今回は「世界のエネルギー投資」を取り上げてご紹介いたします。
前回は、国内のエネルギー消費状況を取り上げましたが、今回は世界のエネルギーに関する投資動向を見てみます。
エネルギー部門に対する世界的な投資動向を分析した報告書「世界エネルギー投資(World Investment Report)」をIEA(国際エネルギー機関)が毎年発表しています。同報告書2024年版によると、2024年の世界のエネルギー投資(予測値)は前年比4.9%増の3兆1,200億ドルと、初めて3兆ドルを突破し、過去最高額を更新する見通しとなっています。うち、電力分野への投資は5.6%増の1兆3,820億ドルと予測しています。
それでは、世界のエネルギー投資度のこれまでどのように推移していて、クリーンエネルギー投資と化石燃料投資にどのような違いがあるのでしょうか。クリーンエネルギー投資の内訳はどのようになっているのでしょうか。再生可能エネルギー投資は、送電網・電力貯蔵(蓄電池)への投資と比べてどのように推移しているのでしょうか。
実際に数字を見て確認したいと思います。
まず、世界全体のエネルギー投資の推移を見てみます。2015年は2.5兆ドルで、2016年以降、2.4兆ドル前後で横ばいが続いていましたが、2020年に新型コロナの影響もあり、2.2兆ドルに落ち込みます。以降は増加トレンドに転じ、2024年は3.1兆ドルと3兆ドルを超えて過去最高に達しています。このうちクリーンエネルギー投資の推移を見てみると、2015年は1.1兆ドルでしたが、以降微増トレンドで2020年には1.3兆ドルとなっています。以降増加傾向が加速しており2024年には2兆ドルに達しています。一方、化石燃料投資は2015年は1.4兆ドルでしたが、以降減少トレンドとなっており2020年には0.9兆ドルとなっています。以降は微増トレンドに転じており、2024年には1.1兆ドルとなっています。
次にクリーンエネルギー投資の内訳をみてみます。クリーンエネルギー投資は、「再生可能エネルギー(発電設備)」、「送電網・電力貯蔵(蓄電池)」、「エネルギー効率化」、「原子力・他クリーンエネルギー」、「低排出燃料」に分かれています。2024年(予測)で最も大きいのは再生可能エネルギーで7710億ドルとなっています。次いで大きいのが「エネルギー効率化」で6690億ドルとなっています。以降、「送電網・電力貯蔵」(4520億ドル)、「原子力・他クリーンエネルギー」(800億ドル)、「低排出燃料」(310億ドル)と続きます。2015年から2024年までの伸びでみると、「再生可能エネルギー」、「エネルギー効率化」の伸びが大きいことが分かります。
次に「再生可能エネルギー」、「送電網・電力貯蔵(蓄電池)」の投資の推移を比較してみてみます。「再生可能エネルギー」は2015年は3430億ドルでしたが、以降増加トレンドとなっており2021年には4700億ドルとなっています。以降急増トレンドなっており、2024年には7710億ドルとなっています。送電網は2015年は3370億ドルで、2016年の3480億ドル以降、現状トレンドとなり、2020年には3070億ドルとなっています。以降は増加トレンドに転じ2024年には3980億ドルとなっています。電力貯蔵は、2015年は12.6億ドルでしたが、以降は一貫して増加トレンドで2024年には539億ドルとなっています。
こうしてみると世界的に2020年以降エネルギー投資が増加しており、その増加をけん引しているのが再生可能エネルギー発電設備への投資ということが分かります。また、送電網・電力貯蔵への投資も伸びていることが分かりますが、再生可能エネルギー発電設備への投資と比べると大きな差があることが分かります。
再生可能エネルギーの発電電力に対して、送電容量が足りず、再生可能エネルギーの発電が宝の持ち腐れになっているという記事もあり、再生可能エネルギー発電設備が増えるだけでは、再生可能エネルギーの電力供給が十分に行き渡らず、結果として、再生可能エネルギーによる発電がCO2削減に寄与できないこととなってしまいます。
また、近年生成AI・データセンター需要の増加に伴い、米大手テック企業が原子力によるエネルギー確保に動いているという歩道が見られます。
これらを考えると、クリーンエネルギー投資として、今後は再生可能エネルギー発電設備だけではなく、送電網・電力貯蔵、原子力発電などの投資が増加すると考えられそうです。
資料:
World Energy Investment 2024
日本経済新聞2024年9月7「死蔵再エネ、原発480基分 米欧でつながらぬ送電網」
日本経済新聞2024年10月23日「原発に走る巨大テック 電源争奪、日本はついていけるか」