業界ウォッチ 2023年9月12日

【データから読み解く】国内防災関連市場

今回は「国内防災関連市場」を取り上げてご紹介いたします。

毎年9月1日は「防災の日」ということで、各種メディアでの防災に関する情報が流れてきますが、今年は関東大震災から100年の節目ということで、特に防災に関する情報が多く流れてきました。

近年は地震だけでなく、台風・豪雨などによる被害も多く、海外では今年のハワイのマウイ島のような大規模な山火事等のニュースも流れてきており、自然災害に関する情報に触れる機会が多くなっています。

それでは、国内の生活者は、防災意識・防災対策の取組としてどのようなことに取組んでいるのでしょうか。

また防災関連する市場として、防災食品の市場はどのように推移しているのでしょうか。そして、防災に関連するシステム・サービスの市場はどのように変化すると予想されているのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。
Disaster prevention

まず、これまで行ったことがある防災対策としてどのようなものがあるのか、JA共済連による「防災に関する意識と実態調査」のアンケート結果を見てみます。同調査では、85.8%が何らかの対策を行ったと回答しています。行った対策の内容を見ると、最も多かったのは「ハザードマップの確認」で39.6%が行ったと回答しています。次いで「非常用飲料水の備蓄」(35.8%)が多く、以降「非常用食料の備蓄」(35.2%)、「生活用品の備蓄」(33.6%)、「学校での避難訓練」(28.5%)、「家具のすべり止め」(28.5%)と続きます。

次に、防災対策がどの位進んでいるのかを見るために、防災食品の市場規模の推移を見てみます。矢野経済研究所の調査結果によると、2017年度は159.4億円となっています。以降は増加トレンドとなっており、2019年度には231.9億円と200億円を超え、2021年度には312.8億円と300億円を突破しています。5年間で2倍近くに拡大していることが分かります。2026年は319.1億円と、これまでよりの市場の伸びが鈍化することが予想されています。

更に、防災に関連する情報システム・サービス市場の推移を見てみます。調査会社のシードプランニングは、同市場を、行政の取組(観光うよう)や民間の取組(民間需要)を含めた市場として市場規模を算出しています。含まれる情報システム・サービスとしては、「防災情報システム」、「センサ設備」、「情報サービス」、「防災行政無線」、「消防無線」、「消防指令システム」、「通信回線」が上げられています。

同調査結果によると、2021年は1050億円となっています。以降は増加トレンドとなっており、2027年には1533億円となることが予想されています。年平均で6.5%の伸び率となっています。

こうしてみると、防災に関する取り組みは、生活者レベルでも飲料水・食品の備蓄などをはじめとして取組が進展していることが分かります。それに伴って、防災食品の市場も大きく伸びていることが分かります。

また、生活者だけでなく、民間企業・行政なども含めて、防災に対する取り組みとして防災情報システム・サービスへの支出を増やしていることが分かります。

自然災害は少ない方が望ましいのですが、現実問題としては、自然災害が数多く発生しており、防災対策を取らざるを得ない状況だと思います。防災に関連して、食品・飲料などの備蓄の他にも、防災グッズの他、各種サービスが増えてきています。

防災に関する教育・教材、防災意識の啓蒙などサービス、などを見かけることも多く成りました。デジタルゲーム要素や、3D画像・シミュレーションなどのテクノのロジーを活用した防災教育サービスなども増えているようです。

自然災害対策という観点で様々な角度からみると、社会課題解決型の新たな事業機会としても考えられそうですね。

出典:
JA共済連「防災に関する意識と実態調査」
https://www.ja-kyosai.or.jp/pdf/2023/202308-chousa.pdf

矢野経済研究所プレスリリース「防災食品市場に関する調査を実施(2021年)」

シード・プランニング プレスリリース「2023年版 防災情報システム・サービス市場の最新動向と市場展望」