業界ウォッチ 2024年7月2日

【データから読み解く】国内総合電機主要企業の業績推移

今回は「国内総合電機主要企業の業績推移」を取り上げてご紹介いたします。

6月下旬は多くの上場企業で株主総会が開かれました。上場企業の企業業績は、全体としては、円安効果や値上げなどの効果によって増益となった企業が多かったようです。その一方で、業績を落とした企業も有り、業界内でも明暗が分かれているようです。

その中で。総合電機業界は、今となっては、各社の事業内容が多岐にわたり、かつての電機メーカーとは異なる事業構造をなり、総合電機という同じ業界として見るのが妥当なのか疑問もあるものの、総合電機として見ると、近年は業績の違い・差が大きくなっているようです。

それでは、主な総合電機企業の売上高の推移がどのように推移しているのでしょうか。また当期利益はどのように推移しているのでしょうか。時価総額はどのように推移しているのでしょうか。企業によってどのような違いが見られるのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。
domestic general electric companies

まず、総合電機企業の売上高の推移を見てみます。2024年3月期で最も売上高が大きかったのはソニーグループ(以下ソニー)で、約13兆円となっています。次いで日立製作所で約9.7兆円となっており、以下パナソニックHD(パナソニック)約8.5兆円、三菱電機約5.3兆円、シャープ2.3兆円とつづきます。売上高推移で特徴的な企業を見ると、ソニーは2000年代前半は7兆円前後でしたが、2008年に8.9兆円となりますが、その後2012年の6.5腸炎まで落ち込みます。以降上昇トレンドとなり、2020年から急上昇しています。

また2020年3月期に新型コロナの影響で、どの企業も売上が一旦落ち込みましたが、以降は回復しコロナ前の水準を超えています。唯一例外的にシャープが、2008年の3.4兆円をピークに減少トレンドが続いています。

次に当期利益の推移を見てみます。2024年3月期で最も大きいのがソニーで約9700億円となっています。次いで日立製作所(約5900億円)、パナソニック(4440億円)、三菱電機(約2850億円)と続きます。シャープが-1500億円と唯一赤字となっています。推移を見ると、各社とも2000年代後半~2010年代前半にかけて数千億円規模の赤字を出していますが、2010ない後半からは回復し黒字化しています。特に、ソニー、日立製作所の伸びが際立っています。一方、シャープは一旦黒字化したものの、2023年3月期、2024年3月期と2期連続で赤字となっています。

さらに時価総額の推移を見てみます。2024年3月末時点で最も大きいのはソニーの16.4兆円となっています。次いで日立製作所(12.9兆円)、三菱電機(5.4兆円)、パナソニック(3.6兆円)、シャープ(約5400億円)と続きます。推移でみると、2000年3月末当初はドットコムバブルで高い状況でしたが、バブル崩壊後落込み、2006年のライブドアショック前までいったん回復するも、以降再び落ち込みます。2013年3月期を境に再び上昇とっ連弩となりますが、ここで大きく伸ばしたのはソニーでした。日立製作所が少し遅れて2020年以降急速に伸びています。

唯一シャープが異なる動きをしており、2007年3月末に2.5兆円となって以降下降トレンドとなり、2016年3月末には約2200億円にまで落込みます。同年に台湾の鴻海の参加に入ることとなり、17年3月期に2.3兆円まで回復しますが、以降は下降トレンドとなっています。

こうしてみると、総合家電の中でも、ソニー、日立製作所の好業績状況が良く分かります。ソニーは家電というよりもコンテンツ・ゲームなどの事業が大きく業績に貢献しており、日立はITソリューション、特に最近ではAIが大きく貢献しています。一方パナソニックは、かつてはソニーと対比されていましたが、2010年代後半から大きく差がついてきていることが分かります。EV向け電池に力を入れたところ、直近のEV失速の影響もあるようです。またシャープは、2000年代後半に液晶で飛躍しましたが、その液晶がもとで一気に業績が悪化し、鴻海の参加に入って一時期は回復したものの、この1-2年は、また業績が悪化していることが分かります。

総合家電の中身を見ると、伸びる分野・収益性の高い分野への事業展開をしている企業とそうでない企業との差が明らかになっていると言えそうです。

資料:スピーダ(SPEEDA)