業界ウォッチ 2023年11月21日

【データから読み解く】主要国のGDP

今回は「主要国のGDP」を取り上げてご紹介いたします。

先月(10月)、国際通貨基金(IMF)が「世界経済見通し」を公表しました。同発表によると、2023年(見通し)の日本の名目GDPがドイツに抜かれたことで話題になりました。23年の見通しでは、日本のGDPは4.23兆ドルで、ドイツが4.43兆ドルと日本を上回っています。これにより、日本は世界3位から4位へと転落する見通しとなっています。

昨今の円安の影響や、ドイツの高インフレの影響も大きく、長期的な日本経済の停滞状況も反映されているとの報道もなされていました。さらに、将来的には、人口規模の大きいインドが3位になるとの予測もあります。

確かに、名目GDPはドル建て換算して比較すると、為替レートの影響を大きく受けるものの、日本経済自体が停滞を続けて、失われた30年ともいわれています。中国に世界2位の座を奪われてから、気が付いたら4位に転落という状況になっています。

それでは、日本のGDP規模の主要国と比べてどの位の規模で推移しているのでしょうか。米中と比べて規模間の差はどの位なのでしょうか。現時点での、将来予測では日本はどのくらいの位置になるのでしょうか。

また、GDP規模で日本の地位が低下したとして、一人当たりGDPはどのように変化していくのでしょうか。日本は世界的に見て、どの位の水準なのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。
major countries GDP

まず、主要国のGDPの推移を見てみます。米国は世界1位の座をキープし続けており、2000年の10.3兆ドルから、リーマンショック、新型コロナの影響があった時期を除きほぼ一貫して増加トレンドとなっており、2028年には32.7兆ドルに達すると予想されています。中国は、2000年時点は1.2兆ドルでしたが、以降一貫して増加トレンドで、2010年(6兆ドル)には日本を抜いて世界2位となり、2028年は23.6兆ドルとなっています。

日本は、2000年に5兆ドルで世界2位でしたが、2010年(5.8兆ドル)に中国に抜かれ世界3位となり、23年(4.2兆ドル)にはドイツ(4.4兆ドル)に抜かれ世界4位、26年(4.7兆ドル)にはインド(5兆ドル)に抜かれ世界5位になることが予想されています。

ドイツは、2000年は1.9兆ドルで、以降増加トレンドでしたが、2007年(3.4兆ドル)に中国(3.6兆ドル)に抜かれています。以降増減を繰返しながら、2023年に日本を抜きますが、27年(5.3兆ドル)にインド(5.4兆ドル)に抜かれています。

インドは、2000年は0.5兆ドルでしたが、以降一貫して増加トレンドで、21年に3.2兆ドルと英国(3.1兆ドル)を抜いて世界5位になっています。26年には日本を抜いて世界4位、27年にはドイツを抜いて世界3位となり、28年には5.9兆ドルになると予想されています。

次に、一人当たりGDPを見てみます。2028年の予測値でもっとも一人当たりGDPが大きいのはルクセンブルグで15.4万ドルとなっています。次いで大きいのがアイルランドの13.7万ドルで、以降スイス(13万ドル)、アイスランド(11.5万ドル)、シンガポール(10.8万ドル)と続きます。

日本は、2028年に4.25万ドルと予測されており、韓国(4.15万ドル)、台湾(4.13万ドル)とほぼ同水準となっています。一人当たりGDPの伸びを見ると、ほとんどの国で2010年から2028年で大きく伸びているのに対し、日本だけが2010年の4.5万ドルから、28年の4.25万ドルと落ち込んでいます。

また、シンガポールは2010年時点で4.7万ドルと、日本と大きな差はありませんでしたが、2028年時点では、シンガポールが10.8万ドル、日本が4.25万ドルと倍以上の差がついていることが分かります。

こうしてみると、円安の影響があるにせよ、日本の経済的な地位の低下は明らかになっています。一方、経済規模で見れば、米中の突出が目立ちますが、インドの成長も注目に値することが分かります。一人当たりGDPでみれば、シンガポールの他、アイルランドやアイスランドといった小国の伸びが大きいことが分かります。

GDPの規模や成長率、一人当たりGDPの伸びといった観点で見ると、日本市場以外での事業機会を考える上で、どの国が有望か、参考指標の一つとして考えることが出来そうですね。

出典:
International Monetary Fund, World Economic Outlook Database, October 2023