業界ウォッチ 2025年1月14日

【データから読み解く】国内環境産業市場規模

今回は「国内環境産業市場規模」を取り上げてご紹介いたします。

日本の環境産業は、気候変動対策や循環型社会の実現に向けた世界的な潮流の中で、年々重要性を増しています。環境省の最新の発表によると、2020年度の国内環境産業の市場規模は約97.4兆円に達し、国内GDPの約10.7%を占めています。この産業は、省エネルギー、再生可能エネルギー、廃棄物管理・リサイクルなど、多岐にわたる分野で拡大を続けています。ESG投資や企業のカーボンニュートラルへの取り組みが加速しており、環境関連技術やサービスへの需要はさらに高まることが予想されます。

それでは国内の環境産業の市場規模は、のように推移しているのでしょうか。その中でも大きな割合をしている市場分野はどのような分野なのでしょうか。また、その分野の中でも、大きな伸びを示している市場はどの市場なのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。
domestic environmental industry

まず、環境産業全体の市場規模の推移(2000年~2050年推計)見てみます。

2000年は62.6兆円でそこから増加トレンドで2008年に96.5兆円となります。09年はリーマンショックで79兆円へと落ち込みますが、以降再び増加トレンドとなり、2019年には115.5兆円となっています。翌20年に新型コロナの影響で、107.3兆円と落込みますが、以降は増加トレンドで2023年には121.2兆円、2030年には129.1兆円、2050年には135.9兆円にたっすることがよそうされています。

2050年時点の推計でみると、国内環境産業の中で最も大きなウェイトを占めているのが「廃棄物処理・資源有効利用」で70兆円、次いで「地球温暖化対策」48.7兆円、以降「自然環境保全」8.9兆円、「環境汚染防止」8.3兆円とつづきます。

次に、国内環境産業の中でウェイトの大きい「廃棄物処理・資源有効利用」分野の内訳と推移を見てみます。最も大きいのは「リフォーム、リペア」で2023年時点で19.9兆円、2050年で25.3兆円となっています。次いで大きいのは「リース、レンタル」で、2023年13.2兆円、2050年19.1兆円となっています。以降「リサイクル素材」(23年10.7兆円、50年10.9兆円)、「資源有効利用製品」(23年8.6兆円、50年8.4兆円)、「廃棄物処理、リサイクル」(23年5.2兆円、50年4.1兆円)、「長寿命建築」(23年2.7兆円、50年2.2兆円)と続きます。

次に、「地球温暖化対策」分野の内訳をみてみます。最も大きいのは、「自動車の低燃費化」で23年に14.7兆円、50年に19.9兆円となっています。次いで大きいのは「省エネルギー建築」で、23年に12.2兆円、50年に11.0兆円となっています。以降、「クリーンエネルギー利用」(23年7.6兆円、50年9.9兆円)、「省エネルギー輸送機関・輸送サービス」(23年2.4兆円、50年4.5兆円)、「省エネルギー電化製品」(23年2.0兆円、50年2.3兆円)、「ユーティリティ省エネルギー化」(23年0.6兆円、50年1.0兆円)、「排出権取引」(23年482億円、50年482億円)

こうしてみると、環境産業は、2000年から長期でみると大きく成長していることが分かります。2023年~2050年の長期予測推計で見ても、成長している市場であることが分かります。また、市場分野別でみると、「廃棄物処理・資源有効利用」分野では、「リフォーム、リペア」、「リース、レンタル」が規模としても大きく、成長している市場であることが分かります。

「地球温暖化対策」分野では、「自動車の低燃費化」、「クリーンエネルギー利用」、「省エネルギー輸送機関・輸送サービス」が成長している市場であることが分かります。

環境産業といっても、様々な市場分野があり、その中でも様々な市場があります。実際の市場規模が大きく、伸びている市場を見ると、従来の廃棄物処理・リサイクルといった分野よりも、「リフォーム、リペア」や「リース、レンタル」など「既存ストックを活用」したり、「所有から利用」するなどのライフスタイルの変化を表している分野や、「低燃費化」、「省エネルギー」などの日本の技術力を生かした分野が伸びていることが分かります。

今後、環境産業という大きな市場として見るだけでなく、その中の細かな市場を見ていくと、今後さらに伸びる市場を見出していくことができそうですね。

資料:
環境省「環境産業の市場規模・雇用規模等に関する報告書の公表について」報道発表2024年07月04日
環境産業の市場規模・雇用規模等の推計結果の概要について