今回は「主要国の家計金融資産」を取り上げてご紹介いたします。
今年の2月下旬にロシアのウクライナ攻撃が始まり、株式市場にも大きな影響がもたらされています。今後の国際情勢がどうなるか、金融市場がどうなるのか見通すのは非常に難しい状況となっています。
しかしながら、これまで新型コロナの感染拡大以降、米国を中心とした金融緩和を背景として世界的に株高などの現象が起きました。こうした金融緩和を背景とした株高現象が、主要国の家計の金融資産形成にも大きな影響をもたらしているものと考えられます。
それでは、世界の主な国では、家計金融資産(一人当たり)はどの位の規模なのでしょうか。長期的に見て、どのように推移しているのでしょうか。また、主要国の金融資産の株や現金預金などの内訳・構成比はどのようになっているのでしょうか。長期的に見て、構成比の変化に特徴があるのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。
まず、主要国の家計金融資産(一人当たり)の推移を見てみます。2020年時点で最も大きいのは米国で31.7万ドルとなっています。次いで、大きいのはスイス(29.7万ドル)で、スウェーデン(19.7万ドル)、日本(16万ドル)、ドイツ(11.7万ドル)と続きます。
家計金融資産(一人当たり)の長期推移を見てみると、米国は2000年に12.2万ドルでしたが、そこから2007年(17.9万ドル)まで増加トレンドとなりますが、リーマンショックで一度落ち込みます。以降は増加トレンドとなり2020年に31.7万ドルとなります。この20年間の年平均伸び率(CAGR)は4.9%となっています。スイスも米国とほぼ似たような動きをしており、2000年(12.3万ドル)から20年(29.7万ドル)でCAGR4.5%となっています。スウェーデンは、2000年に4.9万ドルでしたが、そこから増加トレンドで20年に19.7万ドルと、この間CAGR7.24%と高い伸び率を示しています。日本は、2000年の7.8万ドルから緩やかな増加トレンドを続け、20年に16万ドルと、20年間でCAGR3.6%となっています。ドイツ、2000年の4.6万ドルから増加トレンドが続き20年の11.7万ドルとCAGR4.8%となっています。
特に、2019年から2020年にかけて新型コロナの影響から、金融緩和・給付金等のマネーがあふれたことにより、米国、スウェーデン、日本はこの期間に高い伸びを示しています。
次に、家計金融資産の内訳・構成比を見てみます。2020年で、現金預金比率を見ると、日本が最も高く54.2%となっています。次いでドイツ40%、スイス32%、スウェーデン13.2%、米国12.7%と続きます。同じく株式の比率を見ると最も高いのはスウェーデンの37.8%で、次いで米国36.9%、スイス13.2%、ドイツ11.4%、日本10.9%と続きます。投資信託では、最も高いのは米国で13%、次いでスイス11.9%、ドイツ11.5%、日本4.4%となっています。
こうしてみると、20年間で家計金融資産の伸び率が最も低かった日本は、最も現金預金の比率が最も高いことが分かります。一方、家計金融資産の伸び率が高かったスウェーデン、米国は株式や投資信託の比率が高いことが分かります。
特にスウェーデンは、この20年間で株式の構成比も2000年の29.2%から2020年の37.8%と伸びていることから、金融資産の伸び率の高さが、株式の比率を高めたことが要因となっていることが分かります。
2021年に、家計金融資産が日本国内全体で約2000兆円規模と過去最高に達するとの報道がありましたが、それでも伸び率で見ると、欧米諸国と比べてまだまだ低いことが分かります。0.01%程度の低金利の現金・預金の割合の高さが、その要因になっています。世界と比べて、日本の賃金が伸びていないことが話題となりましたが、金融資産で見ても実は世界と比べて低い伸び率だということを認識する必要がありそうです。
株式市場は、冒頭に伸びたように国際情勢の影響を受けて、見通すことが困難な状況となっています。そうはいっても日本の現金預金比率の高さを、もう少し見直し、資産運用シフトしていくようなビジネスに事業機会がありそうですね。