業界ウォッチ 2024年10月22日

【データから読み解く】国内宿泊施設稼働率

今回は「国内宿泊施設稼働率」を取り上げてご紹介いたします。

先日(9月30日)、観光庁が宿泊旅行統計調査で2024年7月の集計結果と8月分の1次速報値集計結果を発表しました。同調査結果によると、2024年7月の延べ宿泊者数(全体)は、5,666万人泊で、2019年同月比+9.4%(前年同月比+4.1%)となっています。また、2024年8月は、6,611万人泊で、 2019年同月比+4.5%(前年同月比+2.7%)となっています。

前回も少し触れましたが、日本ではインバウンド(訪日観光客)が伸びています。その中でも、インバウンドの増加によって、国内観光地のオーバーツーリズム問題などが話題となっています。

それでは、国内の宿泊者数は全体でどのくらいの規模で、どのように推移しているのでしょうか。そのうち、どのくらいが外国人宿泊者で占めているのでしょうか。また、宿泊施設稼働率はどの位で、どのように推移しているのでしょうか。コロナ前と比較して、どのような違いがあるのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。
domestic hotels occupancy

まず、国内宿泊施設延べ宿泊者数の推移を見てみます。コロナ前の2019年1月から最新の2024年8月までの推移を見てみます。延べ宿泊者数全体(日本人+外国人)でみると、2019年1月は4268万人で、2019年のピークである8月には6323万人となっています。2019年は概ね5000万人前後で推移しています。なお、宿泊者数がピークとなる8月時点を長期(2011年以降)で見ると、コロナ前では2019年が6323万人と最高値でしたが、コロナ以降では、2024年8月が6611万人と過去最高となっています。

外国人宿泊客数は、2019年1月は920万人で同年4月に1128万人と、この年のピークとなっており、2019年は概ね900万人台で推移しています。2020年以降は、新型コロナの影響で大幅に落ち込みます。また2020年4月(24.7万人)から2022年9月(82.5万人)まで100万人を割り込んでいます。以降の外国人宿泊数は、回復・増加トレンドとなり、2023年7月に約1100万人と、1000万人台を超えるようになり、2024年4月には過去最高の1450万人となっています。

外国人宿泊数比率で見ると、コロナ前は概ね20%前後でしたが、コロナ後の直近2024年でみると25%に上昇していることが分かります。

日本人宿泊数は、2019年1月は3347万人で、同年ピークの8月は5374万人となっています。2019年は平均すると月に約4000万人程度の宿泊者数となっています。コロナ以降は同様に落ち込みますが、政府の施策もあり2020年代でも3000万人近い宿泊者数となる月もありました。2023年ごろには概ね回復し、平均すると月に約4160万人の宿泊者数へと回復しています。

次に宿泊タイプ別の稼働率を見てみます。ビジネスホテル、シティホテル、リゾートホテル、旅館の稼働率の推移を見てみます。概ね。どのタイプもコロナ前に高い水準を示していましたが、コロナの影響で一気に落ち込み、それ以降回復・上昇トレンドとなっています。

コロナ前の2019年は、ビジネスホテル、シティホテルは概ね80%前後、リゾートホテルは概ね60%前後、旅館は40%前後となっています。コロナ以降回復傾向にありますが、2024年の状況でみると、ビジネスホテル、シティホテルは概ね70%前後、リゾートホテルは概ね50%強、旅館は概ね30-40%台となっています。

直近のデータ2024年8月時点の稼働率を、コロナ前の2019年8月と比較すると、シティホテルは、2019年8月(83.0%)から2024年8月(72.3%)と10.7ポイントのマイナスとなっています。同様に、ビジネスホテルは-4.8ポイント、リゾートホテルは-7.2ポイント、旅館は-6.8ポイントとなっています。

こうしてみると、日本人宿泊者数の回復に加えて、外国人宿泊者数がコロナ前を上回る水準となっていることが、国内の宿泊者数全体を押し上げていることが分かります。宿泊施設のタイプ別でみると、コロナ前のピーク時には達していないものの、ほぼ同水準まで回復していることが分かります。特に、ビジネスホテル、シティホテルの稼働率の水準が高いことも分かります。

 今後、インバウンドの受け入れをさらに拡大していくためには、ビジネスホテルやシティホテルの数を増やすほかに、旅館などでの受け入れなど、多様な宿泊施設タイプに泊まってもらうことが必要で、そのための工夫が必要になりそうです。海外の宿泊施設の事例(城や修道院、農家泊など)を参考にすることが重要になりそうです。

資料:
観光庁「宿泊旅行統計調査」