図には示されていませんが、日本の生成AI市場需要額は、2023年時点で1188億円(約8.6億ドル)、2025年は6879億円(約49.6億ドル)、2030年は1兆7774億円(約128億ドル)と予想されています。(注1)

次に、生成AIの利活用分野別の需要額見通しを見てみます。2030年時点で最も大きいのは「製造」で507億ドル(2023年時点、24億ドル)となっています。次いで大きいのは金融で、同じく30年時点で439億ドル(同23年時点、19億ドル)となっています。以降、「通信・放送」320億ドル(同、23億ドル)、「流通」253億ドル(同12億ドル)、「医療・介護」184億ドル(同、8億ドル)、「社会インフラ」180億ドル(同、9億ドル)となっています。

更に、生成AIの影響を受けるハードウェアの需要見通しを見てみます。ここでは、パソコンやスマートフォン、ヘッドマウントディスプレイ、サーバ、ストレージなどハードウェア11品目を抽出して需要見通しをまとめた結果が示されています。

世界市場でみると2023年は8004億ドルでしたが、2030年には1兆1056億ドルに拡大する見通しとなっています。日本市場でみると、2023年は4兆5773億円(約330億ドル)でしたが、2030年には5兆8864億円(約425億ドル)へと拡大する見通しとなっています。

こうしてみると、世界的に生成AIの需要は、2030年までに23年の20倍近くに拡大し、特に生成AI関連アプリケーションが大きいことが分かります。利活用分野別では、製造、金融、通信・放送、流通分野での利活用需要が大きいことが分かります。また、ハードウェアに関しては、JEITAでは、ハードウェアの中でも、サーバやストレージが、今後生成AIの処理・実行において膨大なデータの保管・管理のために必要になるため、需要の押し上げ効果が大きいと指摘しています。

生成AIは上手く活用して生産性向上・付加価値向上につなげることができますが、生成AI関連ビジネスそのものにも事業機会・成長機会が大きいと言えそうです。特に生成AI関連アプリケーションビジネスや、製造、金融、通信・放送、流通といった分野でのビジネス展開、AIを支えるハードウェアとしてのインフラ分野としてサーバやストレージビジネスもチャンスが大きそうですね。

注1:平均為替レートは 2023 年:138.6 円/ドルとして、以降同一で計算

出典:
JEITA「生成AI市場の世界需要額見通しを発表」
JEITA「生成AI市場の世界需要額見通しを発表」 PDF

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