新卒以来勤めていた大企業を退職して、スタートアップ・ベンチャーを起業した徳田さん。 BBT大学院での出会いと学びを通じて人生の価値観を大きく変えた徳田さんは、MBAを「やりたい事をやってよい許可証」と表現しています。今回はスタートアップを立ち上げる過程での経験の一部や考え方お話しいただきます。

修了生プロフィール

徳田 吉範(よしのり) さん
株式会社テーブルライフ 代表取締役
1975年生まれ、千葉県八千代市出身。
理工系大学院修了(01年)後、同年より大手タイヤメーカーでR&D部門のエンジニアとして2014年まで13年間勤務。2009年より3年間イタリア・ローマの研究センターへ赴任。帰国後在職のまま2013年BBT大学院に入学し2年間でMBA取得。
在学中の2013年秋頃より同期入学の友人と起業に関する勉強会「起活会」の活動を開始。2014年のBBTビジネス・インキュベーション・センター創設の礎となり、現在も運営委員としても参画。2015年4月よりBBT大学院のティーチングアシスタント(TA)として協力のほか各種イベントボランティア活動に尽力。
2015年10月株式会社テーブルライフ設立、代表取締役就任。「食器のファッション誌」をコンセプトとするインターネットメディアを立ち上げ、「食器が好きな人が輝いて働ける会社」を創ることに日々尽力している。趣味の野球や関心の高い教育など幅広く好奇心を持って行動し、シリアルアントレプレナーに憧れる新米経営者。

CASE1 お困りごとを聞くこと、フィードバックをもらい続けることが確信につながる

大企業を辞めスタートアップという選択をした理由

大企業に勤めていて、なぜ起業したのか?と疑問に思われる方もいますよね。まずはなぜ私が「起業」の道を選んだのかを簡単にご紹介します。

研究開発職だった当時の私は、今後この会社にいたらいずれは昇進して経営に携わっていくもの、と思っていました。単純な話で、そうなる前に経営やマネジメントの知識が必要だろうと思いBBT大学院の門を叩いたのです。ところが入学して半年後に受講した「起業論」という科目を通じ「働き方」に対する考え方や気持ちが大きく変わりました。

私たちは人生の殆どの時間を「働く」ことに費やしています。その働く時間を最も充実させるためには、自分でその時間をコントロールできる幅が広くないといけません。サラリーマンのままではコントロールできる幅も限られている、そう思ったとき「起業」という手段が最も自由度が高いということに気づきました。また、一定の年齢になると定年退職をせざるを得ない会社組織の中だけでキャリアを積むことに、漠然とした危機意識を持ち始めました。世の中で本当に通用する力を身に着けるためにも、起業することは重要な経験値と実力を得られると考えるようになったのです。これは私の中において大きな変化でした。

さて起業には、これまでの仕事の経験を生かして独立する、またはフランチャイズ(FC)に加盟する、など様々な形があります。私の場合は起業に際して「スタートアップ型」を選択しました。「スタートアップ」の定義は様々ですが、ここでは「新しいビジネスモデルを元に市場開拓を行い大きな成長を狙う」という意味で捉えてください。

スタートアップ型を選択した理由は、BBT大学院在学中にアントレプレナーシップを更に深く学ぶために仲間とシリコンバレーへのビジネスツアーを企画・敢行したことが大きな要因です。私が直接話しを聞いたシリコンバレーの起業家たちは、世の中の不自由を解決するために様々なビジネスに挑戦していました。私も彼らの生き方のように新しいプロダクトを世の中に提供することで、新たな価値を作り出すことに挑戦したいと強く奮い立ちました。

ビジネスアイデアの発見とビジネスモデル化までの道のり

ビジネスアイデアとビジネスモデルという言葉を最近ではよく聞くかもしれません。これらは一見すると似ていますが、まずは私なりに定義をします。

ビジネスアイデアは、世の中にある「不便」を発見し、それを解決できるかもしれない方法を思いついた状態を指します。「こうすれば便利かもしれない」「こうすれば喜ぶ人がいると思う」という類のものです。下図を参考にして下さい。

次にビジネスモデルについてです。

・アイデアを実現するための必要な資源を準備し、
・それらを組み合わせて新たな価値を提供できる具体的なプロダクト開発ができ、
・そのプロダクトに対して対価を払う顧客像がイメージでき、
・収益化できる仕組みが見えている。

これらの要素が具体的である状態を指すのがビジネスモデルです。すなわち収益化ができる提供価値と、顧客が存在していることがビジネスモデルの概念のポイントとなります。

既に顧客が存在していたりフランチャイズに加盟していたりするなど、具体的なビジネスモデルが見えていればすぐにでも起業ができるかもしれません。しかし私のように「スタートアップ型」では、ビジネスアイデアの発見からスタートし、ある程度しっかりしたビジネスモデルの構築に繋げていかなければならないので、ある程度の準備期間が必要です。その為少なくとも起業アイデアをしっかり絞り込んでから具体的な起業活動に専念するつもりでした。

そこで、BBT大学院で大前研一学長から様々な発想技術を学ぶ「イノベーション」科目の受講を通じ、方法論に基づいた具体的なビジネスアイデア発想の課題に積極的に取り組むことにしました。起業アイデアを欲していた私にとってはまさにうってつけの科目でして、取り組みたいと思えるアイデアを見つけるつもりで次々と課題をこなしていたところです。そこで、たまたま「食器」をテーマにした議論があり、これがビジネスアイデアの発見につながる運命的な出会いとなりました。

プライベートな話ですが、私の妻は人を招いて料理をふるまうホームパーティーを開くことが好きです。しかしパーティーの都度、料理を盛り付ける食器が少ないことに不満を持っていました。紙皿では文字通り味気なく、料理の良さが発揮されないというのです。とはいえ自宅には逆にあり余るほどに食器があり、私には不思議に思えて仕方がありませんでした。どうやら妻はパーティーのときだけ利用できる素敵なお皿を使いたい、という願望を持っていたようです。

ここにビジネスアイデアのヒントがありました。身の回りのちょっとした不自由さに目を向け、それを解決する方法を考えることが起業の第一歩と学んでいた私は、日々の生活の中で様々なアイデアをストックしていました。しかし、それまでのアイデアは「アイデアのためのアイデア」だったかと思うほど、このお皿のビジネスアイデアは「いけるかも…」という強いモチベーションを伴ったものでした。起業など未知の事に挑戦するには、人を突き動かすほどのモチベーションが大事なのはいうまでもありませんよね。「これをやらないと死んでも死にきれない」というほどのモチベーションがあることで、様々な困難を乗り越える原動力になります。そのようなアイデアを見つけることができたので、ブラッシュアップに専念すべく13年勤めた会社にあっさりと別れを告げました。

しかし会社の設立はもう少しあとの話です。ビジネスモデルが出来上がってからと考えていました。まずはビジネスアイデアをビジネスモデルへと磨きあげる事に集中することが優先事項だったのです。

自分の頭だけで考えていてはダメ。とにかくモデルを人に話すこと

さて、退職後はビジネスアイデアを磨くことに専念しました。まずはとにかく業界の情報や人脈が必要と考え、食器に関係する展示会・販売会を回り、作ったばかりの名刺を配りながら業界の「常識」や「お困りごと」をひたすらヒアリングして回りました。

退職前に調べた様々な本やネットの情報だけでは到底獲得し得ない「現場の声」により、業界についての基礎知識をつけていきました。この頃に大きな手応えを感じ、ある程度ビジネスモデルの骨組みのようなものが出来てきたと振り返っています。その段階では意識をしていませんでしたが、この頃に知り合った「初期の協力者」は私の大きな財産となっています。

ある程度のレベルまで仮説が固まってきたら、次のステップとして「人に話すこと」が効果的です。話しても大丈夫なのか?とアイデアを盗まれることを懸念するかもしれませんが、「アイデアはそれ自体には価値がない」とGoogle創業者のラリー・ペイジは言っています。「実行することが大事である」と。その実行の一歩目が「人に話す」という行動なのです。

それにあたっての具体的な方法をご紹介すると、たとえば「スタートアップウィークエンド」という起業イベントがあります。これは金曜日の夜から日曜日の夜までの週末3日間を使って実際にビジネスを作り上げるスタートアップ実践イベントです。参加者が金曜日の夜にアイデアのピッチ(ミニプレゼン)をし、そのアイデアに共感した人が集まって即席チームを作ります。そこから一気にプロトタイプを作り、クイックな市場調査を経て日曜日にプレゼンを行い、優勝者を決める…という大まかな流れになります。私はこれに数回参加し、自分のビジネスアイデアをピッチしました。このような起業意識の高い人々の集まりの中で自らのアイデアを話すことで、新たなヒントや気づきを貰い、自信が持てるビジネスモデルへと近づけられました。余談ですが、創業後に参加したスタートアップウィークエンドでは見事優勝することができました。

当初のアイデアは、「食器のレンタル事業」でした。しかし調査をすすめるうちに、物流や在庫などの点から多くの課題が明らかになってきました。それらの課題は小さなベンチャー企業で解決するには荷が重いものでした。一方で、世の中には「うつわ好き」が沢山いることもわかりました。そしてそのような「うつわ好き」の人々にインタビューを重ねるうちに、どうやってその「うつわ」を選んでよいのかがわからない、という声を多くキャッチしました。

アパレル関係のメディアでは、モデルが身につけている服やアクセサリーなどのブランド、商品名、価格がわかります。さらにWEBメディアであれば購入もできます。しかし、料理を紹介している多くのメディアではその料理のレシピ情報はあるものの、料理が盛り付けられている食器やカトラリー、テーブルウェアなどの情報が掲載されていないことが多く、欲しいと思ってもその食器に関する情報がわからないのです。このような状態を問題と捉え、解決方法を考えました。

そこでビジネスモデルを「食器のレンタル事業」から「食器のメディア」にピボット(ビジネスモデルを変更すること)しました。 このビジネスモデルを元にユーザーだけでなく、食器を生産している窯元や流通業者などにもインタビューを重ね、初期のビジネスモデルの枠組みはほぼ完成していきました。

またこのアイデアとモデルを元に、ビジネス・ブレークスルーが運営するスタートアップ起業家支援プロジェクト「SPOF」(背中をポンと押すファンド)にもエントリーし、様々なアイデアやフィードバックをもらうだけでなく、結果として資金提供までしていただくことになりました。 最近はこのような出資を視野に入れたビジネスコンテストが世の中に増えつつあるので、ぜひ活用してみてください。

ここまでお話しした通り、いよいよビジネスモデルが具体的になり外部から資金を入れてくれる投資家が現れたため、事業を具体的に運営するべく会社設立を決心しました。

なおこれまでの流れは起業を志す方だけでなく「社内の新規事業」担当の方もご参考いただけるかと思います。これらのプロセスを活用して、是非アイデアをビジネスモデルへと育ててみてはいかがでしょうか。

CASE2 スタートアップ時の資金調達は実際にどうやったか?

資金は経営の重要な意思決定要素

ビジネスモデルが決まり、いよいよ会社を設立することにしました。私の場合は、スタートアップ型のビジネスモデルであり、外部から資本を入れていただくようになったことも、設立という意思決定のために重要な要素でした。資金は経営にとって常に重要な意思決定要素です。充分な自己資金があれば良いのですが、多くの場合は外部から調達をすることになります。POINT2では、そこにフォーカスしたいと思います。

手持ちの資金だけで起業できれば苦労はしませんが、実際には外部から資金を入れる必要に迫られるケースが多いと思います。私の場合も外部資本を活用しました。なお外部資本の具体的な方法としては、基本的には融資と投資の2種類になります。下図は簡単にこの2種類について説明をしたものです。

ビジネスの性質として、例えば元々仕事をしていた業界内で独立する場合などは、はじめから顧客もついておりキャッシュフローが見込め、そして返済計画が立てやすいので融資を主体とした調達方法が良いでしょう。

一方でスタートアップなどゼロから商品をつくるようなビジネスの場合は、始めの数年間は商品開発やビジネスモデルの構築などに時間を費やすため、売上が殆どないことが予測されます。そんなところに融資する金融機関はまずないと言ってもいいので、返済義務のない投資主体で調達をしなければなりません。この時投資家は、会社が成長した後のリターンによる収益を求めるため、会社成長のための実現性のある事業計画書の提出が求められます。この事業計画書の確度が、投資を受けるための重要な要素になります。また投資は会社の株の一部を投資家に渡すことになるので、運命共同体になるともいえます。良好な投資家とのパートナーシップを作ることも重要です。

調達時は、集めたお金をどのように使うか、という計画も重要です。特に投資を受ける際は、投資家に資金の活用方法を納得してもらう必要があります。たとえば当社の場合は初期に必要な費用1500万円を下記のように見積もりました。

 ・システム開発費:500万円、
 ・人件費、オフィス代などを含めた固定費:40万/月
 ・25ヶ月以内にビジネスを次のステージに持っていく計画

初期のビジネスモデルは流動的であり、ビジネスモデルの変更、いわゆるピボットをする可能性もあります。細かい軌道修正はあって当たり前の世界なので、厳密な計画はあまり意味がありません。ビジョンを実現するための「船出資金」はこのようにして見積もりました。

調達スキームをバランスシートで考える

「資本政策」という言葉があります。会社の資金をどのような方針で集めるのか、株価の設定はどうするか、など資金調達の方針について考える時に使います。

ここで私が組み上げた必要経費計1,500万円の調達方法について、バランスシートを使って説明します。創業にあたって、ある程度の自己資金は準備していました。従って創業時のバランスシートは「貸借対照表A」の形でした。しかしそれだけでは計画していた資金に当然届いていません。そこで、会社の経営に影響が少ない範囲で外部資金を投入することにし、SPOFからの資金提供を受け「貸借対照表B」という形になりました。その後、起業を支援するための創業融資制度を活用して一部借入を行ったため、最終的には「貸借対照表C」という形になっています。

資金調達の際は個別に様々な条件があるので、自分が設計したビジネスモデルにフィットする調達方法を選択した結果です。これは事業毎に異なるので、資金の必要性を含めてよく吟味して決断する必要があります。

現職からの独立やFC加盟など、はじめから売上が見込める場合は無理に会社の株を売らずに、借入で賄うほうが経営の独立性は保てます。しかし、新しい価値を生み出すビジネスの場合、商品開発や市場開発に一定の時間がかかると予測されます。この場合借入を行うことは難しいので、投資というスキームを活用することになります。

このような資金調達に関する意思決定を「資本政策」とも言います。ある程度の規模の会社になると、財務担当者が具体的な資本政策をすすめるのでしょうが、ベンチャー企業の場合は創業者自身が判断することになります。 基本的には自身の株の持ち分を減らさずに、外部資金を導入する方法を考えることになります。

さて、ここまでアイデア発想からスタートアップ設立までのプロセスを、追って説明しました。 数字などシンプルにモデル化したところはありますが、基本的な考え方は赤裸々に示したつもりです。資本政策は、会社経営の中では一度決めて進むと以前の状態には戻れない、不可逆性の強い要素になります。初期の資本政策のミスが後々大きな影響を及ぼす事があります。資金需要を見極め、バランスシートと資金繰りを頭に描きながら進めることをおすすめします。

Interview1:学びを振り返って

経営層になった時の準備を今から

前職でのイタリア駐在中に読書にハマったり資格試験の勉強を始めたりしたことがきっかけで、MBAに興味を持ちました。当時の自分はいずれ経営層まで出世すると勝手に思っており、昇進してからではなく早いうちにマネジメントを学ばないといけないと考え、そこまで忙しくない管理職手前の時期である38歳という年齢で出願をしました。 なお大学院の選定にあたっては、勤務先が都心から少し離れていたことや再度海外転勤の可能性もあったことから通学制は難しいと思い、オンラインであることの一点でBBT大学院に決めました。

入学当初は学習時間の捻出に苦労していましたが、朝方に生活を変えてからは非常にバランスがよくなりました。家族と一緒に朝食を摂ることを諦めた以外はそれほどプライベートを犠牲にすること無く2年間を過ごすことが出来ました。

「やりたいこと」が何かを真剣に考えた結果、起業へ

入学した年の10月に受講した「起業論」の科目が私の人生を大きく変えました。起業論を担当されている、日本シスコシステムズ株式会社(当時)を創業された松本孝利先生の授業の中で話されていた2つのエピソードは今でも強く印象に残っています。

「日曜日の晩に、月曜の仕事のことが楽しみで眠れない」
「前の日、遅くまで打合せをして睡眠不足でも、仕事が楽しくて朝ちゃんと目が覚めて会社に行く」

これまでも仕事にそれなりの楽しみを見出していたつもりでしたが、これほどまでに没頭できる世界があることに驚きました。そして自分も仕事に全力を尽くす人生を歩んでみたい、と思うようになりました。会社の中では自分のやりたいことをすべてできるわけではありませんし、これまでは与えられた仕事の中で楽しみを見出していくものだと思っていました。しかしBBT大学院に入ると先生方や同級生が自分のやりたい事を仕事にして生きている、その姿に次第に魅了されていきました。気がつけば、やりたい事に没頭するために起業するという選択を在学中にしていたのです。

卒業した今、私はMBAとは学位そのものではなく「やりたいことをやってもよい」という許可証のようなものと理解しています。単にビジネススキルを磨くだけではなく、人生の全ての時間を使ってやりたい事は何かを考え、それを実行する力と仲間という財産を与えてくれる場だったように思います。

自分の考えは人に伝えることで広がりを増し、深みを出します。講義で行われるディスカッションにおいては、他者からの指摘によって自分のやりたいことや考えをさらに深掘りすることができます。また仲間の意見や考えを一緒になって真剣に考える機会もあります。このようなコミュニケーションを、大前学長は「クロスファータリゼーション」と呼んでいます。BBT大学院のMBAを通じ、お互いの人生を豊かにしあえる仲間を作れたことは本当に大きな財産です。当時勤務していた会社にいたままでは、このような変化は起こらなかったでしょう。

向上心の濃度が高い世界にようこそ

一生のうちで間違いなく最も勉強した2年間でした。体力的にきつい面もありましたが、最高に楽しい夢のような時間でしたね。 一生学び合える友人と師を得ることができ、生き方もそれこそ180度変わりました。自分自身、2年前のあのときに衝動入学をしたことを自画自賛しています。

自分がここまで変わることができたのは、とにかくBBT大学院のクラスメイトの「向上心の濃度」の高さによるものです。これだけ向上心が高い人たちに囲まれれば自分ももっと成長したいという欲求を抑える方が難しいです。 MBAの学位取得も大事ですが、そこに集まるクラスメイトや教授・TA(Teaching Assistant:各科目の学習サポーター/ファシリテーター)などのネットワークの方が何倍も重要で有益です。是非この新たな世界を体験してみてください。

修了式、大前研一学長とともに。

Interview2:周囲の評価
 ――学びを実務に活かしているMBAホルダーを見て


細谷 奈弓さん / テーブルライフプランナー

アウトプットとは夢をカタチにすること。それができることが素晴らしい

シンガポールやフランス、トルコ、イタリア、ペルーと計5カ国でこれまで生活をしてきましたが、海外ではお客様を自宅にお迎えすることが度々ありました。その際に満足するテーブルコーディネートができず悶々としていた原体験があり、帰国後テーブルコーディネートを1年半ほど学びました。そして現在は食器に関する取材や記事執筆をしたり住宅展示場のダイニングテーブルをコーディネートしたりと、テーブルにまつわる様々なお仕事をやらせていただいています。

そのひとつとして徳田さんともお仕事をさせていただいていますが、話の引き出しがとても多くアウトプット能力が高い印象を持っています。たまたま海外MBAを取得した親戚がおり徳田さんと同様のイメージを持っているので、これはMBAをしっかり学んだ方の共通点なのかもしれませんね。

仕事においては、たとえばWebやマーケティングについて詳しくありませんので普段からいろいろな質問を徳田さんに投げかけています。それに対して徳田さんは直接的な回答だけではなく、その背景や構造なども含めて返していただけるので、より深く体系的な理解ができます。これはお客様へのプレゼンにおいても同様です。とにかく分かりやすく必要な情報を的確に伝えるアウトプット力には本当に学びが多いです。

私自身、食器のメディアという全く新しいジャンルに挑戦させていただいていることで、楽しくかつ刺激的な毎日を過ごしています。また、徳田さんが自身の夢を少しずつカタチにしていく過程を見ることができるのもこの仕事の醍醐味です。これからも徳田さんの夢の実現のために、そしてテーブルライフのビジョンの実現のために参画し続けたいと思っています。


徳田 貴子さん / 徳田さんの奥様

本気を出した夫の背中を見ていると応援するしか無い

夫がMBAに関心を持ち学びたいと言い出したとき、実はそれほど大きな驚きはありませんでした。私たちは学生時代に知り合ったのですが、その頃から彼は世話役というかリーダー体質の人でした。例えば飲み会を開くときはほとんど幹事役を引き受けていましたね。「幹事が楽しんだら飲み会は成功なんだ」といつも言っていたように思います。

そんな彼が大きな会社に就職してから、仕事に関してやりがいは感じていたのでしょうが、どこかで「仕事は生活の手段」と考え割り切っていたように思います。今から考えると余力があったのでしょう。全ての時間を傾けて、というようには見えませんでした。

それがBBT大学院に入学してから、特に最初の1年は人が変わったように勉強をしていました。例えば、それまで朝食はかならず家族4人で食べていましたが、入学以降は皆が寝ているうちに家を出て、就業時間が始まるまで勉強をして、夜も家族が寝静まった後にもずっと勉強していました。

これまでも趣味など自分が興味を持ったことに対しては、とことん突き詰めようとする性格なのは理解していました。BBT大学院への入学以降は興味の対象が学ぶことに向けられていましたが、本当に見ていて圧倒されるほどでしたね。

元々彼は一生サラリーマンをするタイプでは無いのかもしれないとは思っていました。経営にも興味があると言っていたし…。それでも周囲からは、大きな会社で安定した生活をしていたのに、いきなりゼロから起業すると言われて反対しなかったの?と聞かれます。しかし、1年目に人が変わったようにあれだけ必死に勉強した様を見せられたので、自分で出した起業という結論に対しては、もう何も言う事はできませんでした。人があそこまで本気になったら、止めることはできません。BBT大学院とはそこまで人の価値観や人生観を変えてしまうのだな、と驚いています。

ただ、やはり体の事は心配です。生き方の問題でもあるので止むを得ないとは思っていますが、くれぐれも体には気をつけて、しっかりと稼いできてもらえれば(笑)、と思っています。


新卒以来勤めていた大企業を退職して、スタートアップ・ベンチャーを起業した徳田さん。 BBT大学院での出会いと学びを通じて人生の価値観を大きく変えた徳田さんは、MBAを「やりたい事をやってよい許可証」と表現しています。今回はスタートアップを立ち上げる過程での経験の一部や考え方お話しいただきます。

修了生プロフィール

徳田 吉範(よしのり) さん
株式会社テーブルライフ 代表取締役
1975年生まれ、千葉県八千代市出身。
理工系大学院修了(01年)後、同年より大手タイヤメーカーでR&D部門のエンジニアとして2014年まで13年間勤務。2009年より3年間イタリア・ローマの研究センターへ赴任。帰国後在職のまま2013年BBT大学院に入学し2年間でMBA取得。
在学中の2013年秋頃より同期入学の友人と起業に関する勉強会「起活会」の活動を開始。2014年のBBTビジネス・インキュベーション・センター創設の礎となり、現在も運営委員としても参画。2015年4月よりBBT大学院のティーチングアシスタント(TA)として協力のほか各種イベントボランティア活動に尽力。
2015年10月株式会社テーブルライフ設立、代表取締役就任。「食器のファッション誌」をコンセプトとするインターネットメディアを立ち上げ、「食器が好きな人が輝いて働ける会社」を創ることに日々尽力している。趣味の野球や関心の高い教育など幅広く好奇心を持って行動し、シリアルアントレプレナーに憧れる新米経営者。

CASE1 お困りごとを聞くこと、フィードバックをもらい続けることが確信につながる

大企業を辞めスタートアップという選択をした理由

大企業に勤めていて、なぜ起業したのか?と疑問に思われる方もいますよね。まずはなぜ私が「起業」の道を選んだのかを簡単にご紹介します。

研究開発職だった当時の私は、今後この会社にいたらいずれは昇進して経営に携わっていくもの、と思っていました。単純な話で、そうなる前に経営やマネジメントの知識が必要だろうと思いBBT大学院の門を叩いたのです。ところが入学して半年後に受講した「起業論」という科目を通じ「働き方」に対する考え方や気持ちが大きく変わりました。

私たちは人生の殆どの時間を「働く」ことに費やしています。その働く時間を最も充実させるためには、自分でその時間をコントロールできる幅が広くないといけません。サラリーマンのままではコントロールできる幅も限られている、そう思ったとき「起業」という手段が最も自由度が高いということに気づきました。また、一定の年齢になると定年退職をせざるを得ない会社組織の中だけでキャリアを積むことに、漠然とした危機意識を持ち始めました。世の中で本当に通用する力を身に着けるためにも、起業することは重要な経験値と実力を得られると考えるようになったのです。これは私の中において大きな変化でした。

さて起業には、これまでの仕事の経験を生かして独立する、またはフランチャイズ(FC)に加盟する、など様々な形があります。私の場合は起業に際して「スタートアップ型」を選択しました。「スタートアップ」の定義は様々ですが、ここでは「新しいビジネスモデルを元に市場開拓を行い大きな成長を狙う」という意味で捉えてください。

スタートアップ型を選択した理由は、BBT大学院在学中にアントレプレナーシップを更に深く学ぶために仲間とシリコンバレーへのビジネスツアーを企画・敢行したことが大きな要因です。私が直接話しを聞いたシリコンバレーの起業家たちは、世の中の不自由を解決するために様々なビジネスに挑戦していました。私も彼らの生き方のように新しいプロダクトを世の中に提供することで、新たな価値を作り出すことに挑戦したいと強く奮い立ちました。

ビジネスアイデアの発見とビジネスモデル化までの道のり

ビジネスアイデアとビジネスモデルという言葉を最近ではよく聞くかもしれません。これらは一見すると似ていますが、まずは私なりに定義をします。

ビジネスアイデアは、世の中にある「不便」を発見し、それを解決できるかもしれない方法を思いついた状態を指します。「こうすれば便利かもしれない」「こうすれば喜ぶ人がいると思う」という類のものです。下図を参考にして下さい。

次にビジネスモデルについてです。

・アイデアを実現するための必要な資源を準備し、
・それらを組み合わせて新たな価値を提供できる具体的なプロダクト開発ができ、
・そのプロダクトに対して対価を払う顧客像がイメージでき、
・収益化できる仕組みが見えている。

これらの要素が具体的である状態を指すのがビジネスモデルです。すなわち収益化ができる提供価値と、顧客が存在していることがビジネスモデルの概念のポイントとなります。

既に顧客が存在していたりフランチャイズに加盟していたりするなど、具体的なビジネスモデルが見えていればすぐにでも起業ができるかもしれません。しかし私のように「スタートアップ型」では、ビジネスアイデアの発見からスタートし、ある程度しっかりしたビジネスモデルの構築に繋げていかなければならないので、ある程度の準備期間が必要です。その為少なくとも起業アイデアをしっかり絞り込んでから具体的な起業活動に専念するつもりでした。

そこで、BBT大学院で大前研一学長から様々な発想技術を学ぶ「イノベーション」科目の受講を通じ、方法論に基づいた具体的なビジネスアイデア発想の課題に積極的に取り組むことにしました。起業アイデアを欲していた私にとってはまさにうってつけの科目でして、取り組みたいと思えるアイデアを見つけるつもりで次々と課題をこなしていたところです。そこで、たまたま「食器」をテーマにした議論があり、これがビジネスアイデアの発見につながる運命的な出会いとなりました。

プライベートな話ですが、私の妻は人を招いて料理をふるまうホームパーティーを開くことが好きです。しかしパーティーの都度、料理を盛り付ける食器が少ないことに不満を持っていました。紙皿では文字通り味気なく、料理の良さが発揮されないというのです。とはいえ自宅には逆にあり余るほどに食器があり、私には不思議に思えて仕方がありませんでした。どうやら妻はパーティーのときだけ利用できる素敵なお皿を使いたい、という願望を持っていたようです。

ここにビジネスアイデアのヒントがありました。身の回りのちょっとした不自由さに目を向け、それを解決する方法を考えることが起業の第一歩と学んでいた私は、日々の生活の中で様々なアイデアをストックしていました。しかし、それまでのアイデアは「アイデアのためのアイデア」だったかと思うほど、このお皿のビジネスアイデアは「いけるかも…」という強いモチベーションを伴ったものでした。起業など未知の事に挑戦するには、人を突き動かすほどのモチベーションが大事なのはいうまでもありませんよね。「これをやらないと死んでも死にきれない」というほどのモチベーションがあることで、様々な困難を乗り越える原動力になります。そのようなアイデアを見つけることができたので、ブラッシュアップに専念すべく13年勤めた会社にあっさりと別れを告げました。

しかし会社の設立はもう少しあとの話です。ビジネスモデルが出来上がってからと考えていました。まずはビジネスアイデアをビジネスモデルへと磨きあげる事に集中することが優先事項だったのです。

自分の頭だけで考えていてはダメ。とにかくモデルを人に話すこと

さて、退職後はビジネスアイデアを磨くことに専念しました。まずはとにかく業界の情報や人脈が必要と考え、食器に関係する展示会・販売会を回り、作ったばかりの名刺を配りながら業界の「常識」や「お困りごと」をひたすらヒアリングして回りました。

退職前に調べた様々な本やネットの情報だけでは到底獲得し得ない「現場の声」により、業界についての基礎知識をつけていきました。この頃に大きな手応えを感じ、ある程度ビジネスモデルの骨組みのようなものが出来てきたと振り返っています。その段階では意識をしていませんでしたが、この頃に知り合った「初期の協力者」は私の大きな財産となっています。

ある程度のレベルまで仮説が固まってきたら、次のステップとして「人に話すこと」が効果的です。話しても大丈夫なのか?とアイデアを盗まれることを懸念するかもしれませんが、「アイデアはそれ自体には価値がない」とGoogle創業者のラリー・ペイジは言っています。「実行することが大事である」と。その実行の一歩目が「人に話す」という行動なのです。

それにあたっての具体的な方法をご紹介すると、たとえば「スタートアップウィークエンド」という起業イベントがあります。これは金曜日の夜から日曜日の夜までの週末3日間を使って実際にビジネスを作り上げるスタートアップ実践イベントです。参加者が金曜日の夜にアイデアのピッチ(ミニプレゼン)をし、そのアイデアに共感した人が集まって即席チームを作ります。そこから一気にプロトタイプを作り、クイックな市場調査を経て日曜日にプレゼンを行い、優勝者を決める…という大まかな流れになります。私はこれに数回参加し、自分のビジネスアイデアをピッチしました。このような起業意識の高い人々の集まりの中で自らのアイデアを話すことで、新たなヒントや気づきを貰い、自信が持てるビジネスモデルへと近づけられました。余談ですが、創業後に参加したスタートアップウィークエンドでは見事優勝することができました。

当初のアイデアは、「食器のレンタル事業」でした。しかし調査をすすめるうちに、物流や在庫などの点から多くの課題が明らかになってきました。それらの課題は小さなベンチャー企業で解決するには荷が重いものでした。一方で、世の中には「うつわ好き」が沢山いることもわかりました。そしてそのような「うつわ好き」の人々にインタビューを重ねるうちに、どうやってその「うつわ」を選んでよいのかがわからない、という声を多くキャッチしました。

アパレル関係のメディアでは、モデルが身につけている服やアクセサリーなどのブランド、商品名、価格がわかります。さらにWEBメディアであれば購入もできます。しかし、料理を紹介している多くのメディアではその料理のレシピ情報はあるものの、料理が盛り付けられている食器やカトラリー、テーブルウェアなどの情報が掲載されていないことが多く、欲しいと思ってもその食器に関する情報がわからないのです。このような状態を問題と捉え、解決方法を考えました。

そこでビジネスモデルを「食器のレンタル事業」から「食器のメディア」にピボット(ビジネスモデルを変更すること)しました。 このビジネスモデルを元にユーザーだけでなく、食器を生産している窯元や流通業者などにもインタビューを重ね、初期のビジネスモデルの枠組みはほぼ完成していきました。

またこのアイデアとモデルを元に、ビジネス・ブレークスルーが運営するスタートアップ起業家支援プロジェクト「SPOF」(背中をポンと押すファンド)にもエントリーし、様々なアイデアやフィードバックをもらうだけでなく、結果として資金提供までしていただくことになりました。 最近はこのような出資を視野に入れたビジネスコンテストが世の中に増えつつあるので、ぜひ活用してみてください。

ここまでお話しした通り、いよいよビジネスモデルが具体的になり外部から資金を入れてくれる投資家が現れたため、事業を具体的に運営するべく会社設立を決心しました。

なおこれまでの流れは起業を志す方だけでなく「社内の新規事業」担当の方もご参考いただけるかと思います。これらのプロセスを活用して、是非アイデアをビジネスモデルへと育ててみてはいかがでしょうか。

CASE2 スタートアップ時の資金調達は実際にどうやったか?

資金は経営の重要な意思決定要素

ビジネスモデルが決まり、いよいよ会社を設立することにしました。私の場合は、スタートアップ型のビジネスモデルであり、外部から資本を入れていただくようになったことも、設立という意思決定のために重要な要素でした。資金は経営にとって常に重要な意思決定要素です。充分な自己資金があれば良いのですが、多くの場合は外部から調達をすることになります。POINT2では、そこにフォーカスしたいと思います。

手持ちの資金だけで起業できれば苦労はしませんが、実際には外部から資金を入れる必要に迫られるケースが多いと思います。私の場合も外部資本を活用しました。なお外部資本の具体的な方法としては、基本的には融資と投資の2種類になります。下図は簡単にこの2種類について説明をしたものです。

ビジネスの性質として、例えば元々仕事をしていた業界内で独立する場合などは、はじめから顧客もついておりキャッシュフローが見込め、そして返済計画が立てやすいので融資を主体とした調達方法が良いでしょう。

一方でスタートアップなどゼロから商品をつくるようなビジネスの場合は、始めの数年間は商品開発やビジネスモデルの構築などに時間を費やすため、売上が殆どないことが予測されます。そんなところに融資する金融機関はまずないと言ってもいいので、返済義務のない投資主体で調達をしなければなりません。この時投資家は、会社が成長した後のリターンによる収益を求めるため、会社成長のための実現性のある事業計画書の提出が求められます。この事業計画書の確度が、投資を受けるための重要な要素になります。また投資は会社の株の一部を投資家に渡すことになるので、運命共同体になるともいえます。良好な投資家とのパートナーシップを作ることも重要です。

調達時は、集めたお金をどのように使うか、という計画も重要です。特に投資を受ける際は、投資家に資金の活用方法を納得してもらう必要があります。たとえば当社の場合は初期に必要な費用1500万円を下記のように見積もりました。

 ・システム開発費:500万円、
 ・人件費、オフィス代などを含めた固定費:40万/月
 ・25ヶ月以内にビジネスを次のステージに持っていく計画

初期のビジネスモデルは流動的であり、ビジネスモデルの変更、いわゆるピボットをする可能性もあります。細かい軌道修正はあって当たり前の世界なので、厳密な計画はあまり意味がありません。ビジョンを実現するための「船出資金」はこのようにして見積もりました。

調達スキームをバランスシートで考える

「資本政策」という言葉があります。会社の資金をどのような方針で集めるのか、株価の設定はどうするか、など資金調達の方針について考える時に使います。

ここで私が組み上げた必要経費計1,500万円の調達方法について、バランスシートを使って説明します。創業にあたって、ある程度の自己資金は準備していました。従って創業時のバランスシートは「貸借対照表A」の形でした。しかしそれだけでは計画していた資金に当然届いていません。そこで、会社の経営に影響が少ない範囲で外部資金を投入することにし、SPOFからの資金提供を受け「貸借対照表B」という形になりました。その後、起業を支援するための創業融資制度を活用して一部借入を行ったため、最終的には「貸借対照表C」という形になっています。

資金調達の際は個別に様々な条件があるので、自分が設計したビジネスモデルにフィットする調達方法を選択した結果です。これは事業毎に異なるので、資金の必要性を含めてよく吟味して決断する必要があります。

現職からの独立やFC加盟など、はじめから売上が見込める場合は無理に会社の株を売らずに、借入で賄うほうが経営の独立性は保てます。しかし、新しい価値を生み出すビジネスの場合、商品開発や市場開発に一定の時間がかかると予測されます。この場合借入を行うことは難しいので、投資というスキームを活用することになります。

このような資金調達に関する意思決定を「資本政策」とも言います。ある程度の規模の会社になると、財務担当者が具体的な資本政策をすすめるのでしょうが、ベンチャー企業の場合は創業者自身が判断することになります。 基本的には自身の株の持ち分を減らさずに、外部資金を導入する方法を考えることになります。

さて、ここまでアイデア発想からスタートアップ設立までのプロセスを、追って説明しました。 数字などシンプルにモデル化したところはありますが、基本的な考え方は赤裸々に示したつもりです。資本政策は、会社経営の中では一度決めて進むと以前の状態には戻れない、不可逆性の強い要素になります。初期の資本政策のミスが後々大きな影響を及ぼす事があります。資金需要を見極め、バランスシートと資金繰りを頭に描きながら進めることをおすすめします。

Interview1:学びを振り返って

経営層になった時の準備を今から

前職でのイタリア駐在中に読書にハマったり資格試験の勉強を始めたりしたことがきっかけで、MBAに興味を持ちました。当時の自分はいずれ経営層まで出世すると勝手に思っており、昇進してからではなく早いうちにマネジメントを学ばないといけないと考え、そこまで忙しくない管理職手前の時期である38歳という年齢で出願をしました。 なお大学院の選定にあたっては、勤務先が都心から少し離れていたことや再度海外転勤の可能性もあったことから通学制は難しいと思い、オンラインであることの一点でBBT大学院に決めました。

入学当初は学習時間の捻出に苦労していましたが、朝方に生活を変えてからは非常にバランスがよくなりました。家族と一緒に朝食を摂ることを諦めた以外はそれほどプライベートを犠牲にすること無く2年間を過ごすことが出来ました。

「やりたいこと」が何かを真剣に考えた結果、起業へ

入学した年の10月に受講した「起業論」の科目が私の人生を大きく変えました。起業論を担当されている、日本シスコシステムズ株式会社(当時)を創業された松本孝利先生の授業の中で話されていた2つのエピソードは今でも強く印象に残っています。

「日曜日の晩に、月曜の仕事のことが楽しみで眠れない」
「前の日、遅くまで打合せをして睡眠不足でも、仕事が楽しくて朝ちゃんと目が覚めて会社に行く」

これまでも仕事にそれなりの楽しみを見出していたつもりでしたが、これほどまでに没頭できる世界があることに驚きました。そして自分も仕事に全力を尽くす人生を歩んでみたい、と思うようになりました。会社の中では自分のやりたいことをすべてできるわけではありませんし、これまでは与えられた仕事の中で楽しみを見出していくものだと思っていました。しかしBBT大学院に入ると先生方や同級生が自分のやりたい事を仕事にして生きている、その姿に次第に魅了されていきました。気がつけば、やりたい事に没頭するために起業するという選択を在学中にしていたのです。

卒業した今、私はMBAとは学位そのものではなく「やりたいことをやってもよい」という許可証のようなものと理解しています。単にビジネススキルを磨くだけではなく、人生の全ての時間を使ってやりたい事は何かを考え、それを実行する力と仲間という財産を与えてくれる場だったように思います。

自分の考えは人に伝えることで広がりを増し、深みを出します。講義で行われるディスカッションにおいては、他者からの指摘によって自分のやりたいことや考えをさらに深掘りすることができます。また仲間の意見や考えを一緒になって真剣に考える機会もあります。このようなコミュニケーションを、大前学長は「クロスファータリゼーション」と呼んでいます。BBT大学院のMBAを通じ、お互いの人生を豊かにしあえる仲間を作れたことは本当に大きな財産です。当時勤務していた会社にいたままでは、このような変化は起こらなかったでしょう。

向上心の濃度が高い世界にようこそ

一生のうちで間違いなく最も勉強した2年間でした。体力的にきつい面もありましたが、最高に楽しい夢のような時間でしたね。 一生学び合える友人と師を得ることができ、生き方もそれこそ180度変わりました。自分自身、2年前のあのときに衝動入学をしたことを自画自賛しています。

自分がここまで変わることができたのは、とにかくBBT大学院のクラスメイトの「向上心の濃度」の高さによるものです。これだけ向上心が高い人たちに囲まれれば自分ももっと成長したいという欲求を抑える方が難しいです。 MBAの学位取得も大事ですが、そこに集まるクラスメイトや教授・TA(Teaching Assistant:各科目の学習サポーター/ファシリテーター)などのネットワークの方が何倍も重要で有益です。是非この新たな世界を体験してみてください。

修了式、大前研一学長とともに。

Interview2:周囲の評価
 ――学びを実務に活かしているMBAホルダーを見て


細谷 奈弓さん / テーブルライフプランナー

アウトプットとは夢をカタチにすること。それができることが素晴らしい

シンガポールやフランス、トルコ、イタリア、ペルーと計5カ国でこれまで生活をしてきましたが、海外ではお客様を自宅にお迎えすることが度々ありました。その際に満足するテーブルコーディネートができず悶々としていた原体験があり、帰国後テーブルコーディネートを1年半ほど学びました。そして現在は食器に関する取材や記事執筆をしたり住宅展示場のダイニングテーブルをコーディネートしたりと、テーブルにまつわる様々なお仕事をやらせていただいています。

そのひとつとして徳田さんともお仕事をさせていただいていますが、話の引き出しがとても多くアウトプット能力が高い印象を持っています。たまたま海外MBAを取得した親戚がおり徳田さんと同様のイメージを持っているので、これはMBAをしっかり学んだ方の共通点なのかもしれませんね。

仕事においては、たとえばWebやマーケティングについて詳しくありませんので普段からいろいろな質問を徳田さんに投げかけています。それに対して徳田さんは直接的な回答だけではなく、その背景や構造なども含めて返していただけるので、より深く体系的な理解ができます。これはお客様へのプレゼンにおいても同様です。とにかく分かりやすく必要な情報を的確に伝えるアウトプット力には本当に学びが多いです。

私自身、食器のメディアという全く新しいジャンルに挑戦させていただいていることで、楽しくかつ刺激的な毎日を過ごしています。また、徳田さんが自身の夢を少しずつカタチにしていく過程を見ることができるのもこの仕事の醍醐味です。これからも徳田さんの夢の実現のために、そしてテーブルライフのビジョンの実現のために参画し続けたいと思っています。


徳田 貴子さん / 徳田さんの奥様

本気を出した夫の背中を見ていると応援するしか無い

夫がMBAに関心を持ち学びたいと言い出したとき、実はそれほど大きな驚きはありませんでした。私たちは学生時代に知り合ったのですが、その頃から彼は世話役というかリーダー体質の人でした。例えば飲み会を開くときはほとんど幹事役を引き受けていましたね。「幹事が楽しんだら飲み会は成功なんだ」といつも言っていたように思います。

そんな彼が大きな会社に就職してから、仕事に関してやりがいは感じていたのでしょうが、どこかで「仕事は生活の手段」と考え割り切っていたように思います。今から考えると余力があったのでしょう。全ての時間を傾けて、というようには見えませんでした。

それがBBT大学院に入学してから、特に最初の1年は人が変わったように勉強をしていました。例えば、それまで朝食はかならず家族4人で食べていましたが、入学以降は皆が寝ているうちに家を出て、就業時間が始まるまで勉強をして、夜も家族が寝静まった後にもずっと勉強していました。

これまでも趣味など自分が興味を持ったことに対しては、とことん突き詰めようとする性格なのは理解していました。BBT大学院への入学以降は興味の対象が学ぶことに向けられていましたが、本当に見ていて圧倒されるほどでしたね。

元々彼は一生サラリーマンをするタイプでは無いのかもしれないとは思っていました。経営にも興味があると言っていたし…。それでも周囲からは、大きな会社で安定した生活をしていたのに、いきなりゼロから起業すると言われて反対しなかったの?と聞かれます。しかし、1年目に人が変わったようにあれだけ必死に勉強した様を見せられたので、自分で出した起業という結論に対しては、もう何も言う事はできませんでした。人があそこまで本気になったら、止めることはできません。BBT大学院とはそこまで人の価値観や人生観を変えてしまうのだな、と驚いています。

ただ、やはり体の事は心配です。生き方の問題でもあるので止むを得ないとは思っていますが、くれぐれも体には気をつけて、しっかりと稼いできてもらえれば(笑)、と思っています。