今回は2023年にBBT大学院を修了した弊社社員の山本卓司(50歳)が「RTOCS(註1)で何を学べるのか?」をご紹介いたします。「確かに実践的なカリキュラムだと思うけど、いまいちRTOCSの取り組みイメージが持てない…」そのようなお声をいただくことも多いです。「営業キャリアからRTOCSを通して戦略スキルが身につき、新たなキャリアが拓けた」と語る山本が、実際に取り組んだ事例を用いて“RTOCSのビフォーアフター”をお見せいたします。入学時と卒業時で、どのような変化があるのでしょうか?
※こちらの記事はオンラインMBA説明会にて実施された修了生対談を特別に記事化したものです。
編集註:
註1)「RTOCS(アールトックス)」は「Real Time Online Case Study」の略称で、BBT独自のケースメソッドです。答えの出ていない「現在進行形の企業課題」をケースとして扱い、当該企業に関する調査・分析・戦略考案を自ら実施します。大前研一学長の戦略系科目において、毎週1事例=2年間で約100事例 に繰り返し取り組みます。
――自己紹介をお願いいたします。
山本卓司と申します。株式会社Aoba-BBTの社員です。現在は大学院事業部マーケティング部のマネージャーですが、直近までは法人営業部のマネージャーでした。
コロナの始まる2020年に大学院へ入学し、3年かけてなんとか卒業できました。同期は約75人おりまして、ずば抜けて優秀な方も非常に多く、私は中間ぐらいに位置していたのかなと感じています。その辺りのレベル感や私のキャリアを踏まえて、BBT大学院を通じてどんな風に成長したのかをお伝えいたしますので、参考にしていただければと思います。
まずは一般的なプロフィールですが、出身は北海道の岩見沢市という非常に小さな田舎の町で高校まで過ごしました。市町村合併で面積が広くなっているのに、20〜30年人口が変わっていないという、どんどんシルバー化が進んでいるような街です。中学の時に高校受験で失敗し、私立の高校、駒澤大学の付属高校に入学しました。受験の失敗は自分の中で悔しくて、その後大学も推薦で行かずにチャレンジをしたら見事にまた失敗し、1浪しました。大学に入学後もアルバイトに勤しみ、なかなか勉強に集中できず、1年留年し5年かけて卒業いたしました。勉強ができたかできないかで言うと、それほどできなかったというのが自分の振り返りです。
東京に上京して1社目は金融商品を扱うBtoCビジネスの営業になり、非常に辛い厳しい体験をしました。朝早くから夜遅くまで外を駆けずり回り、お客様を見つけてくるという仕事で、モチベーションもほとんどありませんでした。やらされ仕事は成果が出ないという事をつくづく体験しました。ただ管理職になって相場分析をし始めると、ちょっと面白くなってきたのですが、その頃に業界の規制が厳しくなり会社を閉じる方向になりました。その際、部下が全員リストラ対象で自分だけが残る話になり、それがきっかけで転職をしました。
そして今まで培ってきた営業能力を活かせる無形商材を扱う仕事を探し、教育業界に入ります。営業やコミュニケーションをメインの教材にしている会社で、BtoBの営業を始めるために、その会社の商材から色々な営業の型を学びました。そこで学んだ営業の型を自分を通して体現すると、トップセールスになって管理職になるという経験をしました。ここで、型を学ぶ大事さを非常に実感し、意外と型通りにやる人が少ないという事、体現することの難しさも感じました。そこで10年務め部門長までなった所で、現職に転職してずっと営業をしています。
BBT大学院には2020年に入学し、2023年に卒業しました。コミュニケーションや営業の型以外に、経営や戦略など、いろいろなものに型があることをMBAを通じて学べたのが大きいと感じています。
ちょっとハードルを下げた所で、RTOCSについて具体的にご紹介したいと思います。RTOCSは2020年の春と秋、2022年の春と秋に受講しました。3年間のビフォーアフターをご紹介したいと思います。
1回目は2020年に「赤ちゃん本舗」を扱いました。1週間で会社の打ち手を考えるのですが、RTOCSには型がありまして、まずは情報収集をして分析をし、その中で一番の課題に対しての打ち手を考えていくというステップを踏んでいます。スライドの上部にある、3C分析、SWOT分析、課題の設定、解決の方向性、具体案と評価が基本的なステップです。
AirCampus(註2)で文章でやり取りした部分を切り取ってスライドに貼り付けています。3C分析は自社・競合・市場という情報を集めるのですが、今から思うと非常に少ない情報の収集と分析です。会社のどこに課題がありそうか仮説をもって調べることが重要なのですが、手当たり次第に情報を収集しているので、広くて浅い情報で終わっています。競合も業界内での自社の位置づけも不明で、トップとの差などの状態の分析も非常に浅いです。市場も数値がないので、規模感が全くつかめない非常に抽象的な調査になっています。どの事業が伸びてどこが縮小しているかという分析も無いので、曖昧な状態の分析です。
この3つの情報を元にSWOT分析をするのですが、当然3C分析が薄いのでこのSWOT分析も非常に薄く、ここが薄くなると次のステップである課題の抽出も薄くなってしまいます。
私が出した課題はリソースを活かしきれていない、海外に出遅れている、インターネット販売で他社がトップを取っているという3つ。振り返ってみると、そもそも情報の網羅性が無いので、手あたり次第取り上げているので納得感が低いです。また、どのぐらい出遅れているかというところも分からず、抽象度が高すぎて今後の方向性を考える時に具体性がなくなってしまいます。3つ目に関しては、他社が強いというだけで、自社の課題ではないものも混ぜて挙げている事に今は気付きます。
まずはこういう形でやってみたのが入学したばかりの状態です。
この後、課題解決の策を考えるために、SWOT分析をクロスさせて戦略を打ち出しました。しかし、単純に弱い部分を強化しますという案だったり、安直な思いつきのアイデアの出し方だったりしています。理由を聞かれるとしどろもどろになってしまうというようなものです。当時を思い返すと、他の受講生も皆さん似たり寄ったり、この分析が無くても出てくるような解決策が多かったと思います。本来は解決策をいくつか出した後に、それをもっと具体化したものをアウトプットしたり、そこに評価をしたりするのですが、できずにここで終わってしまったというのが当時の企業分析と戦略の方向性の打ち出し方でした。
編集註:
註2)「AirCampus」:MBA講義映像の配信、双方向テキストディスカッションの機能を有する、BBT大学院独自のオンデマンド学習システム。
この後約2年、他の科目を勉強しながら感じたことがいくつかあります。まずは、完璧を目指さないという事。文字でアウトプットする際に、いいものを出さなくてはというプレッシャーがかかり、アウトプットのハードルが上がり取り組みにくくなってしまうことが結構ありました。まずは少しでもいいので、アウトプットするように意識しました。
また、RTOCSにはBBT大学総合研究所というところが資料を作っている、大前学長の模範解答があるのですが、そこと同じような資料を作れるようになろうという目標を持ちました。そのために必須ではないグラフや表を作ることにチャレンジをしました。また、ケースを積み重ねることに1つ新しいチャレンジをしようと、アウトプットを出し切った後に振り返り、1歩でも半歩でも次に繋がるように改善を意識してやりました。
在学中に100事例取り組むので、何度も経験していくうちに分析の勘所が掴めて来ます。1人だとなかなか分からないのですが、クラスメイトの回答を見て参考にすることで、分析の範囲や、新たな観点などが身に付いてきます。分析は多種多様に色々な切り口があるのですが、その後の戦略、解決策は比較的パターンがあると感じました。国内海外どこを増やすか、M&Aするか、事業撤退するか、パターンがいくつか見えてくると迷わなくても自分なりのアウトプットができるようになったと感じます。
後は最初から決め打ちをせずに、RTOCSの型にはめていき、SWOT分析だとかSWOTをクロスさせたりすると、当初無かったアイデアや分析が出てくることがあるので、一旦型にはめてみることが大事だと経験しながら感じました。
スキルとして身に付いたと感じるのは「要約力」です。現職で取締役会の資料や提案資料の作成、エグゼクティブ層向けの資料作成といった業務が日々あるのですが、大いに役立っています。RTOCSと同じ科目の中にある事例研究という科目では、約10個のニュースを自分で調べて、そこから何が言えるかというトレーニングをします。2年間にわたって続けるとロジカルシンキングやライティングの要素も含めて、要約力が非常に身に付いたと感じます。
Factの読み解き・解説・仮説立てする力ですが、これも一旦仮説を持ってから動くという事の効率の違いが身に付いたと思っています。質の高さ、視野の網羅性という点は、RTOCSの大前学長の振り返りから磨かれました。大前学長だったらどうするのかを毎週示していただけますので、自分と比較するともっと広い所から見なくては、もっと違う観点から見なくては、と気付けます。入学されたら本当に実感するところだと思いますので、楽しみにしていただければと思います。
このように2年学習した後、どうなったかをご紹介いたします。3年目、卒業間近の2022年11月頃に取り組んだ「コメリ」の事例です。
3C分析ですが、自社の情報の一部分だけでもこのボリュームがあります。グラフも自分で作っています。長期間の推移で業績をみる癖がつきまして、グラフを作りながら売上の伸びた年や営業利益が落ちた年の理由が色々気になるようになってきました。グラフ作成の勘所も身についています。関連する会社や事業内容も、どこに注力してみていくとインパクトが一番大きいのかも仮説をもって分析しています。
自社分析まだまだ終わらずに、店舗数だとか、カテゴリーを分けてみて、売り上げにどのように寄与しているのか割合はどうなのかという事も分析するようになりました。一番左下に「ここは強みであり、弱みにもなるところだと思われる」と記載しているのですが、このように分析した情報から一旦自分なりに気になるところをアウトプットする癖がついています。この後の課題の設定やSWOT分析でもそういった仮説を立てて検証していくのに役立ったと思っています。
RTOCSは基本的にはIR情報やウェブサイトにある情報、オープン情報を使用するのですが、調べようと思うとどこまでも調べられてしまうので、時間がいくらあっても足りない状態になります。最低限何を押さえれば良いか、どこまで調べたらいいかというところも結構磨かれたと思っています。
3C分析の次は競合分析です。単にどこの競合が今強いという話だけではなくて、過去からの時間軸を持って比較できるようになっています。途中で合併したり急に伸びたりする会社があり、これは何故なのかと疑問をもって調べることができています。後は、オープン情報にはない情報も出てくるのですが、完璧な調査をすることが目的ではないので、目的に沿って優先順位をつけながら外観をいかに押さえるかが、分析の肝だったと思っています。
市場の情報が少ないのですが、これは全部自分で調べるのではなくて、クラスメイトの調べたものをうまく活用することで、効率化しています。実際これは他の方の資料や分析の情報をメインで使っています。
このような3C分析からSWOT分析を出していくと、入学当時に比べると粒度が細かく具体的な強みや弱み、市場についての機会などが数値も入れてより具体性のあるものが出せています。
課題もここまでの内容とちゃんと連動したものが出せています。その上でこういった解決策を考えていったらどうだろうと、論理構成も納得度が高いものができたと思います。
入学当時は出せなかったのですが、このクロスSWOT分析で出したものを具体案として指し示し、評価が出来るようになったのも成長を感じたところです。
1:途中で投げ出しそうになったケースもあったが、「積み重ね」が大事と実感した
100ケースやるのはすごく大変ですが、大変だからこそ身につくものが多くて、積み重ねることが非常に大事だとすごく感じています。
2:様々な業界事情に詳しくなった
3:業界や企業分析の勘所がつかみやすくなった
普段勤めていると自分の会社の業界にはある程度詳しくなりますが、他業界について詳しくなることはなかなかありません。一方RTOCSではその業界について徹底的に調べ上げますので、いろいろな業界に詳しくなります。業界ごとにどんなビジネスモデルがメインになっていて、どういう供給先がいるのかという所も分かってくるので、一段と詳しくなったと思います。
4:「持論を出し切る」ことと、「振返りの学びの大きさ」は比例することを学んだ
5:斬新な解決策も大事だが、分析をして一番の問題を特定することの重要性を実感した
戦略では、誰も考えたこともないような戦略を考えるのももちろん大事ですが、それよりもきちんと問題を特定することが大事だという事をすごく実感しました。解決策よりも、なぜその解決策が必要なのかという問題を特定する納得感が非常に大事です。この納得感がなければ、いくら良いアイデアを出しても周囲の方はやっぱり納得しないと思いますので、この重要性は非常によく感じました。
6:敢えてフレームワークにはめて考えてみることで、当初浮かばなかったものが見える体験をした
型にはめてみることで当初思っていなかったものが出てくる体験は結構ありました。私は今年で50歳になりますが、人生経験の中で考えることがどうしても多かったのですが、あえて型にはめてみると真逆の結論が出てきたことも何度かありました。そういう意味では自分の中に柔軟性も生まれたのかなと思っています。
7:経営戦略や事業戦略の問題解決というテーマに対して、「思考の停止」や「思い付きの解決策」に陥ることがなく、どのように考えたらよいか「思考の型」が身に付いた実感値がある
また、経営戦略とか高いハードルに対して、思考の停止や思い付きが出ることなく、まずはどういう風に切り分けたらよいか、どこから分析したらいいのかという考え方の型が身に付いたと感じています。単純にケースのトレーニングではなくて、日々ビジネスをしていく中で様々な問題が飛び込んできますが、そこに対しての型としても使えると非常に感じています。
最後に、RTOCSの一番の醍醐味と言いますか、学びのポイントは1週間という限られた時間の中で結論を出し切るというところです。入学当時の「赤ちゃん本舗」でもそうですが、未熟でもいいので一旦持っている力をアウトプットし切るということがすごく大事です。出し切るからこそ振り返った時に学びが大きい。時間が無いから適当にやってしまうと、そこに対して本気の振り返りが出来ないので、得られるものも少ない。本気で取り組んだ時ほど、こういう視点が足りなかったな、今度はこういうグラフを作ってみよう、次はこういう観点で戦略考えてみよう、という振り返りができ、それが自分の中では非常に為になったと思っています。特に私の場合、エグゼクティブサマリーを作る事が多いので、非常に役に立っています。
やはり最初は、自分の会社の業界ではないところの戦略を0から分析して考えるのはものすごく高い山のように感じます。1人では大変なのですが、クラスメイトや先生にサポートしていただきながら、1歩2歩少しずつ登っていくと最終的には登りきれるものという風に思っています。その高さを登り切ると、明確に自信を持てるというか、成長を実感できると思っています。BBT大学院のオリジナルメソッドなのですが、RTOCSを是非ご体験いただきたいと思い、私のビフォーアフターをご紹介いたしました。
問:在学中はお忙しい中、仕事と両立してどのように工夫されていたのでしょうか?
答:ぶっちゃけて言いますと、3年間で、3回徹夜をしました。テストの時で、後は徹夜はしませんでした。入学するとホームルームがあり、クラスメイト数名で1つのグループになります。そのメンバーで月に1回ぐらいオンラインで集まってお互いの共有をしていました。科目の情報や入学の理由など、その中でどうやって勉強時間を確保しているかという話も絶対に出てきます。私の場合は会社が基本リモートでしたので、元々通勤時間だった時間を学習に充てて、足りない部分は夜やっていました。業務が忙しく出来なくなる時もあるのですが、土日のどちらかは勉強しようと決めてやっていました。
問:土日のどちらかだけは、と家族に協力してもらっている方は多いですよね。
答:はい。私の友人には、最初入学するときに家族の方に同意書を書いたという方もいました。家事の分担など、最初に奥様にご了承いただいて来ている方もいました。
問:時間マネジメントはどのようにしていましたか?
答:お昼を食べながら、または洗い物をしながら映像を見ました。インプットは基本いろいろなことをやりながら出来るので、そこはいいですね。アウトプットは頭を整理しなくてはいけないので、アウトプットはパソコンで、インプットはスマホみたいな感じで使い分けを工夫していました。
問:以前、会社がオフィスビルの30階くらいにある大学院生の方が「エレベーターを待っている時間と乗っている時間で映像を見ている」とおっしゃっていました。上り下りで20分ぐらい視聴できていると。塵も積もれば、ですね。ちなみに学習時間という面でいうとRTOCSが一番かかると聞きますが、入学当初など実際どうでしたか?
答:1年目はやはり他のクラスメイトの投稿を見ると、自分もちゃんとしたものを書かなくてはいけないというプレッシャーから、なかなかアウトプットができなくなります。お勧めは早めに投稿することです。時間が経てば経つほど他のクラスメイトがアウトプットしていくので、全部読んでから自分で投稿しようと思うと全然時間が足りなくなってしまう。重複した発言になったら良くないとか色々考えて追い詰められてくると、どんどんハードルが上がっていきます。他の方がアウトプットする前に、早めにまず一旦自分でアウトプットするというのは3年目に私はよくやっていました。
問:とてもいいアドバイスですね!あと「MBAを学ぶ方は既に経営者の方や頭の良い方ばかりで、自分がそこに混ざれるのだろうか…」という不安をよくいただくんですけれど、どう思いますか?
答:まずはやってみるというのは大事かなと思いますし、戦略についても教科書や映像で学習できるので、無茶は無いです。私も最初のアウトプットを振り返ると、幼稚なアウトプットだったなと思いますが、そこが良いんじゃないかと思っています。そこからどんどん練り上げていく。最初から完璧な鋭い戦略が出せればMBAを学ぶ必要が無いと思いますので、出来ないから学びにきているという覚悟でどんどんアウトプットしていただくのが有効だと思います。
問:修了計画は初めから3年にしていましたか?
答:本当は2年間でやり切ろうと思っていたのですが、1年目にRTOCSをやった時にこのペースで2年目を続けられるか不安になりまして、1年目の終盤ぐらいに2年生の科目選択時にもう2年に分けようと計画しました。2年目に財務やマーケティングとかRTOCSのベースとなる科目を先に取ってから3年目にもう一回チャレンジしようと思い、それ以外の科目を頑張って取りました。3年目は卒業研究やRTOCS科目以外はほとんどない状態にしておいて、2年目で足りない単位があったら3年目で取れるようにバッファを残しておこうという計画で臨みました。
問:PCスキルはどの程度必要でしょうか?
答:PCスキルはPowerPointやExcelとか、本当に人並みです。営業なので提案資料を作るぐらいのレベルです。先ほどのグラフも0から作ると大変そうですが、入学するとSpeeda(註3)等の統計情報が取れるようなアカウントを持つことができて、ある程度の情報はそこから持ってこれます。なので、比較的使えるデータもサポートもあります。
問:基本的にディスカッションもレポートもテキストベースですか?
答:PowerPointも多少あります。こういう形で出してくださいという例がありますし、無くてもクラスメイトのアウトプットが見れるので、そこを参考にアウトプットしていただくと良いかと思います。
問:山本さんの入学の決め手は何でしたか?
答:7年ぐらい前、入社してすぐに大学院とは別のリーダーシップアクションプログラムという1年間かけてリーダーシップを学ぶ講座に参加しまして、その時にBBT大学院の卒業生が3名いらっしゃいました。そのプログラムの中で戦略を考えるシーンが一部入っていたのですが、明らかにその3名が際立っていました。RTOCSで鍛えられていたからだと思うのですが、完全にアウトプットの次元が違っていたので、BBT大学院を修了するとこんなに違うんだというのを実感しました。自分も受けたらそんな風になれるんじゃないかという期待を持って受けてみたのが動機です。
問:BOND-BBT(註4)ではBBT大学院は個人の力が鍛えられると伺いました。それを感じた学びや経験、学ぶ仕組みがあれば伺いたいです。
答:BBT大学院の卒業研究(註5)は、個人で事業プランを考えます。それを1年かけて先生にダメ出しもされながら作成し、最後は先生4人ぐらいの前でプレゼンをします。一方BOND-BBTではグループでやるんですね。なので、そういう意味ではBBT大学院の方が個人の力が鍛えられるという感じはします。
卒業研究はそれまでに学んだ財務やマーケティングやRTOCS、全ての科目の集大成みたいなもので本当に為になります。財務シミュレーションを作りますし、マーケティングプランを作りますし、色々な学びをもう一度復習してアウトプットしなおす必要があります。私も過去のテキストや映像をもう一回見直したりしながら、学んだことを活かしてどうアウトプットするかというのは結構意識しました。ここは個人戦で辛いところなのですが、先ほどお伝えしたホームルームでクラスメイトと情報共有するんですね。先生に結構厳しく言われてどうだったとか、自分のプレゼンを聞いて欲しいとか、インタビューに協力してとか、クラスのメンバーで相互支援しながら乗り切ったという思い出があります。一番大きいところはそこだと思います。
問:ホームルームで一緒になった同級生の影響は大きかったんですね。
答:そうですね。スクーリングやイベントもありましたが、ちょうど私はコロナ禍だったのでほとんど参加する機会がありませんでした。卒業式でやっとリアルで会えて本当に感動しました。BBTの学びは特殊で、オンライン学習のため場所が自由なので、海外から参加しているクラスメイトも結構多いんですね。なので、私の時はインドネシアのクラスメイトの方が東京に来るというので、集まって有志で飲もうというのがありまして、そういう場は喜びもひとしおでした。
問:印象に残っている科目はありますか?
答:デジタルマーケティングはすごく衝撃的でした。マーケティングの部署の人だけ知っていればいいと思っていたのですが、講義を視聴していくと全員が最低限リテラシーとしては持っておくべきだということを学びまして、確かにそうだと感じた科目でした。ここは自分で能動的に勉強しないといけないと感じさせられました。
あとは社会変革型リーダー特論です。リーダーシップの科目がいくつかありまして、その中でも社会課題から事業を考えたりする科目です。例えば東南アジアの貧困者をどう救うか、それをどうビジネスにするとか、シングルマザーの家を救うために保険を立ち上げた方の話とか、いじめ問題に取り組む一般社団法人を立ち上げてどうサポートしていくかなど。新規事業やビジネスプランを考える時も、社会課題に紐づいていないと共感を得られにくいなというのはその科目を通じて感じました。
問:最後に入学を検討している方へメッセージをお願いいたします。
答:私の同期が75人いまして、定期的に会って情報交換しているのですが、驚くほど皆さんご活躍しております。執行役員になられたり、RTOCSをそのまま使えましたという感じでコンサルタントになっている方もいらっしゃいます。本当に使えるスキルをギュッと集約して2〜4年ぐらいで身に付けられる場です。意識の高い方が非常に多く、伸び悩んでいると実感されている方、壁に詰まっていると感じる方、将来のキャリアに不安がある方が多いです。けれども、一緒に悩み一緒に身に付けて修了していくことで、最後は「MBAを取りたくて受けたんじゃなくなってきました」とおっしゃる人もいます。学びがちゃんと自分のものになっていく実感が非常に喜ばれているのだと思います。同じ学校のメンバーに入っていただければ嬉しく思いますので、是非前向きにご検討ください。
問:山本さん本日はありがとうございました。
答:ありがとうございました。
編集註:
註3)Speeda:世界中の経済情報にワンストップでアクセスできる情報プラットフォーム
註4)BOND-BBT MBAプログラム:BBT大学院の運営会社である株式会社ビジネス・ブレークスルーが、オーストラリアの名門私立BOND大学と提携を結んで提供しているMBAプログラム。
註5)「卒業研究」:2年次に取り組む必修科目。およそ1年かけ、経験豊富な担当教員との面談を交えながら、実戦で価値を生む新規事業計画を立案するカリキュラム。
山本 卓司(やまもと たくじ)さん
1974年生まれ。株式会社Aoba-BBT 法人営業本部/BBT大学院マーケティング部部長。
大学卒業後、B2Cの金融商品セールスに従事した後、教育研修会社の株式会社HOLOS-BRAINS(現:㈱エルティヴィー)に転職。B2Bの新規開拓、研修企画などに取り組み、大きく売上を伸ばす。部長職として営業や企画、組織マネジメントと幅を拡げ10年間勤める。
その後株式会社Aoba-BBTにステージを変え経営幹部育成等のB2B営業に従事しながら、2020年4月BBT大学院入学。2023年3月に修了後、2024年BBT大学院マーケティング部部長に就任。これまでの営業経験とMBAでの学びを活かして社会人のリスキリングを支援している。
今回は2023年にBBT大学院を修了した弊社社員の山本卓司(50歳)が「RTOCS(註1)で何を学べるのか?」をご紹介いたします。「確かに実践的なカリキュラムだと思うけど、いまいちRTOCSの取り組みイメージが持てない…」そのようなお声をいただくことも多いです。「営業キャリアからRTOCSを通して戦略スキルが身につき、新たなキャリアが拓けた」と語る山本が、実際に取り組んだ事例を用いて“RTOCSのビフォーアフター”をお見せいたします。入学時と卒業時で、どのような変化があるのでしょうか?
※こちらの記事はオンラインMBA説明会にて実施された修了生対談を特別に記事化したものです。
編集註:
註1)「RTOCS(アールトックス)」は「Real Time Online Case Study」の略称で、BBT独自のケースメソッドです。答えの出ていない「現在進行形の企業課題」をケースとして扱い、当該企業に関する調査・分析・戦略考案を自ら実施します。大前研一学長の戦略系科目において、毎週1事例=2年間で約100事例 に繰り返し取り組みます。
――自己紹介をお願いいたします。
山本卓司と申します。株式会社Aoba-BBTの社員です。現在は大学院事業部マーケティング部のマネージャーですが、直近までは法人営業部のマネージャーでした。
コロナの始まる2020年に大学院へ入学し、3年かけてなんとか卒業できました。同期は約75人おりまして、ずば抜けて優秀な方も非常に多く、私は中間ぐらいに位置していたのかなと感じています。その辺りのレベル感や私のキャリアを踏まえて、BBT大学院を通じてどんな風に成長したのかをお伝えいたしますので、参考にしていただければと思います。
まずは一般的なプロフィールですが、出身は北海道の岩見沢市という非常に小さな田舎の町で高校まで過ごしました。市町村合併で面積が広くなっているのに、20〜30年人口が変わっていないという、どんどんシルバー化が進んでいるような街です。中学の時に高校受験で失敗し、私立の高校、駒澤大学の付属高校に入学しました。受験の失敗は自分の中で悔しくて、その後大学も推薦で行かずにチャレンジをしたら見事にまた失敗し、1浪しました。大学に入学後もアルバイトに勤しみ、なかなか勉強に集中できず、1年留年し5年かけて卒業いたしました。勉強ができたかできないかで言うと、それほどできなかったというのが自分の振り返りです。
東京に上京して1社目は金融商品を扱うBtoCビジネスの営業になり、非常に辛い厳しい体験をしました。朝早くから夜遅くまで外を駆けずり回り、お客様を見つけてくるという仕事で、モチベーションもほとんどありませんでした。やらされ仕事は成果が出ないという事をつくづく体験しました。ただ管理職になって相場分析をし始めると、ちょっと面白くなってきたのですが、その頃に業界の規制が厳しくなり会社を閉じる方向になりました。その際、部下が全員リストラ対象で自分だけが残る話になり、それがきっかけで転職をしました。
そして今まで培ってきた営業能力を活かせる無形商材を扱う仕事を探し、教育業界に入ります。営業やコミュニケーションをメインの教材にしている会社で、BtoBの営業を始めるために、その会社の商材から色々な営業の型を学びました。そこで学んだ営業の型を自分を通して体現すると、トップセールスになって管理職になるという経験をしました。ここで、型を学ぶ大事さを非常に実感し、意外と型通りにやる人が少ないという事、体現することの難しさも感じました。そこで10年務め部門長までなった所で、現職に転職してずっと営業をしています。
BBT大学院には2020年に入学し、2023年に卒業しました。コミュニケーションや営業の型以外に、経営や戦略など、いろいろなものに型があることをMBAを通じて学べたのが大きいと感じています。
ちょっとハードルを下げた所で、RTOCSについて具体的にご紹介したいと思います。RTOCSは2020年の春と秋、2022年の春と秋に受講しました。3年間のビフォーアフターをご紹介したいと思います。
1回目は2020年に「赤ちゃん本舗」を扱いました。1週間で会社の打ち手を考えるのですが、RTOCSには型がありまして、まずは情報収集をして分析をし、その中で一番の課題に対しての打ち手を考えていくというステップを踏んでいます。スライドの上部にある、3C分析、SWOT分析、課題の設定、解決の方向性、具体案と評価が基本的なステップです。
AirCampus(註2)で文章でやり取りした部分を切り取ってスライドに貼り付けています。3C分析は自社・競合・市場という情報を集めるのですが、今から思うと非常に少ない情報の収集と分析です。会社のどこに課題がありそうか仮説をもって調べることが重要なのですが、手当たり次第に情報を収集しているので、広くて浅い情報で終わっています。競合も業界内での自社の位置づけも不明で、トップとの差などの状態の分析も非常に浅いです。市場も数値がないので、規模感が全くつかめない非常に抽象的な調査になっています。どの事業が伸びてどこが縮小しているかという分析も無いので、曖昧な状態の分析です。
この3つの情報を元にSWOT分析をするのですが、当然3C分析が薄いのでこのSWOT分析も非常に薄く、ここが薄くなると次のステップである課題の抽出も薄くなってしまいます。
私が出した課題はリソースを活かしきれていない、海外に出遅れている、インターネット販売で他社がトップを取っているという3つ。振り返ってみると、そもそも情報の網羅性が無いので、手あたり次第取り上げているので納得感が低いです。また、どのぐらい出遅れているかというところも分からず、抽象度が高すぎて今後の方向性を考える時に具体性がなくなってしまいます。3つ目に関しては、他社が強いというだけで、自社の課題ではないものも混ぜて挙げている事に今は気付きます。
まずはこういう形でやってみたのが入学したばかりの状態です。
この後、課題解決の策を考えるために、SWOT分析をクロスさせて戦略を打ち出しました。しかし、単純に弱い部分を強化しますという案だったり、安直な思いつきのアイデアの出し方だったりしています。理由を聞かれるとしどろもどろになってしまうというようなものです。当時を思い返すと、他の受講生も皆さん似たり寄ったり、この分析が無くても出てくるような解決策が多かったと思います。本来は解決策をいくつか出した後に、それをもっと具体化したものをアウトプットしたり、そこに評価をしたりするのですが、できずにここで終わってしまったというのが当時の企業分析と戦略の方向性の打ち出し方でした。
編集註:
註2)「AirCampus」:MBA講義映像の配信、双方向テキストディスカッションの機能を有する、BBT大学院独自のオンデマンド学習システム。
この後約2年、他の科目を勉強しながら感じたことがいくつかあります。まずは、完璧を目指さないという事。文字でアウトプットする際に、いいものを出さなくてはというプレッシャーがかかり、アウトプットのハードルが上がり取り組みにくくなってしまうことが結構ありました。まずは少しでもいいので、アウトプットするように意識しました。
また、RTOCSにはBBT大学総合研究所というところが資料を作っている、大前学長の模範解答があるのですが、そこと同じような資料を作れるようになろうという目標を持ちました。そのために必須ではないグラフや表を作ることにチャレンジをしました。また、ケースを積み重ねることに1つ新しいチャレンジをしようと、アウトプットを出し切った後に振り返り、1歩でも半歩でも次に繋がるように改善を意識してやりました。
在学中に100事例取り組むので、何度も経験していくうちに分析の勘所が掴めて来ます。1人だとなかなか分からないのですが、クラスメイトの回答を見て参考にすることで、分析の範囲や、新たな観点などが身に付いてきます。分析は多種多様に色々な切り口があるのですが、その後の戦略、解決策は比較的パターンがあると感じました。国内海外どこを増やすか、M&Aするか、事業撤退するか、パターンがいくつか見えてくると迷わなくても自分なりのアウトプットができるようになったと感じます。
後は最初から決め打ちをせずに、RTOCSの型にはめていき、SWOT分析だとかSWOTをクロスさせたりすると、当初無かったアイデアや分析が出てくることがあるので、一旦型にはめてみることが大事だと経験しながら感じました。
スキルとして身に付いたと感じるのは「要約力」です。現職で取締役会の資料や提案資料の作成、エグゼクティブ層向けの資料作成といった業務が日々あるのですが、大いに役立っています。RTOCSと同じ科目の中にある事例研究という科目では、約10個のニュースを自分で調べて、そこから何が言えるかというトレーニングをします。2年間にわたって続けるとロジカルシンキングやライティングの要素も含めて、要約力が非常に身に付いたと感じます。
Factの読み解き・解説・仮説立てする力ですが、これも一旦仮説を持ってから動くという事の効率の違いが身に付いたと思っています。質の高さ、視野の網羅性という点は、RTOCSの大前学長の振り返りから磨かれました。大前学長だったらどうするのかを毎週示していただけますので、自分と比較するともっと広い所から見なくては、もっと違う観点から見なくては、と気付けます。入学されたら本当に実感するところだと思いますので、楽しみにしていただければと思います。
このように2年学習した後、どうなったかをご紹介いたします。3年目、卒業間近の2022年11月頃に取り組んだ「コメリ」の事例です。
3C分析ですが、自社の情報の一部分だけでもこのボリュームがあります。グラフも自分で作っています。長期間の推移で業績をみる癖がつきまして、グラフを作りながら売上の伸びた年や営業利益が落ちた年の理由が色々気になるようになってきました。グラフ作成の勘所も身についています。関連する会社や事業内容も、どこに注力してみていくとインパクトが一番大きいのかも仮説をもって分析しています。
自社分析まだまだ終わらずに、店舗数だとか、カテゴリーを分けてみて、売り上げにどのように寄与しているのか割合はどうなのかという事も分析するようになりました。一番左下に「ここは強みであり、弱みにもなるところだと思われる」と記載しているのですが、このように分析した情報から一旦自分なりに気になるところをアウトプットする癖がついています。この後の課題の設定やSWOT分析でもそういった仮説を立てて検証していくのに役立ったと思っています。
RTOCSは基本的にはIR情報やウェブサイトにある情報、オープン情報を使用するのですが、調べようと思うとどこまでも調べられてしまうので、時間がいくらあっても足りない状態になります。最低限何を押さえれば良いか、どこまで調べたらいいかというところも結構磨かれたと思っています。
3C分析の次は競合分析です。単にどこの競合が今強いという話だけではなくて、過去からの時間軸を持って比較できるようになっています。途中で合併したり急に伸びたりする会社があり、これは何故なのかと疑問をもって調べることができています。後は、オープン情報にはない情報も出てくるのですが、完璧な調査をすることが目的ではないので、目的に沿って優先順位をつけながら外観をいかに押さえるかが、分析の肝だったと思っています。
市場の情報が少ないのですが、これは全部自分で調べるのではなくて、クラスメイトの調べたものをうまく活用することで、効率化しています。実際これは他の方の資料や分析の情報をメインで使っています。
このような3C分析からSWOT分析を出していくと、入学当時に比べると粒度が細かく具体的な強みや弱み、市場についての機会などが数値も入れてより具体性のあるものが出せています。
課題もここまでの内容とちゃんと連動したものが出せています。その上でこういった解決策を考えていったらどうだろうと、論理構成も納得度が高いものができたと思います。
入学当時は出せなかったのですが、このクロスSWOT分析で出したものを具体案として指し示し、評価が出来るようになったのも成長を感じたところです。
1:途中で投げ出しそうになったケースもあったが、「積み重ね」が大事と実感した
100ケースやるのはすごく大変ですが、大変だからこそ身につくものが多くて、積み重ねることが非常に大事だとすごく感じています。
2:様々な業界事情に詳しくなった
3:業界や企業分析の勘所がつかみやすくなった
普段勤めていると自分の会社の業界にはある程度詳しくなりますが、他業界について詳しくなることはなかなかありません。一方RTOCSではその業界について徹底的に調べ上げますので、いろいろな業界に詳しくなります。業界ごとにどんなビジネスモデルがメインになっていて、どういう供給先がいるのかという所も分かってくるので、一段と詳しくなったと思います。
4:「持論を出し切る」ことと、「振返りの学びの大きさ」は比例することを学んだ
5:斬新な解決策も大事だが、分析をして一番の問題を特定することの重要性を実感した
戦略では、誰も考えたこともないような戦略を考えるのももちろん大事ですが、それよりもきちんと問題を特定することが大事だという事をすごく実感しました。解決策よりも、なぜその解決策が必要なのかという問題を特定する納得感が非常に大事です。この納得感がなければ、いくら良いアイデアを出しても周囲の方はやっぱり納得しないと思いますので、この重要性は非常によく感じました。
6:敢えてフレームワークにはめて考えてみることで、当初浮かばなかったものが見える体験をした
型にはめてみることで当初思っていなかったものが出てくる体験は結構ありました。私は今年で50歳になりますが、人生経験の中で考えることがどうしても多かったのですが、あえて型にはめてみると真逆の結論が出てきたことも何度かありました。そういう意味では自分の中に柔軟性も生まれたのかなと思っています。
7:経営戦略や事業戦略の問題解決というテーマに対して、「思考の停止」や「思い付きの解決策」に陥ることがなく、どのように考えたらよいか「思考の型」が身に付いた実感値がある
また、経営戦略とか高いハードルに対して、思考の停止や思い付きが出ることなく、まずはどういう風に切り分けたらよいか、どこから分析したらいいのかという考え方の型が身に付いたと感じています。単純にケースのトレーニングではなくて、日々ビジネスをしていく中で様々な問題が飛び込んできますが、そこに対しての型としても使えると非常に感じています。
最後に、RTOCSの一番の醍醐味と言いますか、学びのポイントは1週間という限られた時間の中で結論を出し切るというところです。入学当時の「赤ちゃん本舗」でもそうですが、未熟でもいいので一旦持っている力をアウトプットし切るということがすごく大事です。出し切るからこそ振り返った時に学びが大きい。時間が無いから適当にやってしまうと、そこに対して本気の振り返りが出来ないので、得られるものも少ない。本気で取り組んだ時ほど、こういう視点が足りなかったな、今度はこういうグラフを作ってみよう、次はこういう観点で戦略考えてみよう、という振り返りができ、それが自分の中では非常に為になったと思っています。特に私の場合、エグゼクティブサマリーを作る事が多いので、非常に役に立っています。
やはり最初は、自分の会社の業界ではないところの戦略を0から分析して考えるのはものすごく高い山のように感じます。1人では大変なのですが、クラスメイトや先生にサポートしていただきながら、1歩2歩少しずつ登っていくと最終的には登りきれるものという風に思っています。その高さを登り切ると、明確に自信を持てるというか、成長を実感できると思っています。BBT大学院のオリジナルメソッドなのですが、RTOCSを是非ご体験いただきたいと思い、私のビフォーアフターをご紹介いたしました。
問:在学中はお忙しい中、仕事と両立してどのように工夫されていたのでしょうか?
答:ぶっちゃけて言いますと、3年間で、3回徹夜をしました。テストの時で、後は徹夜はしませんでした。入学するとホームルームがあり、クラスメイト数名で1つのグループになります。そのメンバーで月に1回ぐらいオンラインで集まってお互いの共有をしていました。科目の情報や入学の理由など、その中でどうやって勉強時間を確保しているかという話も絶対に出てきます。私の場合は会社が基本リモートでしたので、元々通勤時間だった時間を学習に充てて、足りない部分は夜やっていました。業務が忙しく出来なくなる時もあるのですが、土日のどちらかは勉強しようと決めてやっていました。
問:土日のどちらかだけは、と家族に協力してもらっている方は多いですよね。
答:はい。私の友人には、最初入学するときに家族の方に同意書を書いたという方もいました。家事の分担など、最初に奥様にご了承いただいて来ている方もいました。
問:時間マネジメントはどのようにしていましたか?
答:お昼を食べながら、または洗い物をしながら映像を見ました。インプットは基本いろいろなことをやりながら出来るので、そこはいいですね。アウトプットは頭を整理しなくてはいけないので、アウトプットはパソコンで、インプットはスマホみたいな感じで使い分けを工夫していました。
問:以前、会社がオフィスビルの30階くらいにある大学院生の方が「エレベーターを待っている時間と乗っている時間で映像を見ている」とおっしゃっていました。上り下りで20分ぐらい視聴できていると。塵も積もれば、ですね。ちなみに学習時間という面でいうとRTOCSが一番かかると聞きますが、入学当初など実際どうでしたか?
答:1年目はやはり他のクラスメイトの投稿を見ると、自分もちゃんとしたものを書かなくてはいけないというプレッシャーから、なかなかアウトプットができなくなります。お勧めは早めに投稿することです。時間が経てば経つほど他のクラスメイトがアウトプットしていくので、全部読んでから自分で投稿しようと思うと全然時間が足りなくなってしまう。重複した発言になったら良くないとか色々考えて追い詰められてくると、どんどんハードルが上がっていきます。他の方がアウトプットする前に、早めにまず一旦自分でアウトプットするというのは3年目に私はよくやっていました。
問:とてもいいアドバイスですね!あと「MBAを学ぶ方は既に経営者の方や頭の良い方ばかりで、自分がそこに混ざれるのだろうか…」という不安をよくいただくんですけれど、どう思いますか?
答:まずはやってみるというのは大事かなと思いますし、戦略についても教科書や映像で学習できるので、無茶は無いです。私も最初のアウトプットを振り返ると、幼稚なアウトプットだったなと思いますが、そこが良いんじゃないかと思っています。そこからどんどん練り上げていく。最初から完璧な鋭い戦略が出せればMBAを学ぶ必要が無いと思いますので、出来ないから学びにきているという覚悟でどんどんアウトプットしていただくのが有効だと思います。
問:修了計画は初めから3年にしていましたか?
答:本当は2年間でやり切ろうと思っていたのですが、1年目にRTOCSをやった時にこのペースで2年目を続けられるか不安になりまして、1年目の終盤ぐらいに2年生の科目選択時にもう2年に分けようと計画しました。2年目に財務やマーケティングとかRTOCSのベースとなる科目を先に取ってから3年目にもう一回チャレンジしようと思い、それ以外の科目を頑張って取りました。3年目は卒業研究やRTOCS科目以外はほとんどない状態にしておいて、2年目で足りない単位があったら3年目で取れるようにバッファを残しておこうという計画で臨みました。
問:PCスキルはどの程度必要でしょうか?
答:PCスキルはPowerPointやExcelとか、本当に人並みです。営業なので提案資料を作るぐらいのレベルです。先ほどのグラフも0から作ると大変そうですが、入学するとSpeeda(註3)等の統計情報が取れるようなアカウントを持つことができて、ある程度の情報はそこから持ってこれます。なので、比較的使えるデータもサポートもあります。
問:基本的にディスカッションもレポートもテキストベースですか?
答:PowerPointも多少あります。こういう形で出してくださいという例がありますし、無くてもクラスメイトのアウトプットが見れるので、そこを参考にアウトプットしていただくと良いかと思います。
問:山本さんの入学の決め手は何でしたか?
答:7年ぐらい前、入社してすぐに大学院とは別のリーダーシップアクションプログラムという1年間かけてリーダーシップを学ぶ講座に参加しまして、その時にBBT大学院の卒業生が3名いらっしゃいました。そのプログラムの中で戦略を考えるシーンが一部入っていたのですが、明らかにその3名が際立っていました。RTOCSで鍛えられていたからだと思うのですが、完全にアウトプットの次元が違っていたので、BBT大学院を修了するとこんなに違うんだというのを実感しました。自分も受けたらそんな風になれるんじゃないかという期待を持って受けてみたのが動機です。
問:BOND-BBT(註4)ではBBT大学院は個人の力が鍛えられると伺いました。それを感じた学びや経験、学ぶ仕組みがあれば伺いたいです。
答:BBT大学院の卒業研究(註5)は、個人で事業プランを考えます。それを1年かけて先生にダメ出しもされながら作成し、最後は先生4人ぐらいの前でプレゼンをします。一方BOND-BBTではグループでやるんですね。なので、そういう意味ではBBT大学院の方が個人の力が鍛えられるという感じはします。
卒業研究はそれまでに学んだ財務やマーケティングやRTOCS、全ての科目の集大成みたいなもので本当に為になります。財務シミュレーションを作りますし、マーケティングプランを作りますし、色々な学びをもう一度復習してアウトプットしなおす必要があります。私も過去のテキストや映像をもう一回見直したりしながら、学んだことを活かしてどうアウトプットするかというのは結構意識しました。ここは個人戦で辛いところなのですが、先ほどお伝えしたホームルームでクラスメイトと情報共有するんですね。先生に結構厳しく言われてどうだったとか、自分のプレゼンを聞いて欲しいとか、インタビューに協力してとか、クラスのメンバーで相互支援しながら乗り切ったという思い出があります。一番大きいところはそこだと思います。
問:ホームルームで一緒になった同級生の影響は大きかったんですね。
答:そうですね。スクーリングやイベントもありましたが、ちょうど私はコロナ禍だったのでほとんど参加する機会がありませんでした。卒業式でやっとリアルで会えて本当に感動しました。BBTの学びは特殊で、オンライン学習のため場所が自由なので、海外から参加しているクラスメイトも結構多いんですね。なので、私の時はインドネシアのクラスメイトの方が東京に来るというので、集まって有志で飲もうというのがありまして、そういう場は喜びもひとしおでした。
問:印象に残っている科目はありますか?
答:デジタルマーケティングはすごく衝撃的でした。マーケティングの部署の人だけ知っていればいいと思っていたのですが、講義を視聴していくと全員が最低限リテラシーとしては持っておくべきだということを学びまして、確かにそうだと感じた科目でした。ここは自分で能動的に勉強しないといけないと感じさせられました。
あとは社会変革型リーダー特論です。リーダーシップの科目がいくつかありまして、その中でも社会課題から事業を考えたりする科目です。例えば東南アジアの貧困者をどう救うか、それをどうビジネスにするとか、シングルマザーの家を救うために保険を立ち上げた方の話とか、いじめ問題に取り組む一般社団法人を立ち上げてどうサポートしていくかなど。新規事業やビジネスプランを考える時も、社会課題に紐づいていないと共感を得られにくいなというのはその科目を通じて感じました。
問:最後に入学を検討している方へメッセージをお願いいたします。
答:私の同期が75人いまして、定期的に会って情報交換しているのですが、驚くほど皆さんご活躍しております。執行役員になられたり、RTOCSをそのまま使えましたという感じでコンサルタントになっている方もいらっしゃいます。本当に使えるスキルをギュッと集約して2〜4年ぐらいで身に付けられる場です。意識の高い方が非常に多く、伸び悩んでいると実感されている方、壁に詰まっていると感じる方、将来のキャリアに不安がある方が多いです。けれども、一緒に悩み一緒に身に付けて修了していくことで、最後は「MBAを取りたくて受けたんじゃなくなってきました」とおっしゃる人もいます。学びがちゃんと自分のものになっていく実感が非常に喜ばれているのだと思います。同じ学校のメンバーに入っていただければ嬉しく思いますので、是非前向きにご検討ください。
問:山本さん本日はありがとうございました。
答:ありがとうございました。
編集註:
註3)Speeda:世界中の経済情報にワンストップでアクセスできる情報プラットフォーム
註4)BOND-BBT MBAプログラム:BBT大学院の運営会社である株式会社ビジネス・ブレークスルーが、オーストラリアの名門私立BOND大学と提携を結んで提供しているMBAプログラム。
註5)「卒業研究」:2年次に取り組む必修科目。およそ1年かけ、経験豊富な担当教員との面談を交えながら、実戦で価値を生む新規事業計画を立案するカリキュラム。
山本 卓司(やまもと たくじ)さん
1974年生まれ。株式会社Aoba-BBT 法人営業本部/BBT大学院マーケティング部部長。
大学卒業後、B2Cの金融商品セールスに従事した後、教育研修会社の株式会社HOLOS-BRAINS(現:㈱エルティヴィー)に転職。B2Bの新規開拓、研修企画などに取り組み、大きく売上を伸ばす。部長職として営業や企画、組織マネジメントと幅を拡げ10年間勤める。
その後株式会社Aoba-BBTにステージを変え経営幹部育成等のB2B営業に従事しながら、2020年4月BBT大学院入学。2023年3月に修了後、2024年BBT大学院マーケティング部部長に就任。これまでの営業経験とMBAでの学びを活かして社会人のリスキリングを支援している。