2019年2月に株式会社Deepworkを設立し、請求書の処理を自動化するクラウドサービスを開発・運営する横井朗さん。過去にベンチャー企業の創業期を経験したものの、会社の規模が大きくなるとともに自分自身の成長実感を得にくくなり、経営の知識を体系的に学ぶべくBBT大学院への入学を決意。卒業研究で立案した事業計画をもとに、ご自身で起業を果たされました。BBT大学院での学びを通して得たものや、エンジニアがMBAを学ぶ意義についてうかがいました。

修了生プロフィール

横井 朗(よこい あきら)さん
2014年4月ビジネス・ブレークスルー大学院(以下、BBT大学院)入学、2019年3月修了。入学時37歳、インタビュー時は44歳。
大学卒業後ソフトウェアエンジニアとして就職、2003年に創業間もない株式会社ビーブレイクシステムズに参加し製品開発を牽引。2013年に株式会社Artiを創業。2015年に株式会社クラビスに参画し、2016年より取締役CTOに就任。2019年に請求処理自動化サービス 「invox」を提供する株式会社Deepworkを創業し代表取締役に就任(2021年5月現在)。

20代前半でベンチャー企業の創業に参加し、手探りでの経営を経験。体系的な学びを求めてBBT大学院へ


――はじめに、これまでのご経歴について教えていただけますか。

大学卒業後、ソフトウェアエンジニアとしてキャリアをスタートしました。当時はシステムエンジニアと呼ばれ3K(きつい、厳しい、帰れない)の不人気職種だったのですが、思いついたアイデアをすぐに形に出来て、世界中に発信できるソフトウェアに魅せられプログラミングに没頭していました。3年ほど経った頃、高校時代の先輩が起業すると聞いて設立に参画し、企業向けの業務システムの開発に携わることになりました。

当時20代の若者ばかりのベンチャー企業ですので、お客様からのヒアリングや交渉など、サポートも無い状況で文字どおり1から担当しました。お客様の課題やニーズを聞いて、プロトタイプを作って提案するという事を繰り返し、プログラミング好きから、どうしたらお客様の課題を解決できるのか、自分で考えながらサービスをつくるスタイルに変わり、事業開発が好きになっていきました。

はじめは数名の会社でしたが、10年ほどで100名近くになるまで成長し、現在は上場も果たしています。しかし、業務に占めるマネジメントの比率が増え、業務システムの導入はお客様を変えて同じような事を繰り返すという側面もあり、もっと新しいチャレンジができる環境に身を置きたいと思うようになりました。当時はスマートフォンが出てきた時期で、趣味で作っていたアプリで多少の収入を得られるようになっていたため、10年を節目に退職して抱えていた荷物を降ろし、仕事のペースを抑えてその先の事を考える時間を作りました。

――どのようなきっかけで、BBT大学院で学ぼうと思ったのでしょうか?

ちょうど子どもが生まれた時期でもあったため、子育てをしながら好きなものを開発するという生活をしていたのですが、半年くらいすると少しずつ刺激が足りないと感じるようになってきたんです。そんな時、友人がBBT大学院を卒業したという話を聞き、興味を持ったのがきっかけです。

創業から10年間やっていた会社では、経営の知識や経験が少ない20代のメンバーで試行錯誤していましたが、企業経営には先人が培ってきた知恵やベストプラクティスと呼べるものが存在するはずで、そういう経営の知識をちゃんと学びたいと思い、BBT大学院への入学を決めました。

MBAを学ぶことは自分のOSをバージョンアップすること。自分の意思決定に自信を持てるようになった


――BBT大学院の講義で特に役立ったものはありましたか?

特定の“この授業のこれが役に立った”というよりは、全般的に役に立っています。例えるなら、自分のOSのバージョンアップができたイメージです。視野が広がって、意思決定のプロセスをはじめ、すべてに役立つベースがレベルアップしました。

それまで経営を体系的にきちんと勉強したことがなく、興味がある分野をつまみ食いして学んでいたので、いわばあちこちに穴が開いた地図のような網羅性がない状態でした。BBT大学院で学んだことによって、知識の地図が埋まっていき、ものごとを考える時のフレームワークが頭の中にしっかりと入った感覚です。

また、自分の意思決定に自信を持てるようになりました。それまでは自分がその時に持っている情報だけでなんとなく判断することが多かったのですが、MBAを学んでからは、今ある情報を整理して、足りなければ必要な情報を集め、ロジカルに整理をしたうえで感覚的にどれがしっくりくるかで決めるようになりました。最終的には直感で判断しても、そこまでのプロセスに筋が通っているので、後悔することがなくなったんです。

――それまで直感的にやってきたことの精度が上がり、学びを活かして体系的に考えられるようになったんですね。

そうですね。私は何か意思決定をする時に、ロジックだけでなく“しっくりくるかどうか”を大事にしています。MBAを学んだことで、そのしっくりくる感覚が増え、納得のいく決断ができるようになりました。

しっくりきて出した結論は、それを実現するためにしっかり頑張ることができます。選んだタイミングでどちらかが正解というわけではなく、頑張りによってその決断が正解になっていきます。どう頑張ったら実現できるかというところまで考えて決断できているので、最近は後悔をしなくなりました。

――BBT大学院の在学中に、スタートアップの経営に参画されたとうかがいました。

クラウド記帳サービスを手がける、クラビスというスタートアップの経営に参画しました。BBT大学院の勉強会に潜入していた創業者の菅藤と偶然出会い、グローバルなサービスをつくりたいという想いに共感して手伝いはじめました。

クラビスはザ・スタートアップという感じで資金調達でも苦労しましたし、短期間での事業立ち上げの難しさやSaaSビジネスのイロハなど、実践を通じて多くの事を学びました。BBT大学院での学習とスタートアップでの実践という両輪をまわすことで、学んだことをすぐに現場で活かし、現場での気づきが学びに活きるというサイクルができたのはとてもよかったですね。

卒業研究で立案した事業計画をもとに再び起業。学びを通して経営者としてのマインドセットを体得


――現在は、BBT大学院での卒業研究(※1)として取り組んだビジネスプランをもとに、新たな会社を起業されています。展開している事業について教えていただけますか。

BBT大学院を卒業する直前の2019年2月に株式会社Deepworkを設立し、請求書の処理を自動化する「invox(インボックス)」というクラウドサービスを開発・運営しています。昨今のリモートワークのニーズが追い風となり、2020年3月のサービス開始から1年で、個人の方から一部上場企業まで約500社(2021年3月時点)に導入いただき、その後も指数関数的に利用者が増加しています。

――なぜこのような事業計画をつくるに至ったのでしょうか?

私がこれまで培ってきた経験やスキルを組み合わせてこそできるビジネルモデルで、かつ私が社会に対してもっともインパクトを与えられるのは間違いなくこの分野だと思ったからです。卒業研究のテーマを決める時も、この内容で事業計画をつくることに迷いはありませんでした。

その事業計画をどのように第三者に伝えるかという点では、指導教官からのアドバイスが役立ちました。大前学長の前でプレゼンもさせていただき、良い経験になりましたね。

――横井さんの卒業研究はとても評価が高かったそうです。入学前にBBT大学院に期待していたものは、卒業時までに得られたでしょうか?

入学前と卒業後では、ビジネスに対する感覚がまったく変わりました。というのは、入学前は“エンジニア上がりの事業開発好き”だったのが、卒業時は戦略を事業に落とし込み、どう実現していくかまでイメージできる起業家に近づくことができた気がします。

BBT大学院には豊富なコンテンツがあり、聴けるコンテンツは全部聴くようにしていたので、それはかなり役立ちましたね。大量に情報をインプットしていくなかで、自分にしっくりくるものとそうでないものがわかり、次第に自分のやりたいことが決まっていきました。継続的に良質のコンテンツに触れる事は非常に重要と考えていて、現在もBBTで視聴できるコンテンツはすべて視聴しています。

――BBT大学院で出会った同級生との交流はいかがですか?

それまで出会うことがなかった業種や職種の人が多く、刺激になりました。数字に強い人、営業が得意な人、全然違うジャンルでおもしろい人がたくさんいましたね。今でも交流が続いています。

もっとも刺激的だったのは、ロサンゼルスで日本人向けのフリーペーパーの事業を手がける込山さんを訪ねて行った事です。現地で活躍する込山さんを見て、日本でちょっと成功した気分になっていた事が恥かしくなりました笑。また同級生と一緒に中国企業の訪問ツアーをしたことも大変良い思い出になっています。

※編集註:

(※1)「卒業研究」:BBT大学院の卒業研究では、新規事業計画を立案します。一流の実務家教員による個別指導のもと、机上の空論ではなく、実戦で通用する事業計画を作ります。

あらゆる支払いの流れをスムーズにしたい。海外展開も視野にビジネス拡大を目指す


――自社の事業でこれからチャレンジしてみたいことはありますか?

現在提供している「invox」では企業間の購買から支払いの流れをもっとスムーズにしたいと考えています。電子マネーの普及をはじめ、個人が物を買って支払いをするという流れは随分楽になりましたが、企業間においてはまったく進歩していません。また企業間だけでなく納税にも大きな社会的コストがかかっていますので、BtoBはもちろんGtoBのお金の流れをもっとスムーズにしたいと思っています。

最近は行けていませんが、以前は様々な国の会計事務所を訪問して現地の会計のやり方を聞くという事をしていました。そこで理解したのは会計や決済というのは世界中の普遍的なテーマで、どこに行っても同じような課題があるという事です。つまり世界中にビジネスチャンスがあるので、近い将来、海外でも事業を展開したいと思っています。

また、私はゼロイチが好きなので、今後もどんどん新しい事業を作っていきたいと思っています。今回40歳を過ぎてスタートアップという非常にリスクの高いスタイルで起業をする際に考えたのは、事業が成功するか失敗するかは不可抗力が大きいし「事業が上手く行く事=成功」と考えるとなかなか踏み出せなくなるなという事でした。

そこで最後は、ワクワクする事業に信頼できる仲間と一緒に取り組み、その期間が充実していれば、それは成功として定義しようと決意しました。失敗を心配すると動けなくなるし、失敗する確率のほうが圧倒的に高いんです。結果は分からないけど、過程が充実していればそれで成功と思っています。

実は私自身、いままで起業したいと思ったことは無いんです。でも、やりたいことを、言い訳なしで思う存分出来る環境を追求していったら自然とそうなって、自分がいちばん楽しく仕事ができるのは創業というスタイルだったんです。もちろんリスクはたくさんありますが、楽しんだもん勝ちだと思っています。大前学長の言葉で言うと、「やりたいことは全部やれ!」「自ら人生の舵を取れ!」ということですね。

エンジニアこそMBAを学ぶべし。スキルの掛け合わせで“最強のカード”になれる


――最後に、MBAを検討されている方へのアドバイスをお願いします。

私は30代後半でBBT大学院に入学しましたが、タイミングはとても良かったと思います。ビジネスマンにとって40歳はひとつの区切りで、その先どんな仕事をして生きていくのか誰しも悩む時期ではないでしょうか。私自身、“これだ”としっくりくるものがなかったので、40歳に向けてBBT大学院にテーマを見つけに行くという感覚でしたし、実際に周りにもそういう人は多かったように思います。

いまの会社にいて10年後や20年後に自分のなりたい姿になれているのか、その先どう生きていくか、世の中にどう価値を出して仕事をしていくのか…。30代後半はそういう不安を抱えがちな時期ですが、もし悩んでいるならば、MBAを学ぶことを選択肢のひとつとして考えてみてはどうかと思います。

――エンジニアがMBAを学ぶことについてはいかがですか?

エンジニアはこれからの時代ますます求められる職業です。だからこそ、エンジニアとしての専門性に事業開発や経営の知識を掛け合わせると、希少な人材になれると思います。ビジネスがわかるエンジニアは、市場価値が高い最強のカードのひとつです。エンジニアが経営を理解していると、サービスや事業をつくるうえで圧倒的なスピード感を持つことができます。

教育改革実践家の藤原和博さんが、“3つのキャリアの掛け算をすることで、100万人に一人の希少性の高い人材になれる”と説いています。私は、エンジニアと経営、さらにグローバルを掛けてビジネスを展開していきたいですね。

エンジニアがMBAを学ぶことで、より視野が広がります。どんなサービスをつくって、どうやって世の中に広めていくか…自分がやりたいことを思う存分できる土台づくりにつながると思います。


2019年2月に株式会社Deepworkを設立し、請求書の処理を自動化するクラウドサービスを開発・運営する横井朗さん。過去にベンチャー企業の創業期を経験したものの、会社の規模が大きくなるとともに自分自身の成長実感を得にくくなり、経営の知識を体系的に学ぶべくBBT大学院への入学を決意。卒業研究で立案した事業計画をもとに、ご自身で起業を果たされました。BBT大学院での学びを通して得たものや、エンジニアがMBAを学ぶ意義についてうかがいました。

修了生プロフィール

横井 朗(よこい あきら)さん
2014年4月ビジネス・ブレークスルー大学院(以下、BBT大学院)入学、2019年3月修了。入学時37歳、インタビュー時は44歳。
大学卒業後ソフトウェアエンジニアとして就職、2003年に創業間もない株式会社ビーブレイクシステムズに参加し製品開発を牽引。2013年に株式会社Artiを創業。2015年に株式会社クラビスに参画し、2016年より取締役CTOに就任。2019年に請求処理自動化サービス 「invox」を提供する株式会社Deepworkを創業し代表取締役に就任(2021年5月現在)。

20代前半でベンチャー企業の創業に参加し、手探りでの経営を経験。体系的な学びを求めてBBT大学院へ


――はじめに、これまでのご経歴について教えていただけますか。

大学卒業後、ソフトウェアエンジニアとしてキャリアをスタートしました。当時はシステムエンジニアと呼ばれ3K(きつい、厳しい、帰れない)の不人気職種だったのですが、思いついたアイデアをすぐに形に出来て、世界中に発信できるソフトウェアに魅せられプログラミングに没頭していました。3年ほど経った頃、高校時代の先輩が起業すると聞いて設立に参画し、企業向けの業務システムの開発に携わることになりました。

当時20代の若者ばかりのベンチャー企業ですので、お客様からのヒアリングや交渉など、サポートも無い状況で文字どおり1から担当しました。お客様の課題やニーズを聞いて、プロトタイプを作って提案するという事を繰り返し、プログラミング好きから、どうしたらお客様の課題を解決できるのか、自分で考えながらサービスをつくるスタイルに変わり、事業開発が好きになっていきました。

はじめは数名の会社でしたが、10年ほどで100名近くになるまで成長し、現在は上場も果たしています。しかし、業務に占めるマネジメントの比率が増え、業務システムの導入はお客様を変えて同じような事を繰り返すという側面もあり、もっと新しいチャレンジができる環境に身を置きたいと思うようになりました。当時はスマートフォンが出てきた時期で、趣味で作っていたアプリで多少の収入を得られるようになっていたため、10年を節目に退職して抱えていた荷物を降ろし、仕事のペースを抑えてその先の事を考える時間を作りました。

――どのようなきっかけで、BBT大学院で学ぼうと思ったのでしょうか?

ちょうど子どもが生まれた時期でもあったため、子育てをしながら好きなものを開発するという生活をしていたのですが、半年くらいすると少しずつ刺激が足りないと感じるようになってきたんです。そんな時、友人がBBT大学院を卒業したという話を聞き、興味を持ったのがきっかけです。

創業から10年間やっていた会社では、経営の知識や経験が少ない20代のメンバーで試行錯誤していましたが、企業経営には先人が培ってきた知恵やベストプラクティスと呼べるものが存在するはずで、そういう経営の知識をちゃんと学びたいと思い、BBT大学院への入学を決めました。

MBAを学ぶことは自分のOSをバージョンアップすること。自分の意思決定に自信を持てるようになった


――BBT大学院の講義で特に役立ったものはありましたか?

特定の“この授業のこれが役に立った”というよりは、全般的に役に立っています。例えるなら、自分のOSのバージョンアップができたイメージです。視野が広がって、意思決定のプロセスをはじめ、すべてに役立つベースがレベルアップしました。

それまで経営を体系的にきちんと勉強したことがなく、興味がある分野をつまみ食いして学んでいたので、いわばあちこちに穴が開いた地図のような網羅性がない状態でした。BBT大学院で学んだことによって、知識の地図が埋まっていき、ものごとを考える時のフレームワークが頭の中にしっかりと入った感覚です。

また、自分の意思決定に自信を持てるようになりました。それまでは自分がその時に持っている情報だけでなんとなく判断することが多かったのですが、MBAを学んでからは、今ある情報を整理して、足りなければ必要な情報を集め、ロジカルに整理をしたうえで感覚的にどれがしっくりくるかで決めるようになりました。最終的には直感で判断しても、そこまでのプロセスに筋が通っているので、後悔することがなくなったんです。

――それまで直感的にやってきたことの精度が上がり、学びを活かして体系的に考えられるようになったんですね。

そうですね。私は何か意思決定をする時に、ロジックだけでなく“しっくりくるかどうか”を大事にしています。MBAを学んだことで、そのしっくりくる感覚が増え、納得のいく決断ができるようになりました。

しっくりきて出した結論は、それを実現するためにしっかり頑張ることができます。選んだタイミングでどちらかが正解というわけではなく、頑張りによってその決断が正解になっていきます。どう頑張ったら実現できるかというところまで考えて決断できているので、最近は後悔をしなくなりました。

――BBT大学院の在学中に、スタートアップの経営に参画されたとうかがいました。

クラウド記帳サービスを手がける、クラビスというスタートアップの経営に参画しました。BBT大学院の勉強会に潜入していた創業者の菅藤と偶然出会い、グローバルなサービスをつくりたいという想いに共感して手伝いはじめました。

クラビスはザ・スタートアップという感じで資金調達でも苦労しましたし、短期間での事業立ち上げの難しさやSaaSビジネスのイロハなど、実践を通じて多くの事を学びました。BBT大学院での学習とスタートアップでの実践という両輪をまわすことで、学んだことをすぐに現場で活かし、現場での気づきが学びに活きるというサイクルができたのはとてもよかったですね。

卒業研究で立案した事業計画をもとに再び起業。学びを通して経営者としてのマインドセットを体得


――現在は、BBT大学院での卒業研究(※1)として取り組んだビジネスプランをもとに、新たな会社を起業されています。展開している事業について教えていただけますか。

BBT大学院を卒業する直前の2019年2月に株式会社Deepworkを設立し、請求書の処理を自動化する「invox(インボックス)」というクラウドサービスを開発・運営しています。昨今のリモートワークのニーズが追い風となり、2020年3月のサービス開始から1年で、個人の方から一部上場企業まで約500社(2021年3月時点)に導入いただき、その後も指数関数的に利用者が増加しています。

――なぜこのような事業計画をつくるに至ったのでしょうか?

私がこれまで培ってきた経験やスキルを組み合わせてこそできるビジネルモデルで、かつ私が社会に対してもっともインパクトを与えられるのは間違いなくこの分野だと思ったからです。卒業研究のテーマを決める時も、この内容で事業計画をつくることに迷いはありませんでした。

その事業計画をどのように第三者に伝えるかという点では、指導教官からのアドバイスが役立ちました。大前学長の前でプレゼンもさせていただき、良い経験になりましたね。

――横井さんの卒業研究はとても評価が高かったそうです。入学前にBBT大学院に期待していたものは、卒業時までに得られたでしょうか?

入学前と卒業後では、ビジネスに対する感覚がまったく変わりました。というのは、入学前は“エンジニア上がりの事業開発好き”だったのが、卒業時は戦略を事業に落とし込み、どう実現していくかまでイメージできる起業家に近づくことができた気がします。

BBT大学院には豊富なコンテンツがあり、聴けるコンテンツは全部聴くようにしていたので、それはかなり役立ちましたね。大量に情報をインプットしていくなかで、自分にしっくりくるものとそうでないものがわかり、次第に自分のやりたいことが決まっていきました。継続的に良質のコンテンツに触れる事は非常に重要と考えていて、現在もBBTで視聴できるコンテンツはすべて視聴しています。

――BBT大学院で出会った同級生との交流はいかがですか?

それまで出会うことがなかった業種や職種の人が多く、刺激になりました。数字に強い人、営業が得意な人、全然違うジャンルでおもしろい人がたくさんいましたね。今でも交流が続いています。

もっとも刺激的だったのは、ロサンゼルスで日本人向けのフリーペーパーの事業を手がける込山さんを訪ねて行った事です。現地で活躍する込山さんを見て、日本でちょっと成功した気分になっていた事が恥かしくなりました笑。また同級生と一緒に中国企業の訪問ツアーをしたことも大変良い思い出になっています。

※編集註:

(※1)「卒業研究」:BBT大学院の卒業研究では、新規事業計画を立案します。一流の実務家教員による個別指導のもと、机上の空論ではなく、実戦で通用する事業計画を作ります。

あらゆる支払いの流れをスムーズにしたい。海外展開も視野にビジネス拡大を目指す


――自社の事業でこれからチャレンジしてみたいことはありますか?

現在提供している「invox」では企業間の購買から支払いの流れをもっとスムーズにしたいと考えています。電子マネーの普及をはじめ、個人が物を買って支払いをするという流れは随分楽になりましたが、企業間においてはまったく進歩していません。また企業間だけでなく納税にも大きな社会的コストがかかっていますので、BtoBはもちろんGtoBのお金の流れをもっとスムーズにしたいと思っています。

最近は行けていませんが、以前は様々な国の会計事務所を訪問して現地の会計のやり方を聞くという事をしていました。そこで理解したのは会計や決済というのは世界中の普遍的なテーマで、どこに行っても同じような課題があるという事です。つまり世界中にビジネスチャンスがあるので、近い将来、海外でも事業を展開したいと思っています。

また、私はゼロイチが好きなので、今後もどんどん新しい事業を作っていきたいと思っています。今回40歳を過ぎてスタートアップという非常にリスクの高いスタイルで起業をする際に考えたのは、事業が成功するか失敗するかは不可抗力が大きいし「事業が上手く行く事=成功」と考えるとなかなか踏み出せなくなるなという事でした。

そこで最後は、ワクワクする事業に信頼できる仲間と一緒に取り組み、その期間が充実していれば、それは成功として定義しようと決意しました。失敗を心配すると動けなくなるし、失敗する確率のほうが圧倒的に高いんです。結果は分からないけど、過程が充実していればそれで成功と思っています。

実は私自身、いままで起業したいと思ったことは無いんです。でも、やりたいことを、言い訳なしで思う存分出来る環境を追求していったら自然とそうなって、自分がいちばん楽しく仕事ができるのは創業というスタイルだったんです。もちろんリスクはたくさんありますが、楽しんだもん勝ちだと思っています。大前学長の言葉で言うと、「やりたいことは全部やれ!」「自ら人生の舵を取れ!」ということですね。

エンジニアこそMBAを学ぶべし。スキルの掛け合わせで“最強のカード”になれる


――最後に、MBAを検討されている方へのアドバイスをお願いします。

私は30代後半でBBT大学院に入学しましたが、タイミングはとても良かったと思います。ビジネスマンにとって40歳はひとつの区切りで、その先どんな仕事をして生きていくのか誰しも悩む時期ではないでしょうか。私自身、“これだ”としっくりくるものがなかったので、40歳に向けてBBT大学院にテーマを見つけに行くという感覚でしたし、実際に周りにもそういう人は多かったように思います。

いまの会社にいて10年後や20年後に自分のなりたい姿になれているのか、その先どう生きていくか、世の中にどう価値を出して仕事をしていくのか…。30代後半はそういう不安を抱えがちな時期ですが、もし悩んでいるならば、MBAを学ぶことを選択肢のひとつとして考えてみてはどうかと思います。

――エンジニアがMBAを学ぶことについてはいかがですか?

エンジニアはこれからの時代ますます求められる職業です。だからこそ、エンジニアとしての専門性に事業開発や経営の知識を掛け合わせると、希少な人材になれると思います。ビジネスがわかるエンジニアは、市場価値が高い最強のカードのひとつです。エンジニアが経営を理解していると、サービスや事業をつくるうえで圧倒的なスピード感を持つことができます。

教育改革実践家の藤原和博さんが、“3つのキャリアの掛け算をすることで、100万人に一人の希少性の高い人材になれる”と説いています。私は、エンジニアと経営、さらにグローバルを掛けてビジネスを展開していきたいですね。

エンジニアがMBAを学ぶことで、より視野が広がります。どんなサービスをつくって、どうやって世の中に広めていくか…自分がやりたいことを思う存分できる土台づくりにつながると思います。