最近、NFTに関する報道をよく見かけるようになりました。デジタルアートが高額で取引されたり、有名ミュージシャンや、プロスポーツチームなどがNFTを用いたデジタル限定品を出品したり、メルカリ、GMO、楽天等のネット企業がNFT事業に取り組むなど報道を見かける機会が多くなっています。
NFTとは、非代替性トークン(Non-Fungible Token)のことで、アート作品の作者や所有者の情報を改ざんが困難なブロックチェーン技術を使って保証するデジタル資産のことだとされています。
デジタル作品はコピーが容易ですが、これによって唯一無二の本物であることが証明可能となり、転売等の取引履歴をたどることができるそうです。無限に複製可能なデジタル作品を、クリエーターが「一点もの」「限定品」にすることで、自らの作品を販売することが可能になったようです。
それでは、NFTはどの位の規模の取引が行われていて、どの位伸びているのでしょうか。バブルという指摘もあるようですが、どの位の変動があるのでしょうか。また、NFT取引は、どのマーケットプレイスで取引されているのでしょうか。さらに、アートの他に、どういう分野でのNFT取引が多いのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。
まず、NFT全体の販売額(1日あたり)の推移を見てみます。今年2021年1月1日から9月17日までの推移を見てみます。1月中は100万ドル未満の販売額で推移していましたが、2月頃から少し波が出てくるようになり、3/11に2500万ドル、4/11に2300万ドルと小さな山が出来ましたが、5/3に一度1億ドルを突破し、そこから急減し7月前半まで2~300万ドルでの取引で推移しています。
7月後半から、また山が来て8/1に6600万ドル、8/23に1.7億ドル、8/28に2.7億ドルのピークにたっしています。以降は大きく落ち込み9/17時点では1700万ドルとなっています。この動きを見ると、NFTブーム、バブルとも呼ばれるのも頷けます。
次に、NFTの取引が行われるマーケットプレイス別の取扱高(月次)の推移を見てみます。最も取扱高が大きいのはOpenSeaで、特に今年6月以降は殆どOpenSeaでの取り扱いとなっています。このNFTブームを牽引しているマーケットプレイスが、OpenSeaであることが分かります。
なお、OpenSea以外では、SuperRare、Foundation、NiftyGateway、MakerPlaceといったマーケットプレイスがありますが、6月以降はほぼ存在感が無くなっていることが分かります。
更に、分野別のNFT販売額(21年1/1~9/17の合計)を見てみます。最も大きいのは収集品(Collectible、コレクションアイテムなど)で22.9億ドルとなっており、次いでアート(Art)で11.7億ドルとなっています。以降は大きく差がついており、ゲーム(トレーディングカード・ゲーム、戦略ロールプレイング・ゲーム等)が1.1億ドル、仮想空間(メタバース)が1億ドルと続いています。
こうしてみると、今年の3月、5月に小さなピークがあったものの、7月後半以降はバブルとも呼べるような盛り上がりがあったものの、9月に入り急速に縮小していることが分かります。また、取引自体は主に、OpenSeaで行われていて、特に収集品・アート分野の取引が活発だったことが分かります。
それでは、今後はどうなるのでしょうか。一時のブームということで終わるのでしょうか。金額自体は投機的な変動を見せましたが、今年の前半以前の時期と比較すると、9月以降の落ち込んだ時期でも1日当たり1億ドルを超える取引が続いているため、少しずつ広まっているように見えます。
また、投資対象として見るというより、ブロックチェーン技術を用いた新たな活用方法として、クリエーターやアーティストなどの支援方法としての側面も見逃せません。
まだまだ、立ち上がったばかりの市場なので、目先の投機・売買に振り回されるのではなく、その先にある経済社会へのインパクトを見据えて、どのような事業機会がありそうか考えておくのも良さそうですね。