業界ウォッチ 2024年8月20日

【データから読み解く】インバウンド消費動向

今回は「インバウンド消費動向」を取り上げてご紹介いたします。

先日(7/19)、観光庁は、「インバウンド消費動向調査」の2024年4~6月期(1次速報)の結果を発表しました。同調査は、これまで「訪日外国人消費動向調査」として実施していたものを、調査目的などを見直して実施したものです。

同調査結果によると、2024年4~6月期の訪日外国人消費額は、前年同期比73.5%増、2019年同期比68.6%増の2兆1370億円と推計されており、四半期として過去最高となっていました。

確かに、新型コロナ収束後は訪日外国人旅行客(インバウンド)が大幅に増えており、各地でオーバー・ツーリズムが取りざたされるなどの話題が絶えない状況となっています。それでは、インバウンド消費額は新型コロナ前後でどのように推移しているのでしょうか。一人当たりの消費額は、どのように推移しているのでしょうか。また、直近の2024年4-6月期で見た場合、国別ではどの国の1人当たり消費額が大きく、どの国の訪日外国人客数が多く、どの国外国人旅行消費額が大きくなっているのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。
inbound spending trend

まず、四半期でのインバウンド消費額の推移を見てみます。新型コロナの影響が出る以前の2019年1-3月は1.15兆円で、そこから2019年10-12月の1.21兆円まで、概ね1.2兆円近くの金額で推移していました。2020年1-3月から、新型コロナの影響で0.71兆円と一気に落ち込み、以降2021年7-9月まで調査が中止されました。2021年10-12月(284億円)~2022年7-9月(1640億円)までは、試算値として公表されています。

2021年10-12月(0.59兆円)より全国調査が再開され、2022年1-3月(1.01兆円)には1兆円を超え、以降増加トレンドで2024年4-6月は2.14.兆円と2兆円を超える水準に達しました。

次に、国別(2024年4-6月)の1人当り旅行支出を見てみます。最も一人当たり旅行支出が多いのはフランスで41.8万円となっています。次いで大きいのが英国で41.7万円となっています。以降は、豪州(40.0万円)、イタリア(38.2万円)、スペイン(36.1万円)、米国(36.1万円)と続きます。一人当たり旅行支出上位20カ国のうち、最も小さいのは韓国で10.7万円となっています。次いでフィリピン(17.7万円)、台湾(18.1万円)、マレーシア(19.0万円)、タイ(20.3万円)と続きます。

国別(同4-6月)の旅行者数でみると、最も多いのは韓国で208.8万人となっています。次いで多いのは中国で150.2万人となっています。以降、台湾(144.6万人)、米国(77.0万人)、香港(64.6万人)、タイ(29.4万人)と続きます。上位20カ国のうち、最も少ないのはロシアで2.4万人となっています。次いで少ないのはスペインの3.8万人となっており、以降イタリア(5.7万人)、インド(7.2万人)、ドイツ(8.0万人)と続きます。

インバウンド消費額(訪日外国人旅行消費額、同4-6月)でみると、最も消費額が大きいのは中国で4299億円となっています。次いで大きいのは米国の2780億円となっています。以降、台湾(2619億円)、韓国(2229億円)、香港(1742億円)、豪州(833億円)と続きます。インバウンド消費額上位20カ国のうち最も消費額が小さいのはロシアで83億円となっています。次いでスペインの137億円となっており、以降インド(194億円)、マレーシア(203億円)、イタリア(219億円)、ドイツ(275億円)と続きます。

こうしてみると、2023年7-9月には、新型コロナ前2019年7-9月のインバウンド消費額を超えており、以降もハイペースで伸びていることが分かります。

また、国別でみた場合、一人当たり旅行消費額は、フランス、英国、豪州、イタリア、スペイン、米国といった先進国・欧州の国が多いことが分かります。一方、韓国、フィリピン、台湾、マレーシア等、近隣の北東アジア・東南アジアの国は小さいことが分かります。訪日旅行者数でみると、韓国、中国、台湾といった近隣の北東アジアの国々が多いことが分かります。一方、ロシア、スペイン、イタリア、インド、ドイツ等、日本との関係性があまり近くない大国(ロシア、インド)や、欧州の国の旅行者数が相対的に少ないことが分かります。

インバウンド消費額でみると、中国、米国、台湾、韓国など、訪日客数の多い国の消費額が多く、一方、ロシア、スペイン、インド、マレーシア、イタリア等の訪日旅行客数が少ない国の消費額が小さくなっていることが分かります。

インバウンド消費を事業機会として見た場合、1人当たり消費額の高い、欧州富裕層をターゲットとするか、訪日客数の多い近隣アジアをターゲットとするかで大きく方向性が変わってくると言えそうです。

資料:
観光庁「インバウンド消費動向調査(旧 訪日外国人消費動向調査)」